THE RAPTURE 『In The Grace Of Your Love』(DFA / Universal)

|

The Rapture『In The Grace Of Your Love』.jpg  ポップ・アルバムとしては良いアルバムだと思う。高揚感に溢れた「Sail Away」や、ピアノ・リフが印象的な超絶キラー・トラック「How Deep Is Your Love?」など、リスナーを楽しませ踊らせる技は匠レベルと言える領域に達している。アルバム全体を通して、緩やかながらもしっかりとしたディスコ・ビートとグルーヴを維持できているのも素晴らしい。しかし、それだけでは物足りないことを隠しようのない事実として告白せざるをえない。

 瞬間的な爆発力の連続で聴く者を文字通り吹っ飛ばした『Echoes』。反復の美学を独自のポップ・センスと掛け合わせ「ハマる」ダンス・ミュージックを披露してみせた『Pieces Of The People We Love』。この2枚の名盤には、あくまでポップに鳴らしより多くのリスナーへ届けようとする姿勢と共に、音楽シーンに対するポスト・パンク的なささくれ立った批評精神が混在し貫かれていた。この姿勢と批評精神こそが、ゼロ年代を通じて音楽から歴史性が消失しフラット化が進行していくなかでザ・ラプチャーをオルタナティヴな存在たらしめていた。

『In The Grace Of Your Love』においてポップ・センスはより広がりを見せ、安定感や風格といったものも醸し出している。ダンス・ミュージックに対する愛情も相変わらずだし、クンビアを取り入れるなど時代に対する嗅覚も衰えていない。しかし、過去2作にあったクリエイティヴィティー、つまり、何か新しい音楽を生み出そうとする開拓意識とは程遠いところに、『In The Grace Of Your Love』は存在する。6年近く待たされた結果がこれならば、正直僕はがっかりだ。本作が「ザ・ラプチャーに対してリスナーが求めている音」だと言うならばそれまでかもしれない。でもそれが、ザ・ラプチャーでなければいけない明確な理由はどこにもないように思える。彼ら自身本当にこれで満足してしまったのだろうか?

(近藤真弥)

retweet