YEYE『朝を開けだして、夜をとじるまで』(Captain House)

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YEYE.jpg "声"というのは不思議なもので、人それぞれ特徴があり、その人の性格や生い立ちなんかも見えたりする。そして"声"は、"言葉の持つ意味"を決定づける大事な要素でもある。例えば、「ありがとう」という言葉ひとつとっても、純粋に喜びを表すお礼にもなれば、トーンを変えることで皮肉にもなりえる。お礼であればもちろん嬉しいし、怒りを込めた「ありがとう」であれば、相手の心を傷つける暴力となる。"言葉そのものの意味"は学校で学べるが、"言葉の持つ意味"を込める"声"は、生まれ育った環境などが大きく左右する感覚的なものだと思う。「声にリアリティが宿っている」なんて表現もあるしね。

 中国語で「おじいちゃん」を意味するYeYe(ィエィエ)と名乗る彼女は、京都暮らしの89年生まれ。「彼女」とは書いたものの、その歌声は少年のようでもある。だが時折、女性的な色気を覗かせる瞬間もあり、アンドロジナス的要素が強い歌声と言えるかもしれない。晴天の空に浮かぶ雲のような浮遊感が特徴の、心地良い歌声だ。

 本作は、『朝を開けだして 夜をとじるまで』の名が示すように、日常のとある一日を描写した物語のようなアルバムとなっている。「ほら 朝がやってきた」と歌われる軽快な「Morning」から始まり、「映画『空気人形』を観て感じたこと」を歌にした「言う」まで紡がれる歌詞は、日常に潜むストレンジな場面を上手く切り取っている。その歌詞に関しては、具体と抽象の間をゆく言葉が丁寧にチョイスされている印象だ。基本的に素朴でわかりやすい言葉を選んでいるが、「Woo Lino Sunte On Lino」は、「口から出てきた言葉をそのまま歌に」したからか、反射神経がユーモアとなって表現されている。この曲は本作中もっともお気に入りなんだけど、彼女の素が露わになっていて面白い。

 また、本作にはウィーザーのカヴァー「Buddy Holly」が収録されていて、このカヴァーを聴けばわかるように、他人の曲を自分のものにできる世界観を、YeYeは既に確立している。しかもこの世界観は、まだまだ伸びしろ十分の成長過程にある。本作は、そんな瑞々しい将来性とクオリティが両立したアルバム。

 

(近藤真弥)

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