オウガ・ユー・アスホール

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OGRE YOU ASSHOLE

そういう場所をどう思うかっていうのは
みんな次第なんじゃないかな


OGRE_201108_A1.jpg彼らは、またもや新しい境地に達した。

昨年リリースされたEP「浮かれている人」で表現されていた多彩なサウンドも、よりグルーヴィーになったビートも、さらに驚くほどの成長を遂げている。

4人組から、トリオとなってのニュー・アルバム『homely』は、音楽的なおもしろさにあふれているのみならず、そのテーマ性も実に興味深いものとなっている。

いや、こんな冷静ぶった物言いにはとても収まりきらない。この2011年の日本に生きる自分にとって、まったく人ごとではないレベルの問題意識に貫かれているような気がして仕方ない。

彼ら独特のユーモアと表裏一体をなす、そんな部分にも迫るべく、中心人物の出戸学に聞いた。


内容、かなりビックリしました。音はまたさらにおもしろくなってる。それプラス、よりメロディアスになってる。

出戸学(以下D):最初作るときに「今までのオウガっぽい2本のギターの絡みみたいなのをとりあえずやめよっかな」っていうところから始まって、そこで「何やるんだ」ってなったときに、今のが出てきたっていうか。

「何やるんだ」ってところでキーワードみたいなのは何かありました?

D:「コンセプト・アルバムを作ろう」って話を前からしてて、今回は「居心地がよくて悲惨な場所」みたいなのをテーマにして作っていこうと。そこから音だったり歌詞だったりアートワークだったりっていうのを統一して、ひとつの作品を作ってみようかなっていうのから始まったって感じすかね。

まさに『homely』ってタイトルそのものですね。そのコンセプトっていうのは震災前からあったんだよね?

D:震災前からあって、軽いユーモアぐらいな感じで言ってたんですけど、震災起こっちゃったら絶対そっちに引き寄せられるなみたいなのもあって。そのテーマが出てきたときはもっと笑える感じでしたけどね。

冗談っぽく笑い飛ばす感じだったと。

D:はい。

「居心地がいいけど悲惨」っていう言葉の持つ意味も、地震の前後で結構変わっちゃってる部分があるかもしれない。

D:そうすね。

よくオタク系の評論とかで「終わりなき日常」みたいなこと言われてたじゃないですか。「とんでもない...世の中がひっくり返るようなことっていうのはないだろう」みたいなことが前提にあるという...。じゃあ「震災後どう変わったのか?」みたいな。

D:ああー、確かに。「終わりってあるのかな」って感じはしましたよね。

そうそう。それによって、「居心地がいい」っていう意味、それから「悲惨」っていう意味、その両方が結構変わったのかな? というか。もし以前の状態を「すごいことがないだけに悲惨」と捉えるとしら、ちょっと違う感じになっちゃったとか...。

D:そうすね。

だから、「今この作品について、どう捉えるか」考えるのが、なかなかややこしいことになってくる(笑)。「フェンスのある家」っていうのが3曲目に入ってるじゃないですか。この歌詞やタイトルはアルバムのテーマと深く関わっている?

D:そうですね、テーマに近い。全部の曲がテーマのなかでやってるけど、わかりやすく出ている曲かもしれないですね。(曲のなかに)語り(のパート)もありますし。

女性ゲストの語りですね。結構インパクトありましたよ。これはどなたでしたっけ? バディ、ガール&メカニック(Buddy, Girl & Mechanic)というバンドの方みたいですが。

D:XiROHちゃんっていって、(プロデューサーである)石原さんの友達で、僕はレコーディングのときに1回会っただけなんですけど、フレーミング・リップスのドラマーとかと向こうで映画音楽とかを一緒に作ったことあるとか言ってましたよ。

なるほど。アルバムのテーマの話に戻ると、「居心地がいいけど悲惨」っていうのは"日本"のことでもあるのかなあ? 『homely』ってタイトルは"home"という言葉の派生語なんだけど、大きく見れば。

D:『homely』って(ポジティヴな意味とネガティヴな意味の)両方の意味があって、そのほかに"日本"って言ってもいいし"自分のこと"って言ってもいいし、その枠はどこでもいいっちゃいいんですけどね。

確かに両方の意味がありますね。アメリカ英語だと「ダサい」みたいなニュアンス、イギリス英語だと「おちついた感じ」っていう。

D:それもあとから辞書とか見ててたまたま見つけて、今回のテーマと同じようなことをひと言で言えることにビックリしましたけどね。

昨年のUSツアー、あれはあれで素晴らしい体験だったけれど、それをへて、逆に今回は「日本のバンドである」っていうことに自覚的になったって見方もできるのかなあと思ったんだけど。

D:ああー、まあそうかもしんないすね、知らないうちに。実際"日本のバンド"っていう自覚は今まで...いや、あったかな。結構海外のバンドと対バンすることが多かったので、"日本のバンド"っていう意識は持ってましたね。

それが増々強くなってきたっていうか、そんな感じがしなくもないですけどね。

D:今回のアルバムでですか?

