ROB CROW『He Thinks He's People』(Temporary Residence)

|

RobCrow.jpg  インディー・ロック界のハード・ワーカー、ロブ・クロウの4年振りのソロ・アルバム。実はこのアルバムのリリースが発表されて間もなく、ピンバック(Pinback)の新譜が2012年初頭にリリースされることがアナウンスされており、ファンの多くの関心は、既に来年へと寄せられているに違いない(私もその一人)。しかしながら、あらかじめそんな朗報が流布されてしまうと、どうしてもこのアルバムを色眼鏡に通してしまう。ソロ作品が緩衝材としての役割を担っており、クリエイティビティを滾らせてピンバックの制作に至ったのではないか、とか。このアルバムが"ツナギ"だったらどうしよう、とか。かなり投槍に言ってしまえば、そんな憂慮は余計な気遣いで、迷走も何も無く、本盤でも安定してミニマルなインディー・ロックが鳴らされていることに変わりはない。

 ピンバックに漂う、美しい情景を喚起させるような音色やフレーズ、ポスト・ロックらしさは希薄になっており、本盤はかつてのヘヴィ・ベジタブル期のロブ・クロウを彷彿させる。どちらも大好きな者としては、この方向性へのシフトは大歓迎であろう。ヘヴィ・ベジタブルが一直線ながらも複雑な回転がかけられたボールであるなら、ピンバックは複雑な軌道を描きつつも、最後は素直にミットへ飛び込むボールなのだ。複雑な構成や展開など目の敵にしているかのような潔さが堪らない。

 更に言うなら、ポスト・ロックをドロドロに溶かして、ミニマルの鋳型へ注ぎ込むのが従来のピンバックであるのに対し、本盤はヘヴィ・ベジタブル期の自分自身が、ミニマルの鋳型に注ぎ込まれているような印象である。短い曲がせかせかと立て続けに雪崩れ込んでくる早急さは、まさにピンバック編成で再現されたヘヴィ・ベジタブルである。ピンバックの新作を控えている矢先に、原点回帰(原点でもないけど)のようなアルバムをリリースしてくる辺り、小気味良い捻くれ加減は健在である。

(楓屋)

retweet