FALTY DL「Atlantis」(Ninja Tune)

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FaltyDL.jpg  WOMBにおけるプレイも記憶に新しいファルティーDLの新作EP。最近ファルティーDLのような音楽のことを"フューチャー・ガラージ"と呼ぶそうだが、本作は未来だけでなく、過去の偉大な音楽の影もちらつく面白い作品だ。

 まず「Atlantis」は、初期《Warp》のリリース群を想起させる。ほんの少しレトロチックだが、彼にしては珍しく複雑ではないとっつきやすい曲。奇をてらったインパクトより、音によって空間を演出することに重点が置かれているように思う。ビートが比較的シンプルなのもそのためだろう。ハウス・セットに組み込まれても違和感がないトラックだ。一方「Can't Stop The Prophet」では、ストリングスや鳥の鳴き声など、実に様々な音がカットアップされ、四方八方に散らばっている。いきなりドラムンベースが始まる展開は、ニュー・エレクトロから突如トランスへと変貌するディジー・ラスカル「Holiday」を彷彿させなくもないが、「Can't Stop The Prophet」のほうが幾分抑制的でエレガントだ。この「Can't Stop The Prophet」の目まぐるしさを引き継いだ「My Light, My Love」は、本作中もっとも忙しいトラックかつ実験精神が発揮されたトラック。正直「落ち着けよ!」と思わなくもないが、これがまた楽しいんだよね。ラスティーハドソン・モホークもそうだけど、肩の力を抜いて自由にやれば、アイディアが詰まった風通しの良い曲が生まれる。聴き込めばいろんな仕掛けが施されていることに気づくが、謂わゆる"ながら"で聴いてもすごく耳に残るし、リスナーに1対1で聴くことを過度に求めていない。

 ここまでは彼が過去に見せてきたものとは違う一面が鳴っていて、いつものファルティーDLを期待していたリスナーは不安に思うかもしれないが、彼の名を聴いて思い浮かべるであろう音に忠実なガラージ・サウンド「The Sale Ends」で本作は幕を閉じるのでご安心を。とはいえ、そこはファルティーDL。セクシーといってもいいムーディーなグルーヴが聴き手を包み込む、文字通り彼にしか生み出せない極上ガラージ・トラックとなっている。

 全体を通して聴くと、すべての音が柔らかく洗練されているのがわかる。この手の音楽に多いハードで硬質な音を求めているリスナーは肩透かしを喰らうかもしれないが、"剛"よりも"柔"を選ぶことによって、ファルティーDLは色彩豊かな音楽を鳴らすことに成功している。メランコリーでどこか影を感じさせる場面もあれば、「Can't Stop The Prophet」のようにレイヴィーで刹那的な瞬間も演出するなど、展開の早さも秀逸だ。全4曲のEPとは思えない濃密な時間は、少しばかり息苦しさを感じることもなくはないが、それでもやはり、ファルティーDLの才能は特別だ。そう思わせてくれる良盤。

 

(近藤真弥)

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