TEAM GHOST 『We All Shine』(Rimeout)

|

TEAM GHOST『We All Shine』.jpg  エレクトロニカ×シューゲイザー=エレクトロ・シューゲイザーの旗手fromフランスのM83の脱退したオリジナル・メンバーのニコラ・フロマージョが、一時の潜伏期間を経てマルチ・インストゥルメンタル・アーティストのクリストーフ・ゲランと出会ったことでパリにて結成されたのが、このチーム・ゴースト。M83は、フロントマンのアンソニー・ゴンザレスとニコラによってフランス南部の港町、アンティーブで結成されたバンドであるが、彼らの出世作であるサード・アルバム『Before The Dawn Heals Us』の前、セカンド・アルバムである(タイトルからニコラっぽさがでている?)『Dead Cities, Red Seas And Dead Ghosts』をリリース時点でニコラが脱退。それからも、先の出世作やエヴァーグリーンなジャケットが印象的な『Saturday = Youth』をリリースし着実にキャリアを重ねていった。ちなみにニコラのM83脱退の原因は端的には、音楽生の違いとされているが、それはこのアルバム『We All Shine』を聴くと分かるかも知れない。

 ソニック・カセドラル・レコーディングスより2010年にリリースされていた『You Never Did Anything Wrong To Me』、『Celebrate What You Can't See』という2枚のEPに「Red Light Corridor」と、タイトル・トラックの2曲の新曲を入れたのが、日本デヴュー・アルバムとなる本作、『We All Shine』。手に取ってすぐ見るからに「ゴシック!」と言いたくなるような物々しい修道女が描かれた表ジャケットから中まで19世紀のイギリスにタイムスリップしたかのような暗美なアートワーク。ジャケット内側にニコラとクリストーフの写真が写っているが、この2人の写り方、形相もスージー・アンド・ザ・バンシーズを彷彿とさせる。そして、このアートワークは彼らの耽美な音楽を見事に視覚化していると言えよう。起伏がなくやや冗長な1曲目、「Lonely, Lonely, Lonely」を抜け出ると早速、「A Glorious Time」の(どこかアドラブルなどを思わせる)ゆるやかな轟音に包まれる。よりホーリックなものを感じる「Sur Nous Les Etincelles Du Soleil」や「Only You Can Break My Heart」などもけたたましいインパクトがあるが、あくまで翳りのある退廃的な空気が印象的だ。特に後者2曲などは、M83で見られたようなサウンド・マテリアルとさほど遠くない音色を感じるが、こちらの方がより、内省から外向きの衝動を鳴らしているのを感じる。題材はあくまで耽美な退廃であるにも関わらず、だ。M83はどこか都市と田舎の景色を思わせ、合理的な都会にはびこるグロテスクを暴きだすかのようなアティテュードが見られたが、チーム・ゴーストは人間の根源的なグロさを曝け出そうともがいているようだ。先のような曲は7曲目、「Deaf」までが『You Never Did Anything Wrong To Me』に収録された曲だが、「High Hopes」からは『Celebrate What You Can't See』の曲たち。この2枚のアルバムのリリース間隔はおよそ半年しか空いてないこともあり、サウンドに劇的な変化が訪れはしないが、こちらの方がよりゴシックな暗がりは増していると言えるだろう。より暗く、端正に、といった印象だ。インストゥルメンタルのタイトル・トラックに辿り着けば、古代の煤けた神殿で儀式を終えた後に光が見えるような気分にさえなる。

 全体的な印象としては、同じくエレクトロ・シューゲイザーとも評される65デイズオブスタティックのような印象をも受けはするが、彼らがハードコア・パンクも通過しており、叩き付けるような甘美な獰猛さを持っているのに対して、チーム・ゴーストは、幾分、暗がりと密室の耽美を実直に音像化しているシックな音像と言えるだろうか。

 シューゲイザーも、00年代後半の再評価の波を受けてエレクトロ・シューゲイザーだけでなく、そのジャンルが細分化されていった。近年はシューゲイザー再評価(いわゆるニューゲイザー勢だけに限ったものではない)のその先を映し出しているかのようなムーブメントであるチルウェイブ/グローファイも水面下で起こっている。チーム・ゴーストは、先の『You Never Did Anything Wrong To Me』をリリースした際に、NME誌には「コールド・ゲイズ」なんて言葉を使われて評されたようだ。直訳すると、「冷たい凝視」。チルウェイブのチルは「ひんやりした寒気」とか「鳥肌のたつ陰気な」なんて言葉を表している。これらを似て非なるものとするだけでも、さすがに乱暴すぎる解釈ではあるとは思えど、やはりほんの少しの近似性を垣間みることも確かだ。

 猛暑が続くが、一人ひっそりと部屋にこもってチーム・ゴーストの鳴らす耽美に背筋ひんやりと凍るものを感じるのも、試してみたいひとときだ。

(青野圭祐)

retweet