ZOMBY『Dedication』(4AD / Hostess)

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Zomby.jpg  本作を支配しているのは、大麻の煙でむせかえりそうなほどのスモーキーなサウンドだ。実際クラブでも、踊り狂うよりは大麻を吸って女の子と過ごすほうが好きらしい。まあ、こうしたキャラ設定だと言われればその通りかもしれないが、独特な雰囲気に満ちた『Dedication』を聴く限り、真性のワルなのは間違いなさそうだ。

 音のほうは、前作『Where Were U In '92?』のようなレイヴ・サウンドもあり、ゲーム好きのゾンビーらしいチップ・チューン「Black Orchid」なども存在するが、そんな比較的明るい曲でさえ(もちろん『Dedication』に収録された曲のなかではだが)とことん不気味に、まるで井戸の底から聞こえてくるかのような錯覚すら覚える。「Things Fall Apart」にいたっては、パンダ・ベアの呪術的なヴォーカルも相まって、終末感漂うレクイエムのように響く。

 アルバムを通して聴くと、なにか巨大な状況をつくりあげるかのように音が存在し、そのどれもが殺気を発していることがわかる。その状況はどこか孤独な空気を醸し出し、危険物と化した『Dedication』を封じ込めるための箱に思えてしまう。だが、この箱に封じ込められた『Dedication』は、我々を恍惚へといざなうトランシーなグルーヴを内包している。現実を幻想化し、それを想像力と狂気によって表現するような、シュールレアリスムと言ってもいいグルーヴだ。

 正直、本作を聴いて癒しや心地良さを得ることはできない。圧迫されるような息苦しさもあり、好んで近づこうとは思えない音楽を鳴らしているが、それでも、我々の心を奪ってしまう魔性的な魅力がどす黒く光っている。だからこそ、ゾンビーはどこまでも異端であり、ダブステップという器のなかで語るには無理が生じてくる。これは無視すべきでないアルバムではなく、無視できないアルバムなのだ。

(近藤真弥)

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