HARD-FI 『Killer Sounds』(Atlantic / Warner)

|

Hard-Fi 『Killer Sounds』.jpg  ハード・ファイの日本における評価は低すぎる。何なら世界における評価も低すぎる。彼らはときにアークティックよりも称賛されるべき存在だと個人的には思う。スウィングトップにジーンズ姿で「おれは週末のために生きている」なんてジャストなフレーズを繰り出すリチャードの姿は、カリスマ以外の何物でもない。歌はびっくりこくくらい下手だけど。労働者階級のキッズの代弁者であり、たくましき野心の持ち主である彼らの新作は、スチュアート・プライス(マドンナ、キラーズ)やアラン・モウルダー(マイ・ブラッディ・バレンタイン、ヤー・ヤー・ヤーズ)、グレッグ・カースティン(リリー・アレン)らをプロデューサーに招き入れた意欲作。なかでもスチュアートの起用は意外だった。やはり前二作よりも四つ打ちのリズムとシンセサイザーは目立つが、プロデューサーの色にハード・ファイの個性が圧勝しているので、いままでのファンが困惑の色を浮かべるようなことはあまりなさそう。

 初っ端から「お前はいったい何の役に立っているんだ?」と問いかける「Good For Nothing」がとんでもない。これで今年ナンバー1アンセムのポジションはおそらく最後まで揺らがないだろう。新世代のレベルミュージックと言っても良い。しばらく鳴りを潜めていたと思ったら見事に現代のクラッシュになって帰ってきた。彼らの曲を聴いていると何か行動を起こしてやろうという気になる。そういえばこの前のイギリスで起こった暴動って、何かBGM的なものはあったのかな。別にあんな略奪だらけのクソみたいな暴動に彼らの曲を使ってほしいなんて思わないけどさ。いや、でもあれもティーンの叫びだぜ? モラルがないとか、政治的意図がないとかいうけどさ、ないよねそんなもん。持つような環境じゃないんだから。それで未来がないんだから。ずっと精神的に虐げられて、何の形でも良いから自由を掴みたかったんじゃないかな。そんなキッズの希望になるような音楽を作れるのはコールドプレイじゃなくて、アークティック・モンキーズとかビーディー・アイとかハード・ファイなんだから、もっと彼らをまともな方向に連れて行ってやって欲しい。

 相変わらずアルバムの曲にはコール&レスポンスの要素が満載。ライヴハウスが新作のナンバーで熱狂の渦に包まれるところを一刻も早く目撃したい。一際シンセ色が強い「Love Song」とか盛り上がりそうじゃない。イギリスのキッズも決して希望を失わずに「Good For Nothing」を全力でシンガロングして、自分たちはぜったい「Good For Nothing」な人間になんてなってやるものか、と思ってほしい。ぬるま湯みたいなこの国で育った私がこんなこと書いても1ミリの説得力もないかもしれないが、なぜかわたしもハード・ファイのようなバンドが持つ精神性と共鳴する部分が多いから、最終的にはこういう音楽が勝利を収めるんだ、と思って今日も生きていこうと思う。

(長畑宏明)

retweet