MANIC STREET PREACHERS『National Treasures: The Complete Singles』(Columbia / Sony)

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MANIC STREET PREACHERS.jpg  マニック・ストリート・プリーチャーズについて語るときほど、あれこれ考えをめぐらせることもないだろう。マニックスについて語るということは、自分を暴露するに等しい行為だからだ。それは、彼らがリスナーの心に足跡を残しつづけてきた証でもあるし、常に音楽シーンの最前線でサヴァイヴしてきた歴史でもある。だからこそ、マニックス像というものがそれぞれあり、数多くの議論も行われてきた。


 『National Treasures: The Complete Singles』は、そんなマニックスの歴史を知るには最適なベスト・アルバムとなっている。「Motown Junk」から最新作『Postcards From A Young Man』までのシングルを網羅しているし、これからマニックスを聴きはじめるであろう人々の入門書としても最適だ。しかし本作は、長年マニックスを支え続けてきたファンに対するプレゼントでもある。本作にはザ・ザ「This Is The Day」のカヴァーが収録されているが、この曲のMVが思い出を振り返るような作りになっており、ファンとマニックスの間だけで共有できるメッセージも込められている。こうしたダブル・ミーニング的なコミュニケーションはリスクが伴うもので、多くの誤解や批判も受けるはずだ。実際マニックスは、そうした誤解や批判を浴びてきたし、『Everything Must Go』で国民的バンドになってからも、それは変わらなかったと思う。それでもマニックスは、挫折や困難を乗り越えてきた。


 マニックスとは、世界一ダサいバンドであり、不器用なバンドである。良くも悪くも引き際というものをわきまえず、だからこそ傷つくことも多かったろうが、それでも見捨てることができないバンドだった。これは多くの人にとってそうではないだろうか? でなければ、"国宝"と名付けたアルバムを平然リリースできるような存在になれるはずがない。前述したように、彼らは多くの誤解や批判を受けてきたが、同時に多くの人にも愛されてきた。マニックスのフェイヴァリット・アルバムをひとつだけ挙げるとすれば、躊躇なく『The Holy Bible』と答えるが、そのときにしか生まれえない最大瞬間風速を閉じ込めてきたという意味では、リリースしてきたどのアルバムも一緒だ。だから正確には、『マニックス』と言うべきなのだろう。彼らの生き様や精神そのものが、ひとつの作品として人々の心を捉えているのかもしれない。


 ブックレットの最後のページ、メンバー3人の写真と共にバンドメンバーのクレジットがある。そこにはジェイムス、ニッキー、ショーンの他に、この名が記されている。


 「Richard Edwards」


 彼らはこういうヤツらなんだよね。マニック・ストリート・プリーチャーズは、いつまでも4人なのだ。



(近藤真弥)

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