Nano-Mugen Festival Day 1 at 横浜アリーナ 2011. 7. 16

 2003年から行われ、一アーティストがプロデュースするフェスながら邦楽・洋楽、ベテラン・新人混合のラインナップを取り揃えることで、既にアジアン・カンフー・ジェネレーション・ファンだけでなく、多くのリスナーから信頼を得てきたNano-Mugen Fes。去年は、『The Orchard』リリース寸前のラ・ラ・ライオットを帯同して、各地それぞれの邦楽アーティストを迎えてツアー形式でのヴァージョンで行われ、フェスティヴァルではなかったので、2年振りに再び横浜アリーナで開催されるとアナウンスされた時は、多くのファンが昨年以上に「待ってました!」と思ったことだろう。


 それも、ウィーザーとマニック・ストリート・プリーチャーズの出演が決定した際には、全国のファンが格別、驚きを隠せなかったことだろうと思う。マニックスは、09年に出演がアナウンスされていたものの直前になって、出演中止の事態になっていたところのリベンジであるし、ウィーザーにいたっては「遂にアジカンもウィーザーを招致するまでに!」と喜び勇んだものだ。デビュー当時から、アジカンのメンバー、特にフロントマンの後藤正文は度々ウィーザーからの影響を公言してきたし、『君繋ファイブエム』をリリースした当時は、そのギター・ロック的なスタイルや両バンドのフロントマンがメガネを愛用していることなどを踏まえて「和製ウィーザー」なんて言葉でももてはやされていたものだ。アジカン・ファンの多くが、ウィーザーが自らの好きなバンドが敬愛して止まないバンドということを重々承知しているだろうし、彼らの出演には一層の期待を抱いたものだろう。


 それらの上に、後藤は3.11以降、チャリティー・バンド「HINATABOCCO」に参加したり、各メディアで原子力などへの懸念の呼びかけを重ねたり、未来新聞「THE FUTURE TIMES」誌を発行したりと特筆すべき活動をいくつも行ってきているだけあって、今回のフェスに対しての彼への意気込みや思いなども、絶大な期待を寄せられたことだろう。


 余談だが、会場ではアーティストの転換時間にファンからのリクエストが寄せられたアーティストのMVを大型モニターで映すことで、ラインナップを超えて邦楽、洋楽問わず幅広いアーティストに出会うことを促しているようだった。しかも、アジカン自身が選んだものではないにも関わらず、どのMVもセンスが良く、転換時も暇になる瞬間はなく、ワクワクし続けることができた。


 2デイズ公演の1日目(ねごと、ウィー・アー・サイエンティスツ、アッシュ、ザ・レンタルズ、アジアン・カンフー・ジェネレーション、ウィーザー)についてレポートしたい。


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ねごと


 吉川さんのレポートにもある通り、タイム・テーブルは当日発表であるので、開場と同時に既に多くのファンが集まっている。この日のトップバッターを務めるのは、「全員平成生まれ」ということで、同フェスで最年少アクトである、ねごと。新譜『Ex Negoto』のラスト曲、「インストゥルメンタル」のショート・ヴァージョンで、しなやかに音が開けていく。すぐに同フェスにむけたコンピレーション『ASIAN KUNG-FU GENERATION Presents NANO-MUGEN COMPILATION 2011』にも提供されていた「透き通る衝動」へと繋がる。飛び散る滴のように軽快なキーボードとリズム隊の絶妙なグルーヴが印象的なイントロから、サビに向けてどんどん加速していくにつれ、早くもオーディエンスの熱気が伝わる。デヴュー・ミニアルバムの幕開けを飾っていた「ループ」に続くと、キーボードと実直なリズム隊のアンサンブルと<<1,2,3,4, 宙ぶらりん>>というユニークなコーラスも混じって会場が昼過ぎにも関わらず、ねごとの打ち鳴らす催眠術にかかっているようだ。


「このステージに立てたことをすごく光栄に思います。私たち自身、高校の時からアジカンさんはすごく愛聴していて、ナノムゲンももちろん知っていて、と言うか、去年はオーディエンスとして観に行かせてももらっていて、『いつか私たちも出られたら良いね』なんてことを言い合っていたら、こんな早くに出られることになって自分でも驚いています」というMCが微笑ましい。とは言え、今までの演奏を聴いていただけでも、新人というエクスキューズなど必要ないのでは、と思うくらい揺るぎのない安定感が頼もしいほどである。


