NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS『Noel Gallagher's High Flying Birds』(Sour Mash / Sony Music)

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Noel Gallagher'sHFB.jpg  ノエル・ギャラガーの1stソロ・アルバムを聴きながらストーン・ローゼズ再結成のニュースを追っていた。オアシスは「Sally Cinnamon」のシンプルなリフに導かれて、バンドとしての方向性を見定めた。"憧れられたい"というメロウな囁きの代わりに"今夜、俺はロックンロール・スターだ!"と高らかに宣言してみせた。そのオアシスも、今はもう存在しない。そしてビーディ・アイとノエルのアルバムが出揃った瞬間にローゼズが復活した。本当に不思議な巡り合わせだと思う。

 記者会見でレニが10数年ぶりに元気な姿を見せ、ジョン・スクワイアが笑っている。マニは正式にプライマル・スクリームからの脱退を告げ、「車輪が外れるまで、走り続けるぜ!」とイアン・ブラウンが宣言する。これから鳴らされるストーン・ローゼズのサウンドは「One Love」のあとに失われた5年間を埋め合わせるものなのか? 『Second Coming』の音像をさらに拡大させるものなのか? それとも...? すべては来年6月にマンチェスターで開催される復活ライヴのあとで明らかになるだろう。

 初めて自分のおこづかいでレコードを買った日から20年以上経つけれど、いま改めて"音楽はタイムレス"だと気付かされることが多い。1991年にクラブチッタ川崎で見たプライマル・スクリームのボビーは最高にセクシーでヘロヘロだった。それを20年後に再体験するなんて、誰が想像できただろう? 「ストーン・ローゼズのマニはプライマル・スクリームに入るんだぜ!」って、当時の自分に話しかけてみたい。きっと信じないだろうな。「話はまだ終わっていないよ。ストーン・ローゼズは2011年の10月に...」。僕は今、目の前で起こっていることが信じられない。

 ストーン・ローゼズが友情を取り戻した。そして僕の手には『Noel Gallagher's High Flying Birds』と名付けられた1枚のCDがある。9月、リアムはビーディ・アイとして日の丸をバックに「Across The Universe」を歌った。僕は最前列でそれを見た。全部、当たり前のことなのかな? 少し上手になったノエルの歌声を聴きながら、僕はそんなことを考えている。

 オアシスのアンセムを書き続けてきたノエルのこと。このアルバムにオアシスの面影を見つけるのも難しいことじゃない。「WonderWall」を彷彿とさせる「If I Had A Gun」、オアシス時代に書き貯めていたと公言されている「(I Wanna Live In A Dream In My) Record Machine」、そして(日本盤ボーナス・トラック2曲を除く)ラストを締めくくるのは「Stop The Clocks」というオアシスのベスト盤と同名の曲だ。それでも、このアルバムは当然のように"ノエル・ギャラガーのアルバム"として僕の耳と心を奪う。ギター、ベース、ドラムス&ヴォーカルというバンド・アンサンブルの束縛から解き放たれた楽曲は、"High Flying Birds"と呼ぶのに相応しく、自由に飛び回っている。冒頭の「Everybody's On The Run」から鳴り響くストリングス、全編を貫くアコースティック・アレンジ、そして切なくも力強いメロディと詩情。アルバム・ジャケットを見れば、ガソリンスタンドの照明という無様に光り輝く羽根を広げながら、一人の男が飛び立とうとしている。

 2011年の今、日本で音楽に興味を持たない人たちは、どんな気持ちで毎日を暮らしているんだろう? ひとつのバンドが解散したり、再結成したりすることに一喜一憂する僕たちをバカみたいだと思っているのかな? 最新の音楽を追い求め、今まで知らなかった過去の曲に感動し、聞き慣れた歌を飽きずに何度も再生している。それは少しでも「今、この瞬間」を良くするためだ。どんな時も音楽は「今」を変える。音楽は歌い、踊り、祝福する。僕はそれを「可能性」と呼びたい。

 ストーン・ローゼズはバンドとしての「今」を取り戻した。オアシスが残した曲は「今」も僕たちの心を奮い立たせる。そしてビーディ・アイに続いて、ノエルのアルバムが「今」から鳴り響こうとしている。

(犬飼一郎)

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