今回のアルバムで。それこそ『homely』ってタイトルに引きずられてそう思ったのかもしれないけど(笑)。

D:ああー(笑)。

この間のEP...「浮かれている人」は、すごくリズミックな感じだったじゃないですか。で、あのあとライヴを観て、最近のオウガはグルーヴがすごいなあと思ってた。ビートがよりダンサブルになってきたというか。今回のアルバムも、そうじゃないですか?

D:そうすね、まあそういうところは。ベースは、ある意味初心者が弾いてるんですよ、今回のアルバム。ギター(の馬渕啓)が弾いてるんで。ベース(だった平出規人)が「辞める」って言ったんで、ギターが「じゃあ俺がベース弾く」って言って。

『homely』聴いて「おもしろいベースだな」と思ったんだけど、そういった流れもあったんですね。すごくギターっぽいフレーズを弾くニュー・オーダーのピーター・フックみたいな感じともちょっと違って、基本的にはファンク・ベースっぽいのに「動いてるなあ」と(笑)。

D:そうですね、メロッディックな(笑)。

そうそう(笑)。

D:ベースが変わったことによってバンドのグルーヴも変わって、なんか新しいバンドをやってる気分で再出発できたっていうか。もともとはまったく違うものを作ろうと思ってデモまで持ってきたんすけど、ほんとに違うバンドになっちゃったみたいな(笑)。

ニュー・オーダーからの連想じゃないんだけど、アルバム3曲目の「フェンスのある家」、ちょっとストーン・ローゼズっぽくないですか? 「Fools Gold」とか、あの頃の。

D:ああー、言われれば(笑)。

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そんなわけで、アルバム収録曲それぞれについて聞いていきます。まず1曲目「明るい部屋」。すごくアヴァンギャルドなインストゥルメンタル。オープニングで一瞬データ・エラーかと思ったんですが(笑)。

D:ふははははは、確かに「何だ!?」と思いますよね。

そういう効果を狙った?

D:何か起こりそうな感じっていうか、自分で何回聴いても「大丈夫か?」っていうぐらいのものから始まってほしいっていうのがあって、もうさすがに慣れましたけど、それぐらいのほうがおもしろいかなっていう感じで。

イメージ的なモチーフとかあったんでしょうか?

D:曲を作っててああいう要素が出てきたんですよ。ノイズ的なもの。そのノイズがすごい良かったんで、そこからもう一回イントロを作り直したみたいな感じで。

変な反復ノイズに。

D:そうすね。

2曲目「ロープ」にそれがつながってますよね。2曲目もどっちかっていうとダンサブルというよりは昔で言うインダストリアルっぽいというか。1曲目と2曲目の感じが、たとえばスロビング・グリッスルっぽいと思ったんだけど。

D:クラウトロックとか結構聴いてて、そこらへんとかの感じはあると思いますけど。

ノイとか。最近そういうのを?

D:馬渕が聴いてたんすかね。もともと違ったアレンジだったんすけど、「もっと省いてこう」ってアイディアが出てきて、彼がやって、それでこうなったって感じすね。

なるほど。で、さっき話に出た3曲目「フェンスのある家」。これはクールでファンキーな曲にしようと思ってこうなった?

D:僕らなりにそういうものをやろうと思ってたんですけど、これもギターの馬渕がアレンジしてるんすけど、僕が持ってきた原曲をガラッと変えられたって感じで(笑)。

4曲目「ライフワーク」、このメロディーは今までのオウガには絶対になかった(笑)?

D:そこまではいかないかもしれないですけど、まあ、ね(笑)。

最初「こんなにメロディアスな曲ってあったっけ?」とか思って。

D:ははははは。これは僕が持ってきた曲を、わりとそのままな感じで。

普通のポップスとかAORふうとか言えなくもない?