「七夕の曲を演ります」という蒼山の言葉とともにプレイされたのは、文字通り、新譜からの「七夕」。「メルシールー」のサイケデリックで刹那的な焦燥に連れて行かれ、auのCMに起用されたことで一躍彼女らをメイン・ストリートに持ってきた「カロン」で終演。


 最年少アクトということなしでも瑞々しいステージングと邦洋合わせ、並々ならぬアーティストが控えるフェスで力強い幕開けを飾ってくれた。


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ウィー・アー・サイエンティスツ


 先の吉川さんのレポートにもあるように、彼らは海外アクトのトップバッターとあって、前説としてアジカンの後藤とドラマー、伊地知潔が登場。まず「実はまだ会場に(アジカン、ギタリストの)喜多が来ておりません...!! あの、彼、アッシュのギター弾く人なんですけど」とビッグ・ニュース(笑)をアナウンス。同時に「このフェスで洋楽のライヴは初めてなんて人も多いと思うけど、俺たちアーティストって、やっぱり拍手だったり歓声があがるのは大好きですし、励みになるんですよ。それは彼ら外国人も同じで。だから、みんな『ッッコイイ!』とおもったら、声出したり拳上げたりしましょう。それって、みんなでアガるためにも重要なことなんですよ」と、オーディエンスにも喚起。後藤はそれに加えてTHE FUTURE TIMESの宣伝も行った。そして「次は、最初に(伊地知)キヨシがよく聴いてて、俺も聴いてシビれたバンドです。最初、俺、UKのバンドだと思ったんだけどUSだったみたいです。洋楽を聴いていくと大体、どこの国かも勘付けるようになってくるものなんですよ。皆さんもシビれてください。ウィー・アー・サイエンティスツ!」


 後藤のコールに応じて登場した彼ら。「サンキュー、エイジアン・カンフー・ジェネレーション!」との言葉とともにプレイされたのは、「Nice Guys」、「I Don't Bite」。若干ハシり気味のビートではあったが、吉川さんのレポートによると2日目もそうだった(彼らは2日間とも出演した)とのことではあるが、拳こそ上がってはいないものの、前説の効果で、オーディエンスもみな思い思いに腰をくねらせている。先の2曲の後に突如キース・マーレイのギターがかき鳴らされるは、メジャー・デビュー・アルバム『With Love & Squalor』の1曲目、「Nobody Move, Nobody Get Hurt」。何度もプレイされてきた曲ではあるが、広い会場内を性急なビートとシンプルなコード・ストロークが鳴り響くシーンはやはり力強い。タイトルに反して、少なくないリスナーが動き、心をもっていかれているのが手に取るように分かる。セットリストは再び新譜『Barbara』 の流れに戻り、ドラマチックなギターが光る「Rules Don't Stop Me」、オーディエンスにクールダウンを促すような「Pitsburg」、もう一度ダンスさせる「Central AC」がプレイされる。途中でキースのテレキャスターの弦が切れてしまっていたが、おかまい無しと言うかのように、ハイ・トーンを一心不乱にかき鳴らす様は煽情的だ。「これはアジカンのために」と鳴らされたのは、「The Great Escape」。『With Love & Squalor』のリード・トラックともなっていただけあり、説得力がどの曲よりもある。最後はザ・レンタルズのマット・シャープを引き連れ「After Hours」。<<Time means nothing>>というコーラスが何度も繰り返されるのが、マットも含めてフェスならではと言ったもので素敵な時間だ。


 全体を見るとほとんどが『Barbara』の曲で構成されるセットリストだったが、「今」の彼らが如実に伝わるステージだった。


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アッシュ


 前説ではアジカンのベーシスト、山田貴洋と伊地知が再び登場。伊地知が、残念ながら喜多は会場に着くことはなかった、とアナウンス。オーディエンスのブーイングに笑いながら「嘘ウソ。ちゃんと着いてます」とおどけてみせる場面も。


 そう、今回のNano-Mugenではアッシュのライヴ・ギタリストはアジカンの喜多健介が担当することになっているのだ。アッシュのギタリストと言えば、シャーロット・ハザウェイが脱退して以降、昨年は活動休止中のブロック・パーティのラッセル・リサックが担っていたポジションだ。いくらNano-Mugenに過去に何度か出演していると言っても、やはり北アイルランドからのギター・ロック代表とも言えるアッシュ、しかもアジカン側も敬愛するブロック・パーティのラッセルの後任となると、喜多も緊張が隠せていない。その様も含めてNano-Mugenならではといった光景だった。


