DARKSIDE「Darkside EP」(Clown And Sunset)

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DARKSIDE.jpg 昨年『Space Is Only Noise』という傑作アルバムをリリースしたニコラス・ジャーと、ニューヨークのバンド、エル・トポのメンバーであるデイヴ・ハリントンによるユニット、ダークサイド。そのダークサイドが、ジャーのレーベル《Clown And Sunset》からEPをリリースした。

 そんな「Darkside EP」は、『Space Is Only Noise』の実験的な部分のみ抽出している。ブルース、ドローン、ディスコといった要素をサイケに展開し、異世界を創造しているが、ベースが効いたシンプルなリズムは、ダンス・ミュージックが流入する昨今のインディー・シーンを意識してか、ディスコ色が強い。デイヴのギターもディスコ色の強調に一役買っており、そこにジャーのウォブリーな歌声が被さることで、深淵に潜っていくようなチルを演出している。

 また、プロダクションの部分でテクノロジーを駆使しながら、グルーヴからは土臭さを感じる。それは、先述のブルースの影響が大きいが、現実と幻想の狭間を行き来するようなジャーのヴォーカルも見逃せない。本作でジャーは、ファルセットからバリトン・ヴォイスまで、上手いとは言えないが多彩な表現を披露している。その歌声でジャーは、「Darkside EP」と聴き手を結びつける役割を全うし、「Darkside EP」という異世界のなかで、唯一聴き手側に近い位置に存在する。

 つまり「Darkside EP」とは、聴き手の現実(ニコラス・ジャー)が、様々な誘惑に侵食される様をドライに描いた絵画のようなものだ。不安定な揺らぎといった人間性をあえて残しておきながら、一方では徹底的に作りこまれた無機質な音がその人間性を食い殺す。

 はっきりとした政治的主張があるわけではない。しかし、本作の冷やかなグロさは、荒涼としたシビアな現代に染み渡る。どうやらニコラス・ジャーの純粋な好奇心は、とんでもない怪物を生みだしてしまったようだ。

 

(近藤真弥)

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