昆虫キッズ「Astra / クレイマー、クレイマー」(Tomoe)

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昆虫キッズ.jpg 最近、中古レコ屋まで足を運んで、「アルバム3枚で500円」みたいなもの漁り、なんとなく買い、特に期待していなかったのに、家に帰って聴いてみたらとんでもなく良かった。みたいな感覚がなくなってきた。今ならネットで見たバンド名をユーチューブやマイスペースで検索し、聴いてみて気に入ったら買う。という感じ。だが本作はふらっとレコ屋に入り、「安いヨ! 買おうネ!」「税込525円ポッキリ!!」というコピーにつられ買った盤(ちなみにポッキリって何だ?)。なんとなしに家で再生したらとても良かった。ネットで音楽を選ぶ行為とレコ屋に足を運んで選ぶ行為とでは、同じ行為でも意味は全く異なる。それは音楽との距離が近くなったのか、それとも遠くなったのか。

 閑話休題。まさに本作、最高過ぎて参っちゃったよ。ベックの『Mellow Gold』を1曲に凝縮し、怒濤のロック・ビートを取り入れたとでも言うか、チャールズ・ミンガスの『直立猿人』をロック・サウンドに落とし込み、なおかつジャンク・アート的にし、スティーヴ・アルビニが関わっているかのよう、とでも言うか。そんな1曲目「Astra」にグッときた。アッセンブリー・ライン・ピープル・プログラム(Assembly Line People Program)を思わせるところもある。知人と一緒に聴いていたら、胸がざわついてしかたがないと言っていたが、それってこの曲に対して最上級の讃辞なんじゃないか?

 とにかく、4ピース・バンド、昆虫キッズの2曲入りのセカンド・シングル「Astra / クレイマー、クレイマー」が素晴らしい。衝動を感じるが、その実、理知的でいてユーモアのあるサウンド構築という倒錯が巧い具合に光っている。ゲストのMC.Sirafuのトランペットが絶妙なタイミングで入り、澤部渡のボンゴも良い。それらはエンジニアの岩田純也やマスタリングを行なった中村宗一郎によるところも大きいのだろう。2曲目「クレイマー、クレイマー」は映画からとられたタイトル。優美なメロディとサウンド、歌声は哀感もあり、昆虫キッズは映画から受けた情緒を音に変換する術にも長けている。つまり、表現のふり幅が広い。

 彼らのホームページには「なにがなんだか誰もわからなかった2011年にヘッドスライディング!」と書かれている。昆虫キッズは摩訶不思議な雰囲気を身にまといながら、サッカーだろうと何だろうとヘッドスライディングするだろうし、2012年も日常へ頭から突っ込むだろう。兎にも角にも頭からだ。それがインディー・ロックの呼吸音であり、音楽と僕らの距離を近くする。

 

(田中喬史)

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