ウー・ライフ

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WU LYF

「みんなのもの」として音を鳴らしている
元々ポップ・ミュージックはみんなのものだしね


僕(近藤真弥)はウー・ライフを信じている。こういった文章を書くにあたって、相手を信じてはいけないということもよく言われるが、「信用」と「盲信」は違う。寧ろ相手を信じることで視野はより広がると思うし、批判や意見もできるというものだ。僕は「信用」できる人を追いかけたいし、ついていきたい。ウー・ライフは、そうするに値する可能性を秘めたバンドだ。

以下のインタビューを読んでもらえば分かるけど、僕の疑問や意見に対して、トムとエラリーは真摯に答えてくれた。

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今日は宜しくお願いします(クッキーシーンのトップ・ページを見せる)。

エラリー(以下E):(僕が書いた『Go Tell Fire To The Mountain』のレビューを見つけて)このレビューはどんな評価をしてるの?

これは僕が書いたものなんですが...。

E:(話を遮って)で、どんな評価をしてるの?

(苦笑)僕はイギリスでWU LYFのライヴを観て感動したので、かなり好意的なレビューですよ。

E:どのライヴを観たの?

えーっと、リバプールとシェフィールドっすね。

E、トム(以下T):ワオ!

(笑)ではさっそく始めますね。フジロックでのライヴが日本における初ライヴだったわけですが、どうでしたか?

T:すごいナーバスになって、ライヴ直前には吐いちゃったくらいなんだけど...僕たちが演ってきたライヴのなかでも、もっとも人が集まったライヴだったし。反応は良かった よ。ヨーロッパや他の国と違って途中で話をするわけでもなく、みんな真剣に聴いてくれた。

他の国との違いって、具体的にはなんですか?

T:どこへ行っても違いはあるんだけど、海外だとみんな聴き流しながらライヴを観ているような感じ。日本の場合は、集中してライヴを観ている人が多い。

E:海外だと、好きな曲だけを待っている人ばかりで、あとはどうでもいいという姿勢が多いからね。日本だと、ひとつのショウとして観てくれる。

『Go Tell Fire To The Mountain』がリリースされてしばらく経ちます。どんなレスポンスがありますか?

T:いろんな意味で、深い評価がたくさんあるよ。「10年に1度の素晴らしいアルバム」と言ってくれる人もいれば、「何もかもイヤ」という全否定な意見もある。

E:ただ、良い悪いがはっきり分かれるのは躍動感があるし、やっているほうもやりがいがある。「まあまあいいよね」みたいな意見が多いよりは、よっぽど良いと思うよ。

そういったレビュー群のなかで、「これはムカついた」というものは?

T:ハハハ! 例えば、悪く書いているレビューを読むと笑えてくるんだ。だって、「いかに悪く書くか?」というところにクリエイティヴになってるんだから。

E:まあ、怒りが込み上げてくるレビューというのは、ハイプなどに関して散々悪口を書いといて、最後に「音楽は好きじゃない」とかね。音楽について一切触れていないのに、「どうしてそう書けるの?」っていう。

なるほど。ではその音楽についてですが、ウー・ライフは怒りや悲しみというのを鳴らしているように思うのですが、それは正しい見方?

T:ウー・ライフの音楽からは、強い感情が表れている。『Go Tell Fire To The Mountain』にも怒りやメランコリーというのはあるし、何より、自分達の周りにあるエモーションを表現している。そして、それを聴いている人に清々しい気持ちになってほしいとも思っている。もうひとつは、みんな同じ感覚や考えを共有できるんだということも伝えたかった。

それは誰に対して向けたもの?

T:誰かに向けているというよりも、自分達がいま表現したいことを音にすることに重点を置いている。

E:強いて言うなら、自分達に向けているかな。で、自分達の中にある怒りなどを、もっと宇宙的な感覚で放っていきたいと思っている。

それはスピリチュアル的なもの?

E:そうだな...宗教的な意味でのスピリチュアルではなくて、自分達よりももっと大きなものにしたいというか...。それをできるのがライヴなんだと思う。音楽自体を大きなものにしたい。

つまり、音楽を超えるような音楽を作りたいということ?

T:日々の逃避行的なものをもたらしてくれるのが音楽だと思うし、だから僕も音楽が好きなんだけど、ただ手拍子を取って盛り上がるようなものじゃなく、心に残るものを作りたい。

あなたたちにとって音楽とは現実逃避なんですか?

E:そうだね。聴いている人も違う世界へ行けるようなレコード、行き場所がない僕たちにとっては、音楽を作ること自体が逃避行的なものなんだ。例えばクラブに行っても、繋がれるような感覚がなかったから、自分達で作るしかなかった。

うーん、クラブはあんまり好きじゃない?

T:日本はどうか知らないけど、イギリスは、みんなが燥いでパーティーしているメインストリームなクラブと、インディー臭が漂うクラブという具合に分かれている。ただ、インディー的なクラブというのも、それを狙って雰囲気を作り出しているから好きになれない。

E:でも、ヒップホップのイベントに行ったときは面白かった。そこに集まっている人は、みんな音楽を聴きに来ていたし、音楽自体も良かったよ。

今のような質問をしたのはですねえ...「LYF同名心得書」(公式サイトで登録すると手に入る)のなかに、"自分のことしか語れない世界が狭くてショボくて臭いダブステップ・アナーキー・パンク野郎"といった一節が出てくるからなんですが(笑)

E、T:(笑)。

(笑)ダフステップなどのベース・ミュージックは好みじゃないですか?

