チャットモンチー『チャットモンチー BEST ~2005-2011~』(Ki/oon)

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チャットモンチー.jpg 冒頭からチャットモンチーと関係ない話で申し訳ないが、最近刊行されたピーター・フック著『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』に出てくるとある一文が好きだ。それは、バーナード・サムナーに「おまえはさ、過去に生きることが好きだよな」とからかわれたことに対する、フッキーなりの返答みたいな一文だ。

 「たぶん、それは正しいと思う。俺は、ついそれにこだわってしまうところがある。まあ、それを忘れて先に進むことなんかできない、ってことなんだけど。」(『ハシエンダ マンチェスター・ムーヴメントの裏側』447頁)

 この一文は、当時のマンチェスター・ムーヴメントを生きた者達だけでなく、シビアな日常を曲がりなりにも必死に生きる人々に届く最高の言葉だと筆者は思っている。いまこうして書かせてもらっていることも、"過去"がなければありえなかったわけだが、当然"過去"は、楽しいことだけじゃない。それでも"過去"を受けいれ前に進むということが、"生きる"ということではないか? 最近そう思うようになってきた。

 高橋久美子の脱退。長年チャットモンチーを追いかけてきた者ならば、このニュースに驚きを隠すことはできなかったはずだ。筆者もそのひとりであるが、このニュースを聞いたとき、「解散してもおかしくない」と思った。どんなバンドも脱退やメンバー・チェンジは経験するものだし、重要なフロント・マンだけが不動で、あとは流動的なバンドも数多く存在する。しかし、チャットモンチーはあの3人でなければ駄目なのだ。それは、ビートルズやレッド・ツェッペリン、スミスにストーン・ローゼズといったバンドといっしょで、言葉で説明できない特別な"ナニカ"を抱えたバンドに対して抱いてしまう感情だ。

 この感情を言葉にするのは、正直難しい。もちろん技術的には新メンバーを入れたりすることも可能だが、チャットモンチーは、そうした音楽性云々を超えたバンドであり、多くの人の"人生の一部"として入りこんでしまっている。だからこそ、解散の道を選んでもおかしくなかったが、ご存じのように、チャットモンチーはチャットモンチーであることを選んだ。

 『チャットモンチー BEST ~2005-2011~』は3週連続リリースの最後を飾る作品だが、本作はチャットモンチーの"過去"を象徴している。普通は"過去→現在"といきそうなものだが、チャットモンチーは「満月に吠えろ」という渾身の"今"から、新たなスタートを切った。そしてアニメ主題歌である「テルマエ・ロマン」が続き、そして最後に本作と、"現在→過去"という見せ方をしている。それはやはり、"3人のチャットモンチー"があったからこそ、今再び前に進めるのだという2人の決意表明のように思う。その決意からは、悲しみに酔ったノスタルジーではなく、その悲しみを受けいれチャットモンチーであることを選んだ力強さがある。だから本作だけでなく、試しに"「満月に吠えろ」→「テルマエ・ロマン」→本作"の順で聴いてみてほしい。『YOU MORE』収録の「バースデーケーキの上を歩いて帰った」で終わる本作だが、《繰り返し 希望と絶望》と歌われる曲が一層心に響くはずだ。そして、それでも歩みを止めない覚悟に、眩しい未来が待っていることもわかるはずだ。

 

(近藤真弥)

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