COLDPLAY『Mylo Xyloto』(Parlophone / EMI Music Japan)

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Coldplay-Mylo-Xyloto.jpg  彼らのライヴを今年のフジロックで観たときから、来る最新作が彼らにとって余裕の最高傑作になるであろうことを確信した。そのライヴから約2ヶ月後にリリースされたこのアルバムは、「Don't Panic」よりも「Politik」よりも「Square One」よりも「Life In Technicolor」よりも壮大で予感的で宇宙的で、飛び立つようなフィーリングに満ちた素晴らしい「Hurts Like Heaven」という曲で幕を開ける。その次に聴こえてくるのが重厚なベースラインがイントロの中核をなす「Paradise」。ノア・アンド・ザ・ホエールも早速カヴァーしたこの曲だが、前作ではこういう作風(というのはアコギ主体ではないへヴィーなバラッド)の曲がことごとくイマイチだったのに比べると、格段の進歩を遂げている。ブライアン・イーノが前作のアルバム完成直後に「早く次のアルバムを作ろう。もっと良い作品が作れるはずだから」と言ったのは、まさにこういうことだったのだ。そして、4曲目の「Charlie Brown」が早速今作のハイライト。このギターフレーズは最早反則に近いが、ついに彼らが「Yellow」「In My Place」に並ぶ名曲を手にした瞬間だ。

 彼らの多くのファンが言うように「ファーストの頃の良さを失わなければ」、あるいは「Charlie Brown」は誕生しなかったかもしれない。彼らの曲にわたしがピュアな感動を禁じえないのはこういうところなのだ。結局、音楽的に最初の地点に戻るなんてことを彼らは1ミリも考えていない。ただ、たとえ途中で道に迷ったとしても彼らは音楽への真摯な姿勢だけは見失わないので、アヴァンギャルドが恋しくなろうが、自分たちの過去の作風に退屈さを覚えようが、ソングライティングはその輝きを保ち続ける。最初「Every Tear Is A Waterfall」を聴いたときは「おいおい、こんな安直なのはナシだぜ」と思ったが、それはまったくの間違いだった。これは彼らが何周もしてたどり着いた境地だったのだ。2011年にここまでのアンセムがほかに何曲誕生しただろうか。印象的なシンセサイザーから始まり、最後まで高みに上り続ける展開はライヴの最後にはぴったりだ(実際に最新のライヴでは最後に演奏されている)。リアーナとのデュエット曲、「Prince Of China」は正直蛇足だが、クオリティは高い。「Up In Flames」もまた、前作を経たからこそ生まれた名バラッド。一気にテンションを取り戻す「Don't Let It Break Your Heart」~ラストの「Up With The Birds」にかけては、「アルバムって、こうだったらもっと興奮するだろ?」と彼らが思って、そのまま信念通りに作ったのがよく分かる流れだ。

 彼らに突出した美的センスがあるとは思えない。それは今作のアートワークを見ても分かることだ。とくに革命的なフレーズを思いつくわけでもない。さまざまな音楽的要素を集約しているわけでも、もちろんない。かといって安易なアンセムを量産しているわけでもない。彼らはメロディがすべてで、そのメロディの澄んだ美しさを批判する言葉は、わたしにはどうも説得力が欠けているように思ってしまう。そして子供のような無邪気な好奇心がある。これは強い。だって大抵の批判なんかやり過ごしてしまえるからさ。あとはクリスがなかなか頭のおかしなフロントマンだから、普通のバンドだったら立ち止まって足元を確認するところをそのまま驀進してしまうようなところがある。もちろん褒め言葉だ。

(長畑宏明)

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