GYPSY & THE CAT 『Gilgamesh』 (Sony / RCA)

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Gypsy & the Cat 『Gilgamesh』.jpg  モダナイズされたAORでクオリティの高い作品って、なかなか出会うチャンスが少ない。ソングライティングの面で妥協することは許されないし、もちろん演奏技術も卓越している必要がある。それでいて時代のムードみたいなものも嫌味にならない程度に取り入れることができれば、文句のつけどころがなくなる。今年のサマーソニックにも登場したオーストラリアの若きユニット、ジプシー・アンド・ザ・キャットの作品はまさにその理想形に近い。MGMTがよく引き合いに出されるが、その通りエレクトロの心地よい浮遊感を従来のAORサウンドにプラスすることで、ただのダサい「おじさんおばさんロック」にならずに済んでいる。それどころか、2000年代にマルーン5がAORの要素をたぶんに含んだR&Bサウンドでジャミロクワイ以来の成功を勝ち取った超傑作ファーストを引き合いに出したくなるような、素晴らしいデビュー作だ。

   いくつかYouTubeにもアップされているスタジオライヴなどを観ると、演奏はほんとうにうまい(そういえば同じオーストラリア出身のザ・ネイキッド・アンド・フェイマスも新人離れした技術を誇っている)。ソングライティングの基礎もしっかりし過ぎているほどしっかりしているから、聴いていて安心してしまう。ファイヴ・フォー・ファイティングとか、ポール・コールマン・トリオ(覚えている人いるかな)とか、シザー・シスターズとか、TOTOとか・・・連想されるバンドの名前を羅列してもあまり統一感はなさそうだけど、そのくらい実は豊かな音楽的土壌を持つバンド。そういえば最近の「Cookiescene」でのインタビューで「エールから多大な影響を受けた」という旨の発言を目にして、「あー、確かに!」と思いました。やっぱり絶妙なバランス感覚です。とくに最後の「A Perfect 2」、まさにアルバムを締めくくるに相応しいバラッドなんですが、彼らのこういうのはむちゃくちゃ良い。爽やかだけど胸が締め付けらる。もちろん『Kitsune』のコンピにも収録された「Time to wander」、軽やかに疾走する「Running Romeo」など、どれをとっても極上のポップソングで、ため息が出る。

(長畑宏明)

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