 早速、「Kamakura」から始まり、<<Tearing it up Tokyo>>からどんどん日本各地の地名が歌われるごとに会場のボルテージもますます上がっていく。<<End of the world, Yokohama>>ときた時は思わず多くのオーディエンスがニヤリとしてしまったことだろう。「Girl From Mars」、「A Life Less Ordinary」、「Shining Light」と往年のパワフルな曲を立て続けにプレイ。先にも書いたように、同フェスの出演を過去に何度かこなし、日本でも定評のある彼らだけあって、安定した上で爆発していく様は、映えるものだ。「ケンちゃん(喜多健介)、ありがとう!!」とか「ケンちゃん、一緒に演れて最高!」なんてMCの度にティム・ウィーラーが流暢な日本語で繰り返すが、緊張気味の喜多が「ヤーヤー」とはにかみながら返すだけなのが微笑ましい。とは言え、続いた「Kung Fu」や『NANO-MUGEN COMPILATION』にも提供された「Arcadia」では高揚していくビートに負けず劣らず実直なギター・プレイでバンドのアンサンブルに溶け込むどころか、それを更に重厚なものに奏で続ける様はクールなリード・ギタリストそのものだった。「Arcadia」のホーリックな雰囲気を残しながらハードなグルーヴがぶつかってくる「Orphes」も「Return Of White Rabbit」のコーラスが光る。ラストは「Kamakura」のMVで登場した大仏の仮面をかぶったザ・レンタルズがステージ上に上がり、「Burn Baby Burn」で高まったエネルギーを大爆発させて、目を見張る狂騒を生み出した。


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ザ・レンタルズ


 ウィー・アー・サイエンティスツのショーが終わったあたりから、後藤はTwitter上で「今回はマットのフェスと言っても過言ではないな」といった旨のツイートをしていた。ウィー・アー・サイエンティスツでのゲスト出演、アッシュでの乱入などマットはアジカン・メンバーなみに色々なコラボを行ってきていた。そもそも後藤とザ・レンタルズの関係は最近、特にホットだ。後藤がオーナーを務めるレーベル、only in dreams(言わずもがな、ウィーザーの同名曲を想起する人は少なくないだろう)での、ザ・レンタルズ・トリビュート・アルバム『Lost Out In The Machinery』の国内盤をリリース(ヤー・ヤー・ヤーズ、モーション・シティ・サウンドトラック、アッシュなどの参加に加えアジカンや後藤とマットのコラボも収録されている)、それに伴うマットへのインタヴューなど蜜月の関係が続いている。その上で、フェスへのラインナップ。気運は上々だ。それを示す通り、当初アコースティックによるステージとアナウンスされていた彼らであったが、実際には、アッシュやウィー・アー・サイエンティスツのメンバーをバックに携え完全なバンド・セットでのショーだった。


「Oct 13」で幕を開け、「The Love I'm Searching For」、「Hello, Hello」といったゆるやかな曲が続く。「Waiting」に突入すると、それまでもステージ上で思いを爆発させるかのように暴れ回っていたマットもさらに縦横無尽に暴れ回り飛び跳ね回り、腕を振り回し、抑制のきかない暴走列車のごとく全く一点に定まらない。この時点でスタンディング席はどのブロックも入場規制がかかってしまい、観るには2階席以上しかなくなっている。恐らく、今までザ・レンタルズを聴いたことのなかったオーディエンスも思わず、その熱気に呼ばれるかの如く、ステージを観入っていただろう。軽快なシンセとバンドのビートのアンサンブルが素晴らしい「Barcelona」がアリーナ全体に響き渡り、ボルテージが上がりまくっているマットが後藤を呼び出し「A Rose Is A Rose」へと! 先の『Lost Out In The Machinery』のコンピレーションでコラボしていた曲である。後藤も、すぐ次に自身のアジカンのステージが控えているが、そんなのはおかまい無しと言うかのように、声を張り上げ、マットとのグルーヴを味わっている。


「Please Let That Be You」、「Keep Sleeping」、「Friends Of P」といった『Returns Of The Rentals』と『Seven More Minutes』の往年のパワー・ポップ爆発ソングを矢継ぎ早に連発。ラストは伊地知を除くアジカン・メンバーがステージに上げられ、元からいたアッシュやウィー・アー・サイエンティスツのメンバーも相まって、あたかもフェスの終わりかのような総勢ラインナップがステージ上に集結している。


