BEAT CULTURE『Goldenbacked Weaver』(Self Released)

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BEAT CULTURE.jpg もし僕がちょっとズレたレコードショップの店員ならば、思わずこんなキャッチ・コピーをつけてしまうかもしれない。"アレックス・パターソンとザ・フィールドの邂逅。そこにジェームズ・ブレイクがスパイスとなり、ハドソン・モホークラスティー とも共振する新世代アーティスト、それがビート・カルチャーだ!"と。だが、台湾在住の韓国人でありながら、アメリカのボーディング・スクールに通う、現在17歳のキムが作り上げた『Goldenbacked Weaver』を聴けば、ある種の興奮と錯乱状態に陥ってしまうのは無理もない。それほどビート・カルチャーという名の才能は、衝撃的なのだから。

 「あなたにとって日曜日の朝のトラックは?」と訊かれたら「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのSometimes」と答え、「ビーチでリラックスするための曲は?」との問いには「ヌジャベスのLady Brown」と返すこの青年が鳴らす音楽は、昨今のビート・ミュージックを基調としながら、前述のザ・フィールドやジ・オーブ、そしてラスティーハドソン・モホークを彷彿とさせる驚きと瞬発力、さらには、デトロイト・テクノの近未来的世界観とオービタルの恍惚感といった、所謂90年代前半のテクノが持っていたロマンと輝きが宿っている。他にもソウル・ミュージックやヒップホップ、ほんのわずかにオリエンタルな要素もありつつ、それらがすべて極上の煌めく電子音となって表現されている。

 ちなみにキムは、自分の音楽のことを「レイヴトロニカ(Ravetronica)」と呼んでいるが、例えば同じくレイヴの要素を取り入れ、ダブステップ以降のビート感覚でもって音を鳴らすマンチェスターのステイ・ポジティブとは、ちょっと違う毛色だ。「Hesitate」の高揚感や、「Pacific Dive」におけるヴォイス・サンプル使いとシンセのシーケンスの組み方からもわかるように、ビート・カルチャーの音楽は、地下に潜っていく陶酔よりも、爽快でハイなエネルギーを形成している。そしてそのハイなエネルギーは、キラキラとした純粋な音となり、最終的には光のシャワーとなって聴き手に降り注ぐ。この光のシャワーが、心地良いものであるのは言うまでもない。

 ネットが音楽を変えたというのはよく聞く話だし、アーティストやリスナー共に様々な変化を強いられたのは間違いない。しかしビート・カルチャーは、そうした変化における最大の成果のひとつと言えるかもしれない。ビート・カルチャーという名の通り、本作は"今"はもちろんのこと、過去の偉大な音楽や、そして"未来"すらも射程に入れた、"文化そのもの"を音楽で表現している。時代や場所など関係なく、ベッドルームからネットを介することで世界と繋がり、その繋がりによって、この世に存在するすべてのものに親近感を抱く。もしかしたらこの親近感は、新しい"絆"の形なのかもしれない。だからこそビート・カルチャーの音楽は、果てしない希望を鳴らすのだ。

 

(近藤真弥)

 

※本作はビート・カルチャーのバントキャンプからダウンロードできる。

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