ROPES 「Slow / Last Day」(Flake)

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ROPES.jpg  現代の日本においてのエヴリシング・バット・ザ・ガール...実際に鳴らしている音像は違えど、彼らロープスの活動スタンスやその成り立ちを見ているとそんな印象を感じずにはいられない。

 アート・スクールのフロントマン、木下理樹を中心に、同バンドのギタリスト、戸高賢史と活動休止中の日本のポストロック界の旗手、ダウニーのリズム隊である仲俣和宏、秋山隆彦に元オン・ボタン・ダウンのアチコをフロントマンに迎え、2枚のアルバムをリリースし、マイペースに活動していたカレンが解散を発表したのが、去年末。その後に、戸高とアチコが再び(さらにマイペースに)活動を始めたのが、このロープスである。当初はクラウディ・スカイズ・イン・ポーランドというバンド名で活動していたが、ほどなくして現在のロープスに改名。長らく、自ら「CDリリースもなければ、派手な告知も一切なし」として、実際にレーベルに身をおかず、特定の事務所に所属もせず、(一応「メトロ」と「薄れ日」という2曲をYoutube上にアップはしていたが)ライヴ・パフォーンスのみの露出だったが、この度、多くの邦楽アーティストから大きな信頼を獲得している大阪のセレクト・レコード・ショップ、《Flake Records》より、文字通り7インチのアナログ盤として、350枚限定でシングルをリリースする。

 90sオルタナティヴ・ミュージックを通過した後に'00sのインディー・ポップの感性でカラフルに彩られた世界を、あくまでバンド・サウンドとして打ち鳴らしていたカレンに対して、基本的にロープスは戸高による憂いを帯びながらも耽美さを感じさせるアコースティック・ギターの音色とアチコの奥行きと伸びのあり様々な表情を見せるヴォーカルのみで構成された音世界である。時たまに戸高もアウトロで、コーラスで加わる面もあるが、その様は、前述したようにエヴリシング・バット・ザ・ガールのようだ。エヴリシング・バット・ザ・ガールの片割れ、ベン・ワットのソロ作『North Marine Drive』で見られるような、必ずしも暗い曲調ではないにも関わらず(むしろギターのコードだけを取り出すとポジティヴィティすら感じるような明るさもあった)、どこか哀しみを背負ったような感触がロープスにもある。それに加えて、グレゴリー・アンド・ザ・ホークのような、アコースティック・ギターによるポストロック感とヘヴンリーなどのトゥイー感を折衷したような素朴ながらも温もりのあるサウンドが特徴的である。歌詞に関して、アチコは「信頼する戸高くんの持ってきたメロディから自分が感じ取った情景を言語化している」と語っているが、その通り、どこか朝焼けや夕暮れといった空が霞む時間帯の少女の憂愁といったものが歌われ、それがメロディにこれほどまでにないくらいマッチしている。

 また7インチのレコードとしてのリリース形態も興味深い。戸高によると「アチコさんが少女の頃に熱中した(エヴリシング・バット・ザ・ガールの)ベン・ワットとトレイシー・ソーンの7インチの感触を自分も実現させたいと強い要望があったので、踏み切った」とのことで、はからずとも、昨今、チルウェイヴ/グローファイのシーンのアーティストがすぐにCdとしてのリリースではなくカセットテープやアナログ盤で自らの音源を発表していた現代に呼応しているようにも感じる。

 とは言え、やはり邦楽シーンの他のアーティストと比較しても、相変わらずマイペースにゆったりと(しかし真摯に)活動しているように感じられるロープスであるが、彼らの活動方針通りバンド形態のアーティストと共演する機会も増えてきたし、露出も含めこれまで以上に活発になっていくだろう。なお、今作はFlake Recordsおよび、ロープス自身のライヴ会場でも入手することが可能だ。

(青野圭祐)

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