L'ARC-EN-CIEL 20th L'Anniversary Live〜やまない雨はない

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クッキーシーンにラルクアンシエル? いいじゃん! 別に(笑)!

ということで、さる5月後半におこなわれた彼らのライヴを見た読者さんによる投稿レポート記事を掲載させていただきます!

ちなみに、80年代にはそれほど日本ではメジャーな存在ではなかった「ゴス」というコンセプトが(たとえば「ゴスロリ」といった形で)一般化したことには、どう考えても「ヴィジュアル系」の存在が大きかったとぼくは思っています。

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 デビュー20周年。

 そんな金字塔を立てられるミュージシャンは数限られるだろうし、『雨の日の野外ライブにも関わらず5万人を集められる』という条件を加えたら、尚更少ないだろう。
 
 この日のライブはデビューアルバムから5thアルバムの『HEART』までの5枚にフューチャーしたライブ。それらには「HONEY」や「Snow Drop」といったミリオンセールスを収めた楽曲や、「Ready Steady Go」や「Link」といったポップ性ある楽曲で押し続けた訳でもなかった。

 面白いのは91年デビューのL'Arc-en-Cielが98年発売のアルバム『HEART』までと区切ったところだ。この頃の彼らは、ディレイの掛かったギター・サウンドでディープでダークな印象とシャロウでライトな印象の両面を表現しつつ、後ろ向きなノスタルジーと自己の葛藤を繰り返し、その答えを「貴女」への恋慕に託し続けていくナルシズムな歌詞を、中性的なイメージが漂うメンバー達(特にhyde)が奏でる、そんな持ち味を持っていた。サウンドやビジュアルは80年代洋楽を基本にミックスしたものでありつつ、「日本のどこにもない場所」に立脚するほどにブラッシュアップされており、現在彼らの纏うオーラがある種の『異郷感』を伴っている大元もそこにある。彼らL'Arc-en-Cielが国民全員から「許されてきた」存在とはどうしても程遠く、<ビジュアル系>と言う枠を超え、熱狂的なフォロワーを獲得し続ける理由もまた、その『異郷性』のせいだ。

 99年発売のアルバム『ray』に収録されている大ヒット曲「HONEY」は、その『異郷』とリスナーとが一番接近する楽曲である。彼らのデビューアルバムのタイトルは『Dune(=砂丘)』という幻想めいた乾いた大地であり、「HONEY」で<乾いた風を絡ませ 貴女を連れて行くのさ>で歌われる。それはある種の密室感に近く、「貴女」だけに向けられた愛は自ずとリスナーに向けられ、「貴女しかいない」という錯覚を生じさせる。さらに角度を変えれば「僕と貴女しかいない」ということになるし、二人の世界(新たな異郷)を構築していくという共有感覚と妄想を意味する。そうやって彼らは『異郷性』という武器を美学として昇華していったのだ。

 1曲目の「In The Air」のイントロ、あの印象的なベースソロをtestuyaが弾いた瞬間から、その場所は現れた。いや実際のところ、白い車に乗って、アリーナ後ろから4人が出てきて、赤いカーペットを一歩ずつ歩いてきた所から、その場所はあったと言ってもおかしくない。彼ら独特の雰囲気と艶やかさに会場が吸い込まれ、トリップする。でもまだそこは入り口、続く「Caress of Venus」「Vivid Colors」「the Fourth Avenue Cafe」といったポップな楽曲でその世界に引きづり込む。「この雨は演出なんで、ライブが終わる頃には虹が掛かるようになってるから」とhydeはMCをしていたが、ステージを幻想的に彩ろうとするスポットライトが雨をも照らすこの日のライブは、そんな言葉も嘘ではないと思えてしまうほどに似合っていた。

 ハイライトは「As if in a dream」だろう。ドラムのyukihiroが加入してからこの日が初めて演奏されるこの曲は、実に10数年ぶりに披露されたのだという。kenがディレイを効かせたギターでイントロを弾き始め、徐々に盛り上がっていく演奏陣、そしてhydeが歌いだす。浮遊感あるサウンドと自分に言い聞かせるように歌うhydeのその声は、まさに夢の中にいる自分、力がふっと抜けていく空間を生み出し、観客もただただ聞き入っていた。
 
 デビューアルバム『Dune』に収録されており、僕のお気に入りの曲なのだが、こういう大きな会場に鳴り響くディレイ・サウンドの華麗さには驚いたし、何より本人達がこういう場面を想定し、この曲を作ったのではないか?と勘繰ってしまうほどに素晴らしい。この曲を全く演奏しないというのはおかしな話である。

 この日、目を追ってしまったのはhydeの動きだ。「なんでこんなに歌詞が後ろ向きなんだろ」ということを彼自身がMCで言ってたように、初期のラルクが歌う主人公は、どこか物憂げで後ろ向きな像を持っている。この日のhydeはどこか消化不良で不満げにも見える表情が目に付いたし、肩を横に揺らしながら、時に座り込んで憂鬱な感情を吐き出していく彼の姿は、ギターを掻き毟りながらアップ・テンポにロックを奏で、世界中でツアーを回っていたVAMPSのhydeとは程遠い。そしてそれは「HONEY」の大ヒット以降、次々とロックな楽曲を投げつけていったL'Arc-en-Cielのhydeとも違う。そんな姿を見るにつけ、彼らはもはや夢の中にはいない、夢を描くために彼らは活動しているのだと改めて感じてしまう。自らの手で作り上げた異郷の中でただ立ち尽くしていた頃のL'Arc-en-cielが、この日そこに確かに存在した。

 ライブの最後、この2日間の『20th L'Anniversary Live』の収益が東日本太平洋沖地震の被災地へと届けられることを改めて報告し、「メンバーと相談し、L'Arc-en-Cielらしくていい決断が出来たと思う」とhydeは言う。「希望が見えづらくなってるから、みんなの前に行けたらと思って、今日を迎えました」と少しだけ涙目になりながらも呟くように言った後

「止まない雨は無い」

 と、雨雲が連なったこの日の夜空に手をかざしながら言い切り、この日最後の楽曲「虹」を演奏し始めた。

 虹が生まれるには、雨が止まなければいけない。地震後の混乱が未だに続く今の日本という「異郷」すらも自らの世界に染めようということか。いや、大いなる悲しみを一手に引き受け、それでも夢を描き、現実を忘れさせようということか。そんな宣言に、僕は心底胸が震えた。

1.In the Air
2.Caress of Venus
3.Vivid Colors
4.the Fourth Avenue Cafe
5.夏の憂鬱[time to say good-bye]
6.風の行方
7.As if in a dream
8.Dune
9.winter fall
10.ガラス玉
11.fate
12.Floods of tears
13.Blurry Eyes
14.Lies and Truth
15.flower
16.I'm so happy
17.Shout at the Devil

encore

18.あなた
19.milky way
20.Voice
21.White Feathers
22.虹

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