D:はい。アルバムのなかでは浮いてるかなと思ったんすけど、全体通してみて「やっぱりここに必要かなあ」と思って入れて。最初迷ったんすけど、入れるかどうか。

なんか異質な、ある意味明るい曲だよね。

D:アルバムのなかでは異質ですけど、そこにちょっとアクセントとして入れてもいいかなという感じで。

異質ではあるけれど、アルバムのなかに実にうまくはまっていると思います。で、5曲目「作り物」。

D:これ、アルバムのなかでは最後に作った曲なのかもしれないです。アレンジはどっちかっていうと、今まで作ってきたような(ギター)2本の絡みみたいなのはなくて「ギターはコードを弾いててちゃんとソロもある」っていうようなわりと普通の構成の曲ですけど、コードの進行がわりと変というか、自分たちのなかではなかったことをやろうとしてる曲ではあるんですけど。

たしかに、メロディーのおもしろさという点では、「作り物」のほうがより大胆と言えますよね。新しい挑戦...といえば、8曲目「マット」でも変わったノイズがずーっと流れてませんか?

D:そうなんすよ。あの「マット」っていう曲を作ってるときにあのノイズをつけてて、それでそのあとイントロにもそれを使おうということになって。

ああ、やっぱ1曲目「明るい部屋」とこれは仲間になってるんだ。

D:そうすね。なんとなくアルバム全体で「あ、こことここがつながっている」とかそういうのは見えたほうが楽しいかなと思って。

結構見えましたよ。歌詞的にも、7曲目「ふたつの段階」と8曲目「マット」、両方の冒頭に、どっちも《塔》って言葉が出てきたり(笑)。

D:そうですね(笑)。

この「ふたつの段階」の歌詞も結構不思議な...。

D:なんか、どっかでみんな終わらせたい気分があるようなことを書いてるというか、例えば仕事とかみんな一生懸命やってるけど、たぶん「やめる」とかって言うときってすごく気持ちいいと思うんすよ。

そ、それって、ベースの彼の件とは関係なく...。

D:これはベースが脱ける前に書いた歌詞なんで(笑)。今回のアルバム、現実とリンクすることが多くて...。とにかく、この歌詞を書いたときに思ってたのは、「やめる」って言う瞬間って、きっと気持ちのいいもんだろうなと...。だから傾く塔にみんなが入っていきたがる...っていうような歌詞なんですけど。

なるほどね。この話、もうちょっとつづけたいんだけど、その前に...。6曲目、「同じ考えの4人」。オウガが4人組だったときと、3人組になった今では意味も変わってくる?

D:というか、何人でもよかったんですけど。ひとりかふたり以外なら。適当に「バンド4人だから4でいいかな」って(笑)。大多数って感じで、3以上だったら何でもよかったんです。

(笑)「同じ考えの4人」の歌詞は、どういうことを歌ってると言えますか?

D:慣れてる場所がどうなのかっていう話です。『homely』と一緒な感じで「居心地がいいけど...」みたいな。

アルバムのテーマに、つながってくる。でもって、さっきの「やめると気持ちいいだろうな」っていう話だけど、実は8曲目「マット」から、そんな感覚が強く伝わってきたんですよ。歌詞に《眠りたい》ってフレーズがいっぱい出てくるじゃないですか。自分のなかにもある、そんな部分とシンクロしちゃって、なんとも...(笑)。

D:まあだけど、作ってるときは軽い気持ちで書いてたんすけどね(笑)。

(笑)いや実際、こうやって話している内容の割に、アルバム自体の印象は決して重くないんですよね。いい意味で。ぐしゃぐしゃ考えすぎると、そのせいで気が滅入りそうにもなってくるけど。

D:テーマは重いかもしれないですけど、書いてるときはわりとさらっとしてるというか。

聴いてる分にもそうですよ、本当に! そして9曲目のラスト・ナンバー「羊と人」。これはものすごい皮肉なんですかね?

D:そういうのもおもしろいっていうか(笑)、そういう状態は見てておもしろいなと思うっていうか。皮肉っていうほどでもないすけど、僕もそういう状態でもあるし、そういう状態は微笑ましいというか(笑)。

歌詞の最後の部分を読みあげると、《このまま円になっていこう/生ぬるい壁で/群れたいだけ/隠れたいだけ/このまま円になっていく/包まれた この輪の中/ダラダラ》ってな状態...。この表現、皮肉っぽくない?