 そこで後藤がオーディエンス全体へ「これが最後の曲です! 皆さん『Kawaba Kawaba Kawaba』と声援をください! 合唱しましょう!」と呼びかけ、「Getting By」へ。ザット・ドッグ直系というような小気味良いムーグのシンセの音色と総勢メンバーとも言える楽器隊のパワフルな演奏のアンサンブルが素晴らしい。突発的に発生した歓喜の大嵐に見る見る内にアリーナが飲み込まれて行く。大きな大団円を生み出しレンタルズは終演。その様は最早、フェスのラストのハイライトを映し出すかのようだった。


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アジアン・カンフー・ジェネレーション


 当フェスの主催者でありながらヘッドライナーの座をウィーザーに譲ったアジカン。MCでも後藤が言っていたが、「次のウィーザーのステージ、期待してやまないよね。自分たちのステージでこんなことを言うなって感じだけど、やっぱ期待してるんです」との言の通り、やはり、音楽の力、それが巻き起こす愛を本気で信じている大の音楽ファンが、オーガナイズするフェスであるのだ。ただただ、それが伝わってくるパワフルかつ真摯なステージに圧倒されるばかりだった。


 青い照明がアリーナを包み、登場した彼らが1曲目に鳴らしたのは、前のザ・レンタルズの狂騒をクールダウンするかのような重厚なビートと散弾銃のようなリリックが光る「新世紀のラブソング」。『マジックディスク』の幕開けをも飾ったこの曲のサビは、あたかも3.11以降開催された当フェスのスタンスを再び刻み込んで行くようだ。<<確かな言葉が見当たらない/言い当てる言葉も見当たらない/それでも僕らは愛と呼んで/不確かな想いを愛と呼んだんだ>>。素晴らしい幕開けだ。「マジックディスク」へと続く。『マジックディスク』のツアーでも何度も鳴らされた最初の流れだが、この大きなアリーナで鳴らされると永遠に続く諦念、厭世にノーを叩き付けるこの流れが、普遍的なテーゼとして突きつけられて行くようだ。間髪入れずに「All Right Part 2」が打ち鳴らされる。『NANO-MUGEN COMPILATION』にも提供されたチャットモンチーの橋本絵莉子をコーラスに迎えて制作された曲であるが、この時は橋本なしであくまで4人のアジカンの曲として鳴らされた。あいうえお順で展開される歌詞もさることながら、<<All right! All right!>>と何度も繰り返されるコーラスが印象的だ。『マジックディスク』の流れを受け止め、そのまま突き進ませるような強かな祈りにオーディエンスも腕を振り上げて収まらない。微笑ましい光景だ。


 ストレートながら焦らしの入った喜多のギターのおかげで奥行きを感じさせられる長いセッションが展開された後に続けられるは「Re:Re:」。伊地知のテクニカルなドラミングと実直な山田のベースの打ち出すグルーヴが頼もしい。「アンダースタンド」のイントロが鳴らされると「待ってました!」と言わんばかりのオーディエンスのしたり顔。もちろん、<<イエイ!>>の後藤のかけ声が彼らによって何倍も増幅されたことは言うまでもない。間髪入れずに山田の引きずるようなベースラインが重たく会場を震わせる。デビュー盤『崩壊アンプリファー』から、「遥か彼方」だ。青い衝動と焦燥をただただモラトリアム青年のごとく大爆音でかき鳴らすこの曲でアジカンの昔は今にも繋がっていることが、再確認されるようだ。


「色んなラインナップが出演を快諾していて、ウィーザーが決まって、俺たち本当、大興奮して。でも、その直後にあの震災があって。ここで、どれだけすごいフェスをやっても東北の人たちの復興は役に立たないかもしれないけれど、もう一度ギターを持って鳴らすことで、想いを届けられたらと思ってます。皆さんも、未だに困惑の中にいる人もたくさんいると思う。でも、音楽とともに、もう一度、生き返ってもらえるような、そんな演奏になれば良いなと思っています」との言葉の後にプレイされたのは、その後藤の言葉を体現するような「迷子犬と雨のビート」! 音源通りのホーン隊がなくとも、先の言葉が増幅装置にもなって、<<僕たちの現在を繰り返すことだらけでも/そう/いつか君と出会おう/そんな日を思って日々を行こう>>というサビのフレーズが高らかに響き渡る。前進を促す曲でもあり、崩壊と再生をも喚起するアップビートなのだ。そして、その躍動に乗ったまま突き進むのは「君の街まで」! ここで鳴らされる全ては<<君の街まで飛ぶための歌>>なのだ。そこで「ループ&ループ」へと怒濤の流れを形成する。間違いなく、彼らのステージのハイライトだ。色鮮やかなリフが流麗に流され、ポジティヴな想いが連環して継承されていく。受け取ったオーディエンスも、「任せろ!」と言わんばかりの笑顔を満面に浮かべている。


