MARITIME 『Human Hearts』(Dangerbird / Contrarede)

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MARITIME.jpgのサムネール画像  マリタイムは、理想的な「枯れ方」を体現してくれているバンドだと思っている。初期エモ・ムーヴメントの代表的バンド、プロミス・リングのフロントマンのデイヴィー・ヴォン・ボーレン、ドラムのダン・ディディアーを中心としたバンドで、今作は4作目にあたる(2作目まではディスメンバーメント・プランのメンバーも在籍)。

 プロミス・リングの最後の作品にして最高傑作であった『Wood/Water』で、彼らの音は円熟の度合いを醸し出すことに成功した。そしてプロミス・リングの解散を経てマリタイムが結成される。その間にはヴァーモントというアコースティック・ユニットが組まれ『Wood/Water』で得られたウォームな音がよりアットホームな感覚で鳴らされている良盤がリリースされてもいる。しかし、マリタイムのキャリアはそれとはまた異なり、深みを増していくと同時に、アルバムを重ねる度に初めてバンドで音を鳴らしたときの瑞々しさに立ち返っている。今作でも、その瑞々しさはさらに顕著になったと言える。特に「Paraphernalia」は、バンドとしてのキャリアが15年に及ぼうかとしているとは思えないほどの眩さ、と同時にキャリアを経ることで得た憂いが同居している名曲である。

  過剰な装飾や、必要以上のシリアスさを感じさせない、日常に横たわる普遍性を追求し続けた結果の音がここでは鳴らされている。プロミス・リングが謳歌すべき青春であり、『Wood/Water』がその終わりであるならば、マリタイムはまるで、西に傾いていきつつも輝きを増していく太陽に例えられると思う。そして今作を聴く限り、マリタイムという太陽は沈むことなくまた輝きを放つだろう。

(藤田聡)

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