GROUPLOVE 『Never Trust A Happy Song』(Atlantic)

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grouplove.jpg  これはノスタルジアとファンタジーについての作品集なのだろうか。海辺で裸になって駆け回るときのことを夢見るためのものなのだろうか。いや、現実はそう甘くない、そのことが彼らには身にしみて分かっている。だから現代にはびこる上辺だけのハッピー・ソングなんて信じるべきではないのだ。夢は一生叶わず、愛を見つけることもできず、一人ぼっちの孤独な人生を過ごすのかもしれないし、"ファックオフみたいな世界のファックオフみたいな部分"だけを見続けて、自分もいつかその一部にならざるを得ないのかもしれない。たとえ幸せと呼べる場所があったとしても、そこにたどり着くまでには地面を這いずりまわり、あるいは血を流す必要だってあるのかもしれない。

 ロスの5人組、グループラブの待望のファーストアルバムが海外でリリースされた。2010年の最後にリリースされた「Colors」はイギリスの音楽ファンのあいだでたちまち話題になり、彼らのライヴでは最初の「I Am A Man, Man, Man, Man Up, Up In The Air」のラインは毎回大合唱を生んだ。この歌が何について歌われているのか、正確には掴めていないと思う。現実を直視できずクスリにはしり、最後は自殺してしまった男の顛末を歌ったものなのか。もしそうだとすればコーラスの「悲しむ必要なんてない、それもぜんぜん悪くない」というリリックはかなり意味深だ。こんな現実より悪くなりようがない、という意味なのか、それとも自堕落になった自分自身に対するブラック・ユーモアか。そして最後には「これも愛のため?」というフレーズがある。ますますよく分からない。ただここには絶望的なフィーリングこそあれ、未来を感じさせる箇所はほとんどない。この曲はアルバムでは4曲目に収録されている。

 一方、すでにリリースされていた「Naked Kids」の新バージョンがこのアルバムでは6曲目に収録されている。わたしはこの曲がとくに好きなんだけど、何が良いって、終始楽園に生きようとする僕たちを見て笑っている人たちの目線まで描かれていること。「おいおい、大丈夫かよ」なんて声が聞こえてきそうだ。でもそんなのお構いなしに楽園はあるだぜ、っていう、このポジティヴなフィーリングは聴いていて素直に爽やかな気分になる。「Colors」よりはぜんぜん明るい。

 彼らはおそらくハッピーな事象に対する枯渇感を抱えていて、それを獲得しようとする手段が現実離れしたものであっても、選択するかしないかの自由は完璧に自分たちの手にあることを思いっきり叫んで主張しているんじゃないかな。そしてかつてのヒッピーたちの生活にあったピュアな感動と、じつに現代らしい感性で共鳴しているような気がする。現代らしいというのは、例えばあまりに文脈が複雑に入り組んでいて、結局曲のタイトルが「愛は君の魂を救うよ」なんていう究極にシンプルなものに回帰するということ。仲里依紗に似ている女の子のキーボディストがヴォーカルをとるこの曲はアルバムの最後から3曲目に収録されている。ちなみにこの女の子はあと1曲メインでヴォーカルを務めている。力強く、なかなかにサイケデリックな歌声だ。

 さて、このアルバムは最後の2曲がどちらもじつに素晴らしい名曲なのだ。これだけ現実逃避をして、その自分を正当化して、「残酷で美しい世界」(11曲目)に希望を見出して、最後には「目をつぶって、10カウントしてみて」(ラスト曲)である。サウンドにまったく隙間のない(コーラスがひとつも入っていない箇所を探すほうが困難である)トゥーマッチな彼らの音楽を聴いていると物悲しくて、切なくてどうしようもない。

 現代にはびこる上辺だけのハッピーソングなんて信じるべきではない。彼らの魂の叫びを心に刻め。

(長畑宏明)

 

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