ヘラジカ at 吉祥寺GOK SOUND 2012.2.4

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 08年に結成され、4月にファースト・アルバムを発表する男性2人女性3人の5ピース・バンド、ヘラジカ(Herajika)。彼らの音楽が持つ重要な要素は「聴き手が漠然と思い描いている音楽」の先を、まるで天気の話でもするように自然に鳴らすところにある。ロック、ヒップホップ、ワルツ、フォークなど、様々なジャンルの共通項となる「点」を射抜き、軽やかに音をステップさせることができるのは彼らの音楽的バックグラウンドの広さとともに、ポピュラー・ミュージックとして開けた音楽であることを雄弁に物語る。そして聴き手の「イメージとしての音楽」を少しずつ広げ、感覚を更新する。

 

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 この日のライヴはテーブルと椅子が並んでいて、お菓子も置いてあるアットホームな雰囲気の中で始まった。ヴォーカル兼ギターのミシンが何気なくアコースティック・ギターを弾き始める。ねじれたフレーズ。そこにふんわり被さっていく女性メンバーのコーラス。会場全体の集中力が音に吸い寄せられていった。ヘラジカのライヴはいつだってそうだ。1曲目から聴き手の不意を突く。しかしそれが心地いい。そしてポップな哀感がある、とでも言うべき「Strow」へ、という流れは情緒のふり幅を広くさせられる。時としてダニエル・ジョンストンを思わせるミシンの歌声はすっと手を握りに来るような親密性があり、バンドと聴き手という境目をなくしてしまう。鍵盤隊のフレーズもポップ。ベースも気負いがない。ドラムはいままで観たライヴの中では引き締まって鳴っていた。
 
 曲の合間にドラムのヨシミが「なんか、みんな静かで...(笑)」と言っていたが、いやいや、僕は、みんな聴き入っていたんだよと言いたい。ヘラジカは「聴かされる演奏」は絶対にやらない。「聴かせる演奏」なのだ。それが最も出ていたのはメンバーいわく、お蔵入りになっていたという「Reverse」。メンバーそれぞれのハンドクラップとコーラスを何重にも重ねポリリズムを錯覚させるこの曲は、朗らかさとわずかな緊張感が同居した、ヘラジカにしかできない楽曲だ。それをライヴで難なくやってしまうところに驚くし、僕が抱いていた音楽の常識など簡単に覆す。それは圧倒的なものではなく、ゆっくりと気持ちの糸を抜かれていく感じなのだった。「ライヴは聴き手との会話」とはよく言われるが、まさに何気ない会話が面白い会話になっていき、思ってもみなかった発言が次々と飛び出てくるような演奏。メンバー5人の会話がステージ上から降りてきて、聴き手とともに話し出す。そんな予感がするほど温かい演奏は、「聴き手も含めてライヴ」という姿勢の表れなのだろう。ヘラジカのライヴを観ることは親密な会話であり突発性のある会話でもあるのだ。
 
 ところで僕はこの日でヘラジカを観るのは4度目になる。毎回思うのはメンバー全員が自分のメロディを持っていることだ。ドラムはメロディ楽器ではないが、その音には歌がある。特にトツカのベースから歌を感じる。メンバー個々が作曲した曲も聴いてみたいと強く思った。

 

(田中喬史)


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