DREXCIYA『Journey Of The Deep Sea Dweller I』(Clone Classic Cuts)

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Drexciya.jpg デビュー当初は詳細なプロフィールもなく、ジェイムズ・スティンソンが心臓発作でこの世を去るまで保ちつづけたミステリアスな雰囲気もあり、デトロイト・アンダーグラウンドの象徴として伝説的存在となっているドレクシア。そしてこのたび、ドレクシアの音源がオランダのレーベル《Clone》の一部門である《Clone Classic Cuts》から復刻する。


 『Journey Of The Deep Sea Dweller I』は、デビュー作「Deep Sea Dweller」から、97年リリース『The Quest』までのトラックから厳選し収録した、ベストアルバム的内容となっている。ドレクシアの名を聞いて思い浮かべる音は、ディープなダーク・エレクトロだと思うが、本作は、そんなドレクシアのイメージに忠実な曲がセレクトされている。《Submerge》なども含む《UR》時代の音源は、マッド・マイクが「二度と再プレスはしない」と宣言しているそうだし、興味のある人は、このタイミングでぜひ手に入れてほしい。


 ちなみに"ドレクシア"とは、奴隷船から海に投げすてられた妊婦達の胎児が生き残り、文明を築いたというドレクシア人の神話が由来となっている。このコンセプトを一貫して守り抜いたドレクシアは、"深海"をモチーフとした作品群を数多くリリースしている。その多くは、殺伐とした暴力的グルーヴを生みだしており、ローランドTR-808 / 909が刻むビートは冷徹なまでに無機質で、アナログ・シンセによるチープな電子音は、殺気すら漂わせている。


 なぜドレクシアの音は、暴力的かつ攻撃的なのか? それはやはり、ドレクシア人の神話が大きく関係しているのは言うまでもない。ここで種明かし、というわけではないが、海に投げ捨てられた妊婦達は、アフリカ人だそうだ。勘の良いあなたならお気づきだろう。ドレクシアは、有史以来様々な形で存在する奴隷制度を引用し、誰しもが心の奥底に持つ無慈悲なまでの暴力性と攻撃性、そして、我々が"非現実"として目を背けているもうひとつの現実を告発しているのだ。


 "ドレクシアを聴く"という行為は、人類史の暗部を見つめるに等しい。その暗部には、現代社会を作りあげるうえで"不必要"とされ捨てられたものが、積みあげられている。そして、"不必要"とされ捨てられたものの上に、現在の日常が形成されていることを、ドレクシアは音楽という形で暗号化し、聴き手に語りかけてくる。謂わばドレクシアとは人類の業であり、あなた自身なのだ。そんなドレクシアが、今になって再浮上した。この事実を、もっとシリアスに捉えるべきではないか?

 


(近藤真弥)

 


 

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