D:皮肉っちゃあ皮肉かもしれないですけど、そういう場所にいたいっちゃあいたいっていうか。

たしかに。でも「羊と人」ですから...。

D:ははははは。

例えばピンク・フロイドの『Animals』ってアルバムとかジョージ・オーウェルの小説『動物農場』みたいに、人を従順な羊と犬とブタに分けてみたりとか、「俺は羊じゃなくてオオカミになりたい」とか(笑)そういうふうじゃない。だからこそ、実におもしろいな、と。

D:皮肉の気持ちもあるんだろうけど、自分がそこから離れてないから何とも言えないっていう(笑)。

深い(笑)。じゃあ、日本でも何でもいいんだけど、「居心地がいいんだけどどうなのか...」という部分にしぼって、ズバリどうなんですか? そこを脱出したほうがいいと思うのか、それともそこにずっと居つづけていいと思うか?

D:気づかなかったらいいと思いますけどね。気づいちゃったときは居られなくなるんじゃないすかね。そんな感じしますけどね。

このアルバムのトーンというか、テーマにしても、出戸くんなりオウガなりの姿勢としても、「そっから脱出しようぜ」とか「革命起こそうぜ」とかそういうふうじゃない。

D:そうすね。まあ僕らがひっぱるとか、そういうのではないと思います。そういう状況があるっていうのを描いたというか。

自分もそのなかに置きつつ見せてるっていうそういう感じ?

D:そういう場所をどう思うかっていうのはみんな次第なんじゃないかなっていう。

問題提起的なアルバム(笑)。

D:ははははは。

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でもって、「羊と人」の曲調自体は、かなりファンキーというかポップです!

D:それはわりと最後のほうなので、テーマが重いところから曲調を軽く最後して「全部ウソだよ」的な感じにしたかったというか(笑)。このテーマ自体もというか。

おお、いいですね! さっき「ライフワーク」がすごくポップだって話になったけど、この曲もすごくポップ。イントロ部分なんか、まるで(マーヴィン・ゲイの)「What's Going On」かと(笑)。誰かに言われた?

D:言われました(笑)。ベースラインがそれになっちゃったていうか、たぶん。

馬渕さんがそんな感じに?

D:そう(笑)。アレンジで。

この「羊と人」や「ライフワーク」など、今回のアルバムには、トランペット、サックス、フルートといった楽器を弾く方々がゲスト参加しています。調べてみたらジャズ系の人みたいですね。

D:(オウガの担当A&Rでもある)VAPの澤藤くんが担当している大野雄二バンドでやってる方たちなんです。

普通にかっこいいですよねー。

D:そう。でも、あれが全部上手いバンドがやっちゃうとたぶん普通のAORとかイージーリスニングっぽくなるっていうか、わりと聴いたことがある音像になると思うんすけど、僕らみたいなバンドの上にああいうほんとに上手い人たちが乗るっていう、何つうんすかね、"異物感"みたいなのって今回のテーマとかにもすごい合うような気がして、それがサックスの音だったりするのがピタッときたっていうか。

"異物感"、なるほどね。しつこくテーマに関連づけると、例えば日本がそういう場所だということに気づいてしまった人は異物になっちゃうみたいな...。どうすか、それは(笑)?

D:「どうすか」って(笑)。まあ、サックスのああいう音って洗練されてて聴きやすくて、テレビとかラジオでよく聴く感じなんだけど、そういう日常的な音っていうか、僕らが普通に生きてると。そういうものが僕らみたいなとこにポツンと入ってくるとまったく違うものに聴こえるっていう感じが、持っていた違う側面が見えるっていうか、その素材の。あと僕らも違うものがポコッと入ることによって、僕ら自体も演奏が違うものになっていくっていうか、そういうお互いの、普通はここにいるべき音がこっちに来ちゃって、もともとこっちの場所が違うものになってくっていう感じはありましたね。だから今回のテーマとかも一瞬ポツンと何かが入ることによって居心地良かった場所がパッと気づいちゃうみたいな瞬間とかに近いっていうか。

なるほどね。でも一方では「全部冗談でした」っていうような軽い曲にしたいっていう。

D:全部冗談なんすけどね。

うははははは。そのへんすごく微妙というか、何て言えばいいんだろうなあというか、落としどころとなる言葉が見つかんなかったんだよね。テーマ的にはヘヴィーだってわかるし、もっと聴いててヘヴィーな感じになってもいいと思うんだけども、そうはならない...。"冗談"っていうのはあれなんだけど、前も言ったかもしれないけど、ある程度笑えるところはあるよね、オウガって。

