SHORES『To Volstead』(No Idea)

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SHORES.jpg ノスタルジーなアルペジオは、ロウの『I Could Live In Hope』を、陰鬱なヴォーカルはレッド・ハウス・ペインターズのマーク・コゼレックを連想させ、そして何よりアルバム全体に漂う緩やかなグルーヴ感は、まるでコデインから直々に継承されたかのようである。スリー・マイル・パイロットやピンバックも内包しており(フロント・マンのブライアンはロブ・クロウに似ている)、彼らが90年代に活動していたバンドだと言われれば、大勢のリスナーの方が疑わないだろう。それほどに当時特有の気風を継承している。ミシガンの2人組であるショアーズ(ライブでは4人編成)による本盤は、前作の1stフル・アルバム『Coup De Grace』から1年足らずという早いペースで制作されており、今回も90年代スロウコアの血脈を忠実に受け継いだ、シンプルなバンド・サウンドで構成されている。

 直球のスロウコアらしく、なだらかなライドで静かにビートが刻まれる。テレキャスターによる堅いトーンでもって、淡々としたアルペジオが左右で響く。楽曲にダイナミズムが生まれ始めると、シンプルなドラムに力強さが帯び、歪んだギターが深い水の底から沸き上がるように掻き鳴らされる。楽器隊が高揚感を募らせていようとも、ヴォーカルのブライアンは黄昏れ続けている。抜群にドラマチックなメロディは、エモやインディー・ロックからの影響も窺わせる叙情さである。絞られた照明の下で、眩くないフロアへじわっと浸透していくような、波の起伏が繰り返される。

 当時のスロウコアからいなたさやローファイさが抜け落ち、音源そのものはハイファイかつ洗練されている。しかしながら、バンド・サウンドのみで構成されているという点は変わらず、ライブ感を伴う生々しさが本盤からは伝わる。アルバムの流れや全体像などという観念は無く、似た曲調・音色・テンポの楽曲が粛々と連なり続けるが、翻せば、本盤の曲がいずれも素晴らしいということに他ならない。コデインとレッド・ハウス・ペインターズとロウの良いところを盗んで、00年代のエモとインディー・ロックを触媒に昇華させているのだから、これだけ素晴らしいアルバムが現代に生まれて来るのも納得だ。

 

(楓屋)

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