オワリカラ『イギーポップと讃美歌』ツアー・ファイナル [The Kink Controversy]

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いつも良質な寄稿を寄せてくださっている草野さんから、ライヴ・レポが届きました。

私はまだ渋谷WWWに行ったことがないのですが、近頃では様々な公演が行われている旬なハコでもあります。

これからどんどん定着していくのでしょうか。

そんな場所で、2011年9月23日、2ndアルバム『イギーポップと讃美歌』を出したばかりであるオワリカラの貴重なライヴが行なわれたということで、是非ご一読いただけたらと思います。


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 いきなり結論的なことを言ってしまえば、この日の彼ら、今の彼らを見るのに、この渋谷WWWというライヴハウスは一番適していたのではないのだろうか。去年2010年11月19日、渋谷に産声を上げた新たなライヴハウス「渋谷WWW」は、既存のライヴハウスとは違った面白い造りをしている。元々は映画館として使われ、ミニシアター系の映画とかやっていたと思われるほど大きさ(同じ映画館で喩えれば新宿テアトルより小さくした程度)のなのだが、なんと客席フロアには段差があり、最前列の所謂「モッシュピット」のすぐ後ろから3列分の列が残されている、そんなライヴハウスなのだ。防音用の設備と映画鑑賞に置かれた席を取っ払い、横の壁はコンクリートでむき出しだが。白くコーティングされた床はまだ真新しく、さらに後ろを振り向けば列がある。ライヴハウスにいる、半その気持ちが半減するのが分かっていただけるだろうか。平面的に作られた既存のライヴハウスとは違った造りであるこの場所は、関係者含め300人ほどの観客達はまるで一つの映画やショ-を見ているような感覚、身長的な妨害なく安心してライヴを見ている事が出来るわけだ。

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 ツアー・ファイナルという事で脂の乗り切った演奏を期待していたのだが、一曲目の「swing」から全力全開のフルスロットル、心躍らせていく彼ら。この楽曲は単調かつ簡単なリズム感/ノリの良さを伴ってはいないものの、一つの単音目掛けて4人全員が音をぶつけ合う、それ自体が快感に繋がる武器と成立させてしまう彼らのバンドスタイルを完璧に表している楽曲。ゆえに、彼ら4人全員が音を重ねるたびに火花のような興奮と快感が観客全員へと直結していく。プロフィールを見るとジャズへの嗜好性も感じ取れ、一昔前までは彼らがプログレッシヴ・ロックを素地した演奏をしていたという話をも聞いたことがある。ジャズとプログレッシヴ・ロック、演奏上の快感はそれぞれ異なっているのは言うまでもないが、ハイスキルかつ高い音楽IQを要求されるのは両者に通じる共通点である。その共通点を含ませつつ「いま、ここで」という一瞬の爆発力に秀でたロック本来の帰着点へと降り立つ、その姿といったら! 続く「おいでシスター」「怪人さん」「ゼットン」と立て続けに奏でていく楽曲も同タイプの楽曲で、「いま、ここ」で奏でる演奏ぶりはツアーを通して生まれた自信溢れたものになっていた。

「ロンググッパイ」と新曲「I Want You」ではスローなナンバーを入れ込む。彼らの凄さはこういったスロー・テンポなナンバーにもあるだろう。00年代ロック・バンドが奏でていたような、自己探求と自閉気味なモチーフを持っていた歌詞を表現するためのスロー・ナンバーとしては、彼らのそれは機能していない。普段はディストーション・サウンドをほとんど使わないタカハシヒョウリのギター・サウンドが曲の終り際にここぞとばかりにその歪みを着こなすのは、ドラムのカワノケンタが原曲にないリズム・パターンを力強く叩きまくるのは、スローなテンポの中でどうやって火花を散らす演奏を仕掛けていくか、そこに集約しているからだ。それが今の彼らの良さであり、ちょっとした弱点にも繋がっているのだが。

 アルバムでもそうだが、ライブでも彼らの音像はカラっとした印象が強い。歪み系のエフェクターを局所のみに使い、リバーブやエコー系のエフェクターで音色を変えていくタカハシヒョウリのギター・サウンドがその要因だろう。一音一音が無駄な装飾を脱いだ骨身だけの音、それだけで組織されたアンサンブルはまるで曲をテーマの一つにしたジャム・セッションを見ているかのようだ。