「リライト」、「君という花」という初期の名曲を続け様に連発して、「ソラニン」の寂寥と困惑、そして「その先」を提示して終演。ただただ、「愛」が「哀」に変わり、でもそれが、再び普遍的な「愛」に変わっていく様。それは本当に美しく儚い僕たちそのものであった。


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ウィーザー


 そして、オーディエンスはもとより他の出演者、そしてオーガナイザーのアジカンの期待を全身に背負ったウィーザーの登場。ステージ上にあがったリヴァース・クオモがファンから無事に借りたDVD(リヴァースは、公演より前の日からブログで、日本語を勉強したいから日本の映画のDVDを貸してくれるファンを募集していた)を手にとりタイトルを少したどたどしく読んでみる。「オクリビト...??」。『おくりびと』だ。


 新譜『Hurley』から「Memories」がプレイするや否やイントロからリヴァースが「ニホン、ダイスキデース!」と絶叫。元々スタジアム級の曲ではあるが、この一声で会場がすぐさま一体感に満たされる。盛大なイントロから、寛大なサビに突入していく様はただただ圧倒されるばかりだ。曲が終わるとすぐに最早テンションMaxとでも言えそうなリヴァースが再び「ニホン、ダイスキデス!」、と。そして「毎日日本ノ映画観テマス! 『スウィング・ガールズ』、『ウォーター・ボーイズ』...ジブリ!」と発したまま「Undone-The Sweater Song」へと突入。ゆるやかなイントロに合わせて「トットロートトロ」、「ポーニョポーニョーポニョー」、そして「ポテトチップスは~」などと日本語の曲を連発。オーディエンスから盛大な拍手が起こったまま、「Undone」本編へ。パトリック・ウィルソンの力強いドラムとリヴァースの伸びのある声が、切ない世界をヴィヴィッドに映し出す。「My Name Is Jonas」、「Pink Triangle」などここ日本でも絶大な評価を受けた曲が止むこと無くプレイされる。その間、リヴァースも「コンニチハ!」などと日本語で挨拶を発するなどと日本への愛を見せつけまくり、オーディエンスもただただ笑顔が広がるばかりだ。「You Gave Your Love Softly」ではコーラスをオーディエンスに「歌ッテクダサイ!」とレスポンスを求める。「Hash Pipe」、「Photograph」、「Island In The Sun」と『Weezer (The Green Album)』の最初の流れを繰り広げるのも絶妙だ。「Island In The Sun」は、最初はリヴァースの弾き語りだけで物悲しく歌われ、途中からバンド・スタイルになり、その素朴さとダイナミズムが如実に伝わってくる。


「Pork And Beans」のおどけたようなイントロのギターをブライアン・ベルが奏でると会場はそれに追随するようなおどけたダンスが広がっていく。「Beverly Hills」のシンプルながら重たいグルーヴをはさんで、軽快な「Surf Wax America」へ。夏を祝福するような清々しいサーフィン・ソングが会場中を駆け回る。「(If You're Wondering If I Want You To) I Want You To」の前のMCでなぜかリヴァースは「ゴメンナサイ...」と発言。奇妙に思ったオーディエンスを束の間、曲が始まるや否や、自分に向けられたカメラにハンカチを被せ、視界を遮ったかと思うとステージを降りて、オーディエンス・エリアに乱入。ダイヴされたかと思うと、だだっ広い会場内の至るところまで駆け回りオーディエンスの波の中、縦横無尽に突進している。途中からマイクを手放し、ほとんどのコーラスをファンに歌わせたり、2階席までファンの手を借りて飛び上がろうとしたりと最早、アリーナは大興奮のリヴァースとそれに巻き込まれるオーディエンスの歓喜で完全にカオス状態。笑ったり微笑んだり、つられて興奮を爆発させたりと思い思いに感情を発露させるオーディエンスに満たされた光景が素晴らしい。


