CHAD VALLEY『Equatorial Ultravox』(Loose Lips)

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CHAD VALLEY.jpg 先日行われたフレンドリー・ファイアーズの来日公演のオープニング・アクトを務めたのが、2012年最大の才能として注目されているチャド・バレイだ。聴いてみたら抜群にクオリティの高い曲が次々に出てきて、チルウェイヴとかそういう文脈で語るのがアホらしくなりました。これはMGMT以来の大ヒットじゃないかしら。ウォッシュド・アウトが親の金で無気力に生きていることをテーマに曲を書かなければ、あるいはこんなサウンドに行き着いていたのかもしれない。彼の場合は売れ売れなプロダクションと歌メロが好き嫌いの分かれどころ。桃源郷でも比較的現実から近い距離の桃源郷だから、気が狂うほどディープなサイケデリックを求めると、彼のレコードを手に取ろうとは思わない。だが彼の歌はソウルフルだ。そこがフレンドリー・ファイアーズとの共通点で、世界と自分の存在を遮断したら、こんな歌は生まれない。美しくて醜い世界をコミットすることでしか生まれえない葛藤や悲しみが込められている。

 とくに今回のEPでは3曲目に収録されている「Shell Suite」はTOTOあたりのやたらにクオリティの高いAORをも彷彿とさせる名曲。大合唱が起きそう。とくに荒廃したバック・グラウンドを持っているわけでもなく、IQも高くて、トレンドやカルチャーの解釈がいちいち的を射ている。これらは勝手な彼に対してのイメージだが、あとはフォールズのストイックさをチャドにも同様に感じたり。って、チャドは「Spanish Sahara」のリミックスワークで注目を浴びたんだったね。とにかく、いま彼の極上の楽曲を聴かない手はありません。彼の曲で、確実に何日分かの夜は独占されてしまうから。

 ちなみに2月10日と11日にチャドは再来日を果たします。じつはチャドはJonquil(ジョンキル)というバンドのフロントマンで、そのJonquilの元メンバーで構成されたTrophy Wife(トロフィー・ワイフ)というバンドが同じ日に出演。2012年の幕開けには相応しい音だと思います。

 

(長畑宏明)

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