WOOMIN『Tender Tender Trigger』(Irma)

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Woomin『Tender Tender Trigger』.jpg  この『Tender Tender Trigger』というアルバム、すごく面白い。ドリーミーで上品なポップ・ソング集なんだけど、ほんの少しビッチでおませな感じの歌声、そして70~80年代のヨーロピアン・サウンドを基調としながらも、数多くの音楽的要素が散りばめられた曲群は、まるで牧歌的なロード・ムービーを女の子と観ているような風景が頭に浮かぶ、非常にイマジネイティヴなものだ。

 本作を作りあげたのは、ウミンという女性アーティスト。なんと彼女、作詞作曲はもちろんプロデュースやヴォーカルまで務めあげるマルチな才能の持ち主。本作ではプログラミングまでこなすなど、まさに獅子奮迅な働きぶりといったところ。しかし音のほうは荒々しいものではなく、クラシカルな匂いがする流麗なモダン・ポップだ。ビートはディスコ色が強い4つ打ちがほとんどで、派手さはないシンプルなものだが、パーカッションの部分で豊富なアイディアを駆使するなど、聴き手を飽きさせない努力が見えるのも好感度アップ。

 それでもやはり、一番興味を惹かれるのはウィスパーな歌声でしょう。彼女の囁くように歌うヴォーカルは、前述したほんの少しビッチでおませな感じも相まって、色気を感じさせる。特にジェーン・バーキンのカヴァー「Yesterday Yes A Day」で聴かせてくれるヴォーカルは、反則レベルのキュートさ。正直、惚れそうになっちゃいました。

 アルバム全体の流れや、曲そのものがもつポップネスなど数多くの魅力がある本作だが、才能が先走ってしまったのか、押し引きの妙に欠けている感は否めない。やりたいことがたくさんあるのは理解できるし、彼女自身そのやりたいことを表現できる技術もあるけど、統一感という点ではまとまりのない印象を与えてしまっている。的確なチョイスをする嗅覚は、作品を重ねることでしか鍛えられないものだと思うから、今後に期待といったところ。

 それでも本作は手に取って聴くべきレベルではあるし、この世に存在しないどこが別世界のディスコを形成する独特な雰囲気を持っているのは間違いない。これからクリスマスもくることだし、優雅で心地良いひとときを2人で過ごすときのサウンドトラックとして、『Tender Tender Trigger』を聴くのも粋だろう。

 

(近藤真弥)

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