E:音楽というよりも、そういった音楽を好む層が好きじゃない。ベース・ミュージックを聴いている人の多くは、すごく荒れていると思う。ドラッグをやったりね。そんなのは馬鹿げている。

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ウー・ライフはマンチェスターのバンドですが、マンチェスターは過去にニュー・オーダーやハッピー・マンデーズにストーン・ローゼズといった、ロックとダンス・ミュージックをクロスオーヴァーしてきた発信源的な街でもありますよね?そうしたバンドからも影響を受けてない?

T:影響を受けたというか、実は、ニュー・オーダーのギター・サウンドとエレクトロニックなサウンドを融合した音が大好きなんだ。自分達に関して言うと、特に僕とジョーはアフロ・ビートが好きで、ウー・ライフでも、そういった要素を取り入れた音楽をやりたいと思ってる。最近アフロ・ビートを取り入れた音を鳴らすバンドが増えてきたけど、どのバンドも上手く取り入れることができていない。ヴァンパイア・ウィークエンドなんかそうだよね。速すぎるし、あんまり要素が出てきていない。マンチェスター出身というのは、自分達にとって重要ではないよ。たまたまそうだっただけ。

あくまで自分達の音楽的体験に基づいて、ウー・ライフの音楽を作りあげているということですか?

T:そう。自分達の純粋な好みを取り入れることが重要だし、過去の栄光あるマンチェスター・バンドを追いかけて真似をするなんて馬鹿げているからね。自分達はもっと新しいことをやっていきたい。

次はライヴについての質問です。ウー・ライフのライヴを観て感じたのは、コミュニティ的なものを作り上げようとする強い意志なんですが。

E:さっきも少し出てきたけど、ウー・ライフは避難的な意味合いもある。自分たちもそうだけど、ウー・ライフの音楽を聴いて賛同できた人はどんどん加入してほしいし、実際「みんなのもの」として音を鳴らしている。元々ポップ・ミュージックはみんなのものだしね。自分達は、「ヘヴィー・ポップ」というポップ・ミュージックにもっとディープさを混ぜたものをやっているけど、それによってコミュニティを作り上げようとしているかと言われたら、そうだね。

なるほど。だとすると、ちょっと引っかかることがあるんですが...。「コミュニティ」って概念は、閉鎖的なものになりがちですよね。しかし今、エラリーは"「みんなのもの」として音を鳴らしている"と言いました。「LYF同名心得書」にも、"LYFでは純粋に人と繋がれるモノを作っていきたい"と書かれています。現時点においてウー・ライフは、矛盾を抱えているようにも僕は思えるのですが、いかがでしょうか?

E:(しばらく考え込み)「真に繋がりたい人達」という意味においては、確かに閉鎖的かもしれないけど、音楽自体はオープンなものだし、でも、本当に繋がりたいという部分では閉鎖的かもしれない。張り紙なんかで例えると、張り紙はオープンでみんなに晒されているけど、それを手に取る人は限定される可能性はあるという意味での閉鎖的な部分と、同時にオープンさというのは内包しているかもしれない。

分かりました。では、そろそろ時間のようなので最後の質問です。次のアルバムに向けたヴィジョンはあったりしますか?

T:実は、「スリー・レコード・プラン」というのを立てているんだ。ここ5、6年の間に、みんなの心に残るレコードを3枚作り上げるプランなんだけど、注目されている期間ていうのはすごく限られていると思うし、逆にロック・スターみたいにみんなの注目に流されないよう、しっかり自分たちが作りたい音楽を作るためにも、そうしたプランがあるんだ。ただ、具体的な音楽の方向性というのは、いまのところ何にも決まってないよ。

分かりました。今日はどうもありがとうございました!

T:(日本語で)どうもありがとうございました(笑)!

E:(こちらも日本語で)どうもありがとうございました(笑)!

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 謎の覆面集団としてウー・ライフは知られているかもしれないが、素顔の彼らはいたって普通の若者だ(20代なかばである僕より年下!)。

 印象的だったのは、コミュニティに関する疑問を僕が投げかけたとき。この疑問に答えてくれたのはエラリーだけど、インタビュー中のエラリーは、外の景色を眺めたり、トムの話に補足的な言葉を付け加えるくらいで、比較的おとなしかった(疲れのせいもあるんだろうけど)。しかし、コミュニティに関する疑問に対しては、身を乗り出して僕に語りかけるような熱弁を振るってくれた。正直、今でもすべての疑問が晴れたわけではない。でも、何よりその言葉には、情熱と勇気が宿っていた。

 一方のトムは、映画『トレインスポッティング』に出てくるベグビーを想起してしまった。ルックスも似ていたし、何より、ヴァンパイア・ウィークエンドをディスったときに浮かべた笑みは、悪ガキという言葉が相応しい不敵なものだった。僕に対しても、おちょくるように何度もその不敵な笑みを向けてくれたけど、目つきは、人を観察するような鋭さがあった。

 あと、2人とも意外に他人が言っていることを気にするようで、インタビュー冒頭にもあったように、僕が書いたレビューに関して執拗に訊いてくるし、僕と通訳さんが話している間も、やたら視線を感じたりした。

 性格の違いはあれど、おそらく2人とも繊細で感受性が高いのだろう。

『Go Tell Fire To The Mountain』には、壮大なヴィジョンが描かれている。まだまだ未熟な面もあるが、当然この先、彼らも成長し変化をしていくだろう。そんな彼らの旅を見守っていきたいと思わせるだけの音楽が鳴らされている。それが、『Go Tell Fire To The Mountain』というアルバムだ。

 さて、僕もこのアルバムを聴きながら、様々な疑問に対する彼らなりの答えを示してくれる日を待つとしよう。

2011年8月
取材、文/近藤真弥


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ウー・ライフ
『ゴー・テル・ファイアー・トゥ・ザ・マウンテン』
(LYF / Hostess)

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