「船」「オワリカラの気分」「勇敢なるビイヒヤナウ」ではゲスト・ミュージシャンとして2ndアルバムに参加した遠藤里美が加わった。彼女が吹くサックスの音色は「船」の感傷気味なメロディにも、「オワリカラの気分」のムーディーな雰囲気にも、「勇敢なるビイヒヤナウ」のプレイの応酬にもしっかりとフィックスしており、特に「勇敢なるビイヒヤナウ」では完全にこの曲の違った面を――使い古された言葉で言えばジャジーさを抉り出していた。

 この日のハイライトと言えるシーンはタカハシヒョウリ(Vo)のMCから始まった。

「最近読んだ本の話なんですけど、文化や芸術は暗闇に向かって<僕はここにいるよ>と足音を鳴らしているようなものなんだって書いてあって。今ではコンビニで超訳ニーチェとか売られているけど、彼も最初は7部しか売れなかったみたいなんですよ。でも、その7人がいたから伝わっていって今こうなっていて...、でも自分たちミュージシャンとして、今目の前にたくさんの人がいて、足音を返してくれて、とても幸せです」

 そう言い切ったあと、「そう思えたおかげで、演奏するこちらの気持ちが変わって成長できた一曲をやります」と言って「ベイビーグッドラック」を奏でる彼ら。どことなく笑顔が見え隠れしていたメンバーの表情は、この日で終わるツアーに足を運んだファンへの感謝を表すのに十分だった。

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「住みよい家作り」を基本に都市住宅のプロトタイプを提案した「日本の現代建築家である清家清は、芸術とは何かと問われ、「芸術とは<また見たい>と思わせるもの」と言っていたのだという。この日の彼ら演奏は無論<また見たい>と思わせるほどの熱気と構築美に溢れたものであったのは言うまでもない。初見の人間は元よりこれまでのファン達ですらもこの日の彼らの「ヤバさ」がどれ程のものかというのを肌で感じ取れただろう。渋谷WWWというライヴハウスは、彼らの本質が「セッション」と「ライヴ」の臨界点として映えるのを浮き彫りにさせ、その音だけで全てを語らんとする彼らの音楽原理主義な一面をも抉り出したのだ。

 そこに一つの方向が見出せる。彼らが奏でているのはポップ・ミュージック、言葉の力をより上手く駆使することができれば、彼らはよりオルタナ・バンドとしての価値を輝かせることが出来るであろう。「オワリカラの気分」が最たる例のように、「このムードの先端で、このムードの最先端へ」と突き進んできた彼ら、彼ら自身が生み出してきた「このムード」を僕らに纏わせる力はこの日のライブで十二分に証明された。彼らがより僕ら側に立った「このムード」を歌うバンドになるのか、彼ら自身が生み出してきた「このムード」を更新していくのかは分からないし、「このムード」とは一体なんなのかを解き明かして欲しいのは僕のちょっとした願いでもある。この日聞いた新曲4曲では彼らがどう転んでいくのかを感じ取れなかったのが正直なところだが、若手ながらこれほどに鮮烈なライブができるのは彼ら以外にいないであろう。だからこそ声高に言いたい。オワリカラは日本の若手バンドのなかで一番に「swing」できるバンド、なのだと。

セットリスト

1. swing
2. おいでシスター
3. 怪人さん
4. ゼットン
5. ロンググッドバイ
6. I WANT YOU(新曲)
7. 8と約1/2
8. マッチメイカー(新曲)
9. 船 with sax
10. オワリカラの気分 with sax
11. 勇敢なるビイヒヤナウ with sax
12. マーキュリー(新曲)
13. ビート
14. ベイビーグッドラック
15. othersideかなた
16. ドアたち
17. MANGA
18. ガイガンボーイ・ガイガンガール

Encore
19. シルバーの世界(新曲)
20. 砂場

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このページは、伊藤英嗣が2011年10月13日 00:43に書いたブログ記事です。

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