BURIAL「Street Halo / Kindred」(Hyperdub / Beat)

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BURIAL.jpg 最近仲良くさせてもらっている友人から「ブロステップ浴びようよ!」と誘われて、この友人がオーガナイズするパーティーに行った。そのパーティーは、グラミー賞を獲得し話題となったスクリレックスのようなブロステップをかけるレイヴィーな前半パートと、ドープなダブステップをかける後半パートという構成。ブロステップ自体はフロアで聴いたことはあるが、ブロステップをフィーチャーしたパーティーは、これが初めてだった。


 ダブステップの快楽的要素を抽出し過剰にしたブロステップの軽薄な音楽性はベース・ミュージックへの入り口としては最適だと思うし、好きなトラックはいくつかあるものの、筆者はブロステップに対し距離をおいて接してきた。まあ、筆者も歳を取ったということなのかもしれないが、ブロステップの過剰さが、どうしても好きになれなかったからだ。いずれ飽きられるのは目に見えているし、興味深いものとして聴くことはあっても、"のめり込む"とまではいかなかった。だが、"浴びるように"聴くと、「ブロステップも悪くないな」と思ってしまうから不思議なものだ。先述の友人が「ラスコよりもこっちが元祖よ!」と叫びながらヴェクスド「Angels」をスピンしたのには驚いたが、「まあ、わからなくもないな」と思いながら、ゲコゲコとけたたましく鳴るブロステップに身を委ねていた。


 そして後半のダブステップ・パートである。こっちを楽しみにしていた筆者は、ドープなベースに嬉々としていた。そんな具合にフリーク・アウトしていたら、ブリアルの「Street Halo」が聞こえてきた。"ダブステップとしては"浮いていた「Street Halo」を聴いたとき、筆者はふと我に帰り、こう思ったのである。「ブリアルは、アンダーグラウンドというある種の大衆性を伴ったポップ・ミュージックそのものではないか?」と。


 「Street Halo / Kindred」は、昨年リリースされた「Street Halo」と、今年リリースされ早くも話題になっている「Kindred」をひとつにコンパイルした日本独自企画盤である。「Street Halo」「Kindred」共に全3曲のEPだが、「Street Halo」は2ステップ / ガラージはもちろんのこと、深淵を潜行するようなダーク・アンビエントもあれば、ピッチシフトを駆使した美しいヴォーカル。そしてなにより、卓越したサウンド・プロダクションによるメランコリーな音像。謂わば「Street Halo」は、ブリアルがこれまで培ってきてた芸と技が遺憾なく発揮された集大成とも言える内容だ。


 一方の「Kindred」は、いまブリアルが見ている景色の一部が垣間見れる興味深い作品だ。特に「Loner」はブリアルがこのさき向かうであろう場所が描かれているように思う。ダークな音像は相変わらずだが、執拗に繰り返されるシンセ・アルペジオと時折姿を現す呻き声に近いヴォーカルなどが織りなす不思議な高揚感は、ポスト・チルウェイヴとして注目を集めているトリルウェイヴとの類似性を感じる。こうした方向性は、ブリアルがダブステップと呼ばれるもの(彼からしたら、"ダブステップをやっている"という意識すらないのかもしれないが)に興味を失いつつあることを示唆している。なぜこういった音楽性を披露したのか考えると、それはやはり、常にブリアルは"アンダーグラウンドというある種の大衆性を伴ったポップ・ミュージック"を鳴らそうとしているからではないだろうか? つまり彼にとって"ダブステップ"の名は執着すべきものではなく、究極的に言えば、自分が鳴らしたい音を鳴らせるのであれば何でもいいのである。


 しかし、日本においてこのことが理解されるかは、正直難しい。日本はいまだに音楽を"表裏一体としてのメインストリーム / アンダーグラウンド"ではなく、"上下関係としてのメインストリーム / アンダーグラウンド"という視点で捉えがちだからだ(そもそも"メインストリーム / アンダーグラウンド"ってのがどうかと思うけどね)。なんせ多くの人が、アジカンやサカナクションなどが"巨大なひとつの真実"として語られ、その周りを"小さな動き"が漂う謂わば演繹的風景を前提とし平然としている。そんな状況では、おそらく本作も"ダブステップのひとつ"として受け入れられ、レコード・ショップでもダンス・ミュージック・コーナーを彩るだけで終わってしまうだろう。それはあまりにもったいないことだと思うが、本作を聴いていると、そんな温度差と距離を痛感させられる。

 


(近藤真弥)

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