VARIOUS ARTISTS「Ghettoteknitianz E.P.」(Planet Mu)

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V.A「Ghettoteknitianz E.P.」.jpg  もはや"ダブステップ"という言葉は、レコード・ショップがジャンル分けする際の便宜的な用途でしか使われなくなりつつある。ダークな2ステップがダブステップの元祖とするならば、ある意味"終わった"と言えるかも知れないが、ダブステップは自らの名を捨て、現在も"ベース・ミュージック"として進化を続けている。そんなベース・ミュージックのなかでも、ジュークは比較的純度が高いというか、ゲットー・マナーが残っている。ディスクロージャーやナイトウェイヴなど、イギリスらしい洗練を施したジュークを鳴らす者もいるが、《プラネット・ミュー》などの努力によって、ゲットー臭漂うジュークもしっかり世に出回っている印象だ。

 コンピレーション・シングル「Ghettoteknitianz E.P.」は、DJラシャド、トラックスマン、DJエアル、DJマニー、ガントマン、DJスピンという人選からも分かるように、シカゴ・ゲットー・スタイルに忠実なトラックが収録されている。リリースはもちろん《プラネット・ミュー》から。ほんと、最近の《プラネット・ミュー》は次々と面白い作品をリリースしている。ジュークは突然変異の音楽であると同時に、シカゴのアンダーグラウンド・ミュージックの流れを引き継いだ正統派の血も流れている。だから、DJラシャド&DJマニー「R House」のように、古のハウス・ミュージックと接続することで、過去に対する敬意を表明しても全然不思議じゃない。ちなみにこの曲は、シカゴの《キャッチ・ア・ビート》からリリースされた、リズム・コントロール「My House」の有名なスピーチをサンプリングしている。原曲は聴いたことないけど、このスピーチが使用されている曲は聴いたことあるという人も多いはず。

 そして本作であらためて感じたのは、ジュークの高い雑食性だ。DJダイアモンド『Flight Muzik』で証明したように、ジュークも他のベース・ミュージックと同様様々な音楽を取り込む懐の深さがある。マシーンドラムなど、主にシカゴの人間ではない門外漢によって新たな解釈や洗練が成されてきたが、チープで下品な(もちろん褒め言葉だ)ダンス・トラックでありながら、アシッドやソカ、ファンクやR&Bまで匂わせる「Ghettoteknitianz E.P.」は、ジュークの今後の発展を約束してくれると共に、新たな潮流を生み出す可能性も感じさせる。

 近年のベース・ミュージックは、ポップな感性に迎合することなく発展を遂げてきた。もちろんジェームズ・ブレイクのように、アウトプットする段階でポップ化を果たすアーティストはいるが、海を渡る段階で改ざんされるようなことは少なくなったと思う。それは、ネットによって世界との距離が縮まったことが主因なのは言うまでもないが、様々な手段で現場から発信される音楽をそのまま聴ける現状を踏まえれば、"細分化"の名の元に90年代を通して行われた、くだらない水増しや骨抜きによって虐げられた音楽の復讐が始まっているように思える。そして、このことを繰り返し主張する急先鋒はベース・ミュージックである、というのは考え過ぎだろうか?

(近藤真弥)

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