 既に曲はアウトロが長くプレイされてるにも関わらず、満員の2階席で暴れ回っているリヴァースにメンバーが「次の曲、『Only In Dreams』だけど、マジでこのまま演るか!?」と投げかけ、リヴァースも「もちろん!」と応え、フロントマンがステージ上にいないまま、「Only In Dreams」のゆったりしたベースラインが響き渡る。先にも書いたが、この「Only In Dreams」、後藤が主催するレーベルの名前と全く同名だ。英語をうまく聴き取れないオーディエンスも曲名を聴いただけでも、さらにカオスの興奮は増すばかり。自分も個人的な余談で恐縮だが、同レーベルのレコメンダーとして関わらせていただいている身なだけあって、押し寄せる感動を抑えられそうにもなかった。全編に8分にもいたるこの曲で、青の世界を映し出し、清冽な感情を爆発させたまま、本編は終了。


 冷めることのない熱が会場内に満ちた状態で、アンコールがない訳はない。再びステージ上に現れたメンバーによって、おもむろにプレイされたのは、当フェスより前に発表されたことで話題になっていたレディオヘッド「Paranoid Android」のカヴァー。ウィーザーとレディオヘッドという'90sのオルタナティヴ・シーンに各々のやり方でそれを突き進めたバンドの複合業だ。それでもやはり一見、不均等に思えるカヴァーだが、リヴァースの憂いを満ちた歌声とギロのような楽器を打ち鳴らすアンディ、そして憂愁のリズムをたたき出すパトリックのグルーヴが狂騒のフロアを、冷めた狂気に陥れる。リヴァースの「ニホン、ガンバッテ!」という最後の一言で、これ以上ないまでの一体感に満ちた会場。ラストにプレイされたのは、名曲中の名曲、「Buddy Holly」。<<Woo-hoo>>というリヴァースに覆いかぶさるようにコーラスを投げ返すオーディエンスと力強い演奏で狂騒のままステージは終演。日本への愛とウィーザーのヴィヴィッドな感情をストレートに打ち出したグレイトなショーだった。

 

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 邦楽、洋楽関係なしで多くのオーディエンスの架け橋となり得て、しかも音楽好きによる音楽好きのためのフェスティヴァル、Nano-Mugen。3.11以降であっても、その底力をとくと見せつけられた素晴らしいフェスティヴァルであった。


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セットリスト


<ねごと>

1. インストゥルメンタル

2. 透き通る衝動

3. ループ

4. 七夕

5. メルシールー

6. カロン


<ウィー・アー・サイエンティスツ>

1. Nice Guys

2. I Don't Bite

3. Nobody Move, Nobody Get Hurt

4. Rules Don't Stop

5. Pittsburg

6. Central AC

7. Great Escape

8. After Hours


<アッシュ>

1. Kamakura

2. Girl From Mars

3. A Life Less Ordinary

4. Shining Light

5. Kung Fu

6. Arcadia

7. Orpheus

8. Return Of White Rabbit

9. Burn Baby Burn


<ザ・レンタルズ>

1. Oct 13

2. The Love I'm Searching For

3. Hello, Hello

4. Waiting

5. Barcelona

6. A Rose Is A Rose

7. Please Let That Be You

8. Keep Sleeping

9. Jack Names The Planets

10. Freiends Of P

11. Getting By


<アジアン・カンフー・ジェネレーション>

1. 新世紀のラブソング

2. マジックディスク

3. All Right Part 2

4. Re:Re:

5. アンダースタンド

6. 遥か彼方

7. 迷子犬と雨のビート

8. 君の街まで

9. ループ&ループ

10. リライト

11. 君という花

12. ソラニン


<ウィーザー>

1. Memories

2. Undone-The Sweater Song

3. My Name Is Jonas

4. Pink Triangle

5. Don't Let Go

6. Perfect Situation

7. You Gave Your Love To Me Softly

8. Hash Pipe

9. Photograph

10. Island In The Sun

11. Pork And Beans

12. Beverly Hills

13. Surf Wax America

14. Say It Ain't So

15. (If You Wondering If I Want You To) I Want You To

16. Only In Dreams

Encore

17. Paranoid Android

18. Buddy Holly


(青野圭祐)


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