FOUR TET 『Fabriclive 59』(Fabric / Hostess)

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FOUR TET 『Fabriclive 59』(.jpg   ロンドンを拠点とする人気クラブ《Fabric》のミックスCDシリーズである『Fabriclive』。今回登場したのは、今年のフジロックでも来日を果たしているフォー・テットだ。正式なミックスCDとしては『DJ Kicks』以来実に5年振りのリリースとなる『Fabriclive 59』だが、今年リリースされた様々なミックスCDの中でも屈指のクオリティを誇っている。

『DJ Kicks』ではアニマル・コレクティヴやカーティス・メイフィールドまで登場させる非常に雑食性が高いミックスを披露しているが、『Fabriclive 59』においては2ステップとガラージが全体の多くを占めている。その結果としてフォー・テットが持つ折衷主義という才能は影を潜めているが、本作の統一感はフォー・テットの純粋なDJスキルと選曲センスをより際立たせている。特にDJスキルに関しては、トラックとトラックをシンコペーションのように繋ぎムーディーでスリリングな興奮を演出したかと思えば、前の曲をルートにして、そこへ次の曲を混ぜることでコード的な音を生み出す瞬間さえある。謂わば流麗なコード進行のように、最初から最後までフォー・テットは曲を回し続ける。

 また、『Fabriclive 59』ではミックスCDの可能性を押し広げる試みもなされている。それは《Fabric》内やその周辺をフィールド・レコーディングした音をミックスに織り交ぜるというもので、フロアにいる人々の呼吸や狂騒など"クラブでの一夜"を描写するための挑戦だと思われる。しかし斬新な感覚や新たな発見はなく、正直このアイディアは成功したとは言い難い。少なくとも、『Fabriclive 59』にとって必要不可欠なものにまでは昇華しきれていない。

 しかし、それでも本作が優れたミックスCDであることに変わりはない。まるで愛撫のような心地良いセクシーなグルーヴに身を任せる優雅で贅沢な時間は、間違いなく『Fabriclive 59』でしか体験できないものだ。そしてなにより、リカルド・ヴィラロボス「Sieso」からフォー・テット自身の楽曲「Pyramid」へと流れる瞬間に存在するユーフォリック。つまり『Fabriclive 59』には、数多くの特別な場面が詰まっているということだ。

(近藤真弥)

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