YPPAH『Eighty One』(Ninja Tune / Beat)

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YPPAH.jpg 振りかえると、ネットを発祥としたチルウェイヴは、ほんとに重要な現象だったと思う。トリルウェイヴ/クラウド・ラップといった発展型だけでなく、その影響はポップ・フィールドにまで及び、最近盛りあがりをみせている関西ビート・ミュージック周辺にも、チルウェイヴの影を感じる。

 そして現在、チルウェイヴの持つメランコリックなアトモスフィアは拡散し、その種子が発展を遂げていてる最中だ。こうした動きにジャストなタイミングでイパは、《Ninja Tune》からサード・アルバム『Eighty One』(このタイトルは、ジョーが生まれた年だそうです)をリリースした。

 幼い頃の記憶もインスピレーションのひとつとなっている本作に対し、イパことジョー・コラレスはこんなコメントを残している。

 「様々な時代の思い出だね。当時の気持ちをメロディに書き出そうとしたんだ。子供の頃って、明確に表現できないテーマのようなメロディがあったりするだろう? もう少しではっきりと聴き取れそうメロディというか。しかも過去に聴いたことのある実際のメロディとまったく異なるものというか」

 確かに本作は、ここではない"どこか"を描きだしたドリーミーな音楽であり、"非言語的空間"を作りあげている。キラキラとした透きとおるような音像はひたすら温もりにあふれ、シューゲイザーを彷彿とさせる音に昨今のビート・ミュージックを掛けあわせたサウンドは、聴き手の想像力を掻きたてる。

 また、先述のチルウェイヴ以降のメランコリックな世界観に基づいた、サイケデリックかつ流麗なグルーヴも素晴らしい。メロディアスなシンセや生楽器によるオーガニック・サウンド、そして、本作でヴォーカルを披露しているアノミー・ベルの歌声も、サイケデリックな雰囲気を醸しだすのに一役買っている。これらのサウンドが生みだすユーフォリックな恍惚感は、一聴の価値あり。

 

(近藤真弥)

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