VARIOUS ARTISTS『Bangs & Works Vol.2 The Best Of Chicago Footwork』(Planet Mu)

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VA Bangs&Works Vol2.jpg  正直、僕はジューク / フットワークに関して勉強中の身である。誰もが知識人になれる情報化社会の現代において「そりゃねえだろ?」という声も聞こえてきそうだが、嘘を貫き通すのは苦手なほうだし白状しておく。ただ、ジューク / フットワークの名が知られてけっこうな時が経つ現在も、ジューク / フットワークは未知なる部分が多いのは事実だろう。多くのアンダーグラウンド・ミュージックはポップ・フィールドへ進出する過程でモダナイズされ、良く言えば洗練、悪く言えばエッジの喪失を伴うわけだが、ジューク / フットワークは独自性を保ったまま世界に広まろうとしている。それはやはり、ジューク / フットワークがゲットー・ミュージックだからだと思う。そしてそこが、ジューク / フットワークの魅力のひとつであることは間違いない。

 『Bangs & Works Vol.1: A Chicago Footwork Compilation』に続くシリーズ2作目となる本作だが、マイク・パラディナスのジューク / フットワークに対する愛があふれる素晴らしいコンピとなっている。まず、ディスクロージャーやナイトウェイヴなどのUK流に洗練されたジューク / フットワークは一切収録されていない。あるのはゲットー・マナーに忠実なジューク / フットワーク、そしてそんなシカゴのゲットー・ミュージックへの愛情と敬意だ。基本的にBPMは160以上、既存のダンスとはかけ離れた"フットワーク"と呼ばれるダンス、そのすべてが今までにないものであり、だからこそ僕もジューク / フットワークに強い興味を惹かれるのだと思う。いろんな要素が小奇麗にまとまった幕の内弁当的な昨今のダンス・ミュージックも、"芸術的観点"からすればそれはそれで面白いものだし、僕も愛聴するアルバムはいくつも存在するが、ジューク / フットワークには「肉と飯だけあればいい!」というワイルドなシンプルさがあって、そこがまた良いのだ。エッジを丸めてオブラートに包むのではなく、むしろ自分達の鳴らす音に絶対の自信を持っているから、エッジを見せつける。

 また、ジューク / フットワークを聴いていると、オーティス・レディングの音楽を想起してしまう。もちろんオーティス・レディングとジューク / フットワークが似ているのではなく、現場の匂いやそこに根付く文化をビートやグルーヴといった音楽的要素で見事に表現している点に、オーティス・レディングの音楽を想起してしまうということだ。オーティス・レディングは、自らの声やメロディでもってアフロ・アメリカン文化の価値を見せつけたことは周知の事実だが、これと似たようなものをジュークにも感じる。ラップのように言葉でアピールするわけではないが、自分たちが会得したグルーヴとリズム感覚によって現地のゲットー文化を表現しているジューク / フットワークを聴いていると、感動に近い喜びを抱いてしまう。

 そしてジューク / フットワークは、ドラムンベース以来のビート革命に近い音楽だと思っているのだが、どうだろうか? ドラムンベースまでは、BPMやリズムといったビートの部分を中心に変化させてきたダンス・ミュージックだが、エレクトロ・クラッシュ以降はニュー・エレクトロ、ダブステップという音に特色を打ち出した音楽がダンス・ミュージックを彩ってきた。そうしたなかでビートの部分は、原点回帰的にシンプルな方向へ向かっていったが、そう考えるとジューク / フットワークは、本当に"新しい"と言える音楽だと思う。

 尚、現在日本にジューク / フットワークを広めるためのキャンペーンをやっているそうで、対象商品を買うと、ジューク / フットワークをわかりやすく解説した小冊子、さらに《Bootytune》を主宰するDJフルトノによるミックスCDがついてくる。そういうこともあって、このレビューでは僕がジューク / フットワークを聴いて感じたことを書いてみた。というのもジューク / フットワークは、とてもフィジカルで「踊ったもん勝ち!」なダンス・ミュージックだと思うので。要は能動的に、感じるがままに踊ったらいいのです! こんな締めでは「いままで書いてきたのはなに?」と怒られそうだが、本当にそうだからしょうがない。とにかく、本作をキッカケとしてジューク / フットワークの世界に触れてみてほしい。AKBで踊るのもいいが、たまにはジューク / フットワークでも、なんてね。では。

(近藤真弥)

 

※キャンペーンについては、下記のリンクを参照してください。

http://soundcloud.com/pdis_inpartmaint/sets/v-a-planet-mu-juke-footwork-jp

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