D:そうすね(笑)。笑ってもらってもいいし、深く考えてもらってもいいし。アルバムの土壌がデカいっていうか、自分でも確かにわからない部分とかあるし、ある意味ひとつのテーマに突き進んできたのに、引きつれてきたものが意外とデカ過ぎて(笑)。いつもはテーマとか考えないでいろんなとこから取ってきたつもりなのに、わりと中に立ってる感じなんすけど、今回はテーマ一本で絞ってきたつもりなのに幅が広くなって、確かに「キーワードが見つからない」っていうのはすごくわかります。"ライターさん泣かせ"というようなアルバムになったかもしれないです(笑)。

そうかもしれないですね(笑)。一昨年の(アルバムとしては)前作『フォグランプ』はツアーっていうのを思わせるところがあったと思うし、昨年のEP「浮かれてる人」のEPだったら、まさに浮かれている感覚、浮かれてるんだけどその浮かれてる姿を違う場所から見てる...という感じに、わりと集約することがむつかしい。

D:今回の「居心地が良くて悲惨な場所」っていうのは「浮かれてる人」的なものも、わりと含んでるというか、テーマ的には。

「浮かれてる人」よりももうちょっと大人っぽくなってる(笑)?

D:そうすね、もうちょっと考えて、「浮かれてる人」っていうのは「なんとなく」で作ったのが、今回はテーマを作ろうとしたときに「テーマは何がいいかな」って考えたときにもう一回翻訳し直したというか。

アートワークもいいですね。窓のないホテルみたい?

D:窓のないホテルって、普通にありそうですけどね。

あると言えばあるかも...。そして、ちょっと原子炉の建家っぽくも見えなくもないと思ったり(笑)。

D:それも言われました(笑)。

全然それは意識してないですよね?

D:まったく意識してないです。むしろ、アルバムには侵入させないようにはしました。

そういった部分は意図的に外した?

D:いや、曲自体はその前からできてたんで関係ないっていうか、レコーディングしてるときも今回の地震のことを歌いたいって気持ちもなかったんで。心の影響はあると思うし、アルバムの最終形にそれがつなげられる部分もあるんでしょうけど。

このインタヴューの初めに、かつては「終わりなき日常」みたいなことを言われていたって話をしましたよね。震災後、そうは言えなくなったという意見も聞く。だけど実際どうなんだろう? 出戸くんとしては、震災の前後で「居心地がよくて悲惨な場所」というテーマの持つ意味が変わってしまったとしても、あえて「変わった」部分は避けて、むしろそうではない部分にフォーカスしたかった?

D:もしそれの意味が変わったとしても、アルバムはついていけるんだろうなっていう、そんな土壌があるっていうか。別に僕がもともとその感覚じゃない場所で書いていたとしても、そっちへ行ったとしても...別に世界が変わったとしても通用するんだろうなと思ってたし、別に...そもそも音楽って、例えば100年ぐらい前のものをみんな余裕で聴いてるわけじゃないですか。

そこまで大袈裟に言わなくても20年30年40年50年前のものとか普通に聴いてるよね。

D:ええ。だから「どう変わろうがついていけるんだろうな」っていう感覚はあったんで、震災後に手を加えたとかっていうことはなく、そのままいきましたけどね。

それがすごく良かったんだろうね。ある意味オウガらしいというか。

D:はははは。それで、別に震災後で聴いたとしても「震災後に書いたんじゃないか?」と思われる部分とかもあるのは、その前からみんな誰でもそういう要素は持ってるんで。

まさに、そうですね。

D:まあ、あのときみんな感覚が結構変わったと思いますけど、その変わったあとの感覚から見ても、「出していいな」って思えたっていうか。

だからさ、僕も「『終わりなき日常』が終わった」といった表現で単純に言い切っちゃっていいのかな? という気がするんです。そう言ってしまいたくなる気持ちはわかるんだけど、実は変わってない部分もあるっていうか。

D:ああー。

もちろん変わったところもあるよ。変わったところもあるんだけど...。だから『homely』に関しては、変えなかったことがむしろステートメントになってるというかね。

D:まあだけど、そこで一回変えちゃったら、もともとそういう(ある一定の)状況でしか聴けないものを書いてたのかっていうことになるわけだから、逆に言えば。

それだけの強度を持ったアルバムだと思います。

D:だといいんすけど、変えようとは思わなかったので、そこで何があっても「変える必要はないな」と思ったんで、はい。

変わりようのない本質を捉えていると言っていいんじゃないでしょうか(笑)。

D:そうすね(笑)。


2011年8月
取材、文/伊藤英嗣

OGRE_201108_J.jpg
オウガ・ユー・アスホール
『ホームリー』
(VAP)

*レヴューは、こちらに載っています。【編集部追記】

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