LAMA『New!』(Ki/oon)

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LAMA.jpg 演者と観客の間で共有される"嘘"によってエンターテイメントするポップ・ミュージックは、その効力を失ってしまった。確実にシビアな方向へ向かっている現実のなかで、"嘘"に付き合う余裕の喪失が従来の方法論に依拠するポップ・ミュージックを殺してしまったのは言うまでもないが、それでもポップ・ミュージックを求める者は後を絶たないし、自分の感性や価値観に従い、ポップ・ミュージックに飛びついたり、もしくは自分で鳴らしたりしている。

 ナカコー、フルカワミキ、田淵ひさ子、牛尾憲輔からなるLAMAは、そんな"これからのポップ・ミュージック"を模索する音楽シーンに新たな視点をもたらしうるアルバムを完成させた。不穏なノイズとヘヴィーなギター・リフが印象的な「Warning」で幕を開ける『New!』は、中毒性が高いイタロ・ディスコ「Night Telepathy」、《敵はいない》と歌われる「Rockin' Your Eyes」など、バラエティ豊かな楽曲群が収録されている。しかし本作は、バラバラで散漫なものではない。むしろ、不思議な統一感と纏まりすらある。それはおそらく、"バラバラであること"がメンバー全員の間で共有されているからではないだろうか? 決まり事がないことが決まり事であり、この自由な雰囲気が風通しの良さに繋がっている。そして風通しの良さはそのまま、『New!』という体験を一瞬で駆け抜けるスピード感となって、本作に宿っている。

 さらに、『New!』における"言葉"の在り方が面白い。適度に主張しながらも、曲を彩るパーツとして言葉が音に徹しているのだ。意味ありげになりすぎず、かといって雑に言葉を発しない繊細さもある。"言葉の語感"と"その言葉が持つ意味"がバランス良く存在し、リズムとしての歌詞とメッセージとしての歌詞、このふたつを見事に両立させたセンスはさすがという他ない。

 "非言語的空間"を志向し始めたベース・ミュージックやチルウェイヴといった音楽と、音楽というよりは"言葉そのもの"になりつつあるグライムや日本語ラップなどの音楽が注目を集め、これらが着実にポップ・フィールドを侵食している現在の音楽シーンは、ゆっくりと二極化しつつあると言っていい。そうした中で『New!』は、"非言語的空間"と"言葉"を軽やかに接合している。かつて灰野敬二は、クッキーシーンにて「だって真ん中が無いから戦争が起きるんじゃない」と語ったが、本作はその真ん中に位置する帰納的なポップ・アルバムであり、ポジティブな姿勢で、"今"という現在地からしっかりと未来を見つめている。その未来とは、初音ミク以降の、リスナーすらも"アーティスト"とする"全員参加型ポップ・ミュージック"だ。つまり"LAMA"とは、アノニマス的共有人格をポップ・フィールドで展開する、ある種のミームだと言える。本作は、共有サーバを介してアイデアや曲の断片を出し合い制作を進めていったそうだが、こうした手法も、LAMAはアノニマス的共有人格であることを示唆している。『New!』は、紛れもない未来のポップ・ミュージックなのだ。

 

(近藤真弥)

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