0.8秒と衝撃。at 梅田Shangri-La 2011.6.4

 それまでも公言していた'80sポスト・パンクのエッセンスにヘヴィ・ロック的なド厚い音圧で、一心不乱に木々をなぎ倒して突き進む鈍獣のように、およそ30分の収録時間を、聴く者に直球で訴えるようでありながら同時に、どこかで安直な理解を欺こうともしているようなひねくれ気味の衝動でもってノンストップで突っ走る『1暴2暴3暴4暴5暴6暴、東洋のテクノ。』がリリースされてから初めてライヴを行う日に(厳密に見れば、24時を過ぎているので日時は翌日にまたがっているものの)名古屋と大阪で2公演をこなした0.8秒と衝撃。。この後者、大阪公演を観る機会に恵まれた。

 ライヴ中のMCでソングライターのフロントマン、ヴォーカルの塔山忠臣は、自身が当日の午前中に東京でバイトをしていたことも明かしていた。まとめると東京でバイト→名古屋でイベントに出演→深夜~早朝の大阪でもライヴと、怒濤のスケジュールになっていたわけだが、その疲弊など一切感じさせない、バンドとしてのダイナミズム、シニカルなステージング、ニヒリズムを匂わせながらもそこから確かに感じ取れるインディーとしての感覚などが感じられる圧倒的なショーだった。

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 関西のシーンで邦楽ロックを更に盛り上げたいという想いから発足した、それらのアクトとDJを招集して行われるイベント「Onion Night」の3周年記念のオールナイト・ショーだったこの日の早朝4時前後、既にホワイト・アッシュやヴォラ・アンド・ジ・オリエンタル・マシーンといったバンドのステージも過ぎ去り、ジェッジションソンから藤戸じゅにあのDJはセットリストを終えてしまい、セットリストにないエキストラ・アクトの時間に突入していた。名古屋から到着した、0.8秒と衝撃。のセッティングが押していたからだ。その手持ち無沙汰な時間にオーディエンスも少し戸惑いながら、同時に0.8秒と衝撃。への期待はもちろん失っていない。

 DJ.藤戸じゅにあのアンコールが2曲程度プレイされた後だっただろうか、それまでのゆったりとしたアンビエントな空間から一気に引き戻されるように、「町蔵・町子・破壊:68RMXX」(同名曲のクラブ・ミックス)のイントロ部分がループして爆音で響き渡る。0.8秒と衝撃。のS.E.である。時間帯のせいもあり、少し疲れの色も見せていたオーディエンスも彼らが現れると目を見開いているのが面白い。塔山とドラムの有島コレスケ(と、余談的に書くと、彼らの前に出演していたヴォラ・アンド・ジ・オリエンタル・マシーンのドラム、中畑大樹)はジョイ・ディヴィジョン『Unknown Pleasures』のTシャツを着ている。塔山はそのシャツの上にカーディガンを羽織って着込んでいたこともあり、どのメンバーも登場して早々、クールな様相と言うよりも明らかに熱気を醸し出している。

 1曲めにプレイされたのは、ファースト・アルバム『Zoo & LENNON』の幕開け曲でもある「POSTMAN JOHN」。軽やかなシンセが耳に届くも束の間、仄暗く鋭利なギターのサウンドが会場を包む。かと思ったら、早速、塔山はカーディガンを脱ぎ捨て<<チクタク、チクタク、時は回る 死ぬしかないのか?/チクタク、チクタク 目覚めさせて>>と絶唱し出している。初っ端から少々トバしすぎてはいないか? という懸念も追いつかない内に、「町蔵・町子・破壊」へと続く。塔山が自分の歌のないパートで関西の不条理を一身に纏い操られたかのようにポゴダンスを踊り狂うと、J.M.もその可憐な風格から想像つかないような激唱でまくし立てる。瞬間の予断も許されないように一気に狂騒に包まれる。

「こんな時間からゆったりした曲ばっかり聴いてちょっと眠たくなってるでしょ? そんなあんたら、盆踊りして目ぇ覚ましましょうや」といったMCの後に、プレイされる「東中野、トランス盆踊り」で、それまでの他のバンドではモッシュ・ピットとなっていたフロアも曲名通りのトランスした踊り集たちで溢れる。塔山も往年のリアム・ギャラガーのように腕を後ろで組んで、相変わらず叫び散らしている。ここまでの熱量は、決して、徹夜のヤケのテンションでなく、彼ら自身が持っている強かさによるものである。

 それを証明するように、この曲の終わった後に行われた「0.8秒と衝撃。の決め台詞を決めよう」といった趣旨のMC(メディアに出演する際に、自分のハイテンションを横目に傍観を続けるJ.M.の空気に圧倒され気まずい空気が流れてしまうという、度重なってきたらしい事態に業を煮やした塔山が、ポリシックスの「トイス!」よろしく、自分たちも沈黙や微妙な空気を打開するための決め台詞を決めようと募ったというもの)で、J.M.やベースの野菜くんに各種恥ずかしいポーズをとらせた後に、左手を腰に回し右腕を振り上げさせ、「おっぱい!」と叫ばせるなどのイジリ(正確にはイジリではなく、これを決め台詞にしたいようだ)は、ブラック・ユーモアの光る彼らであっても「夜中のノリ」が幾分に入っていたと言えよう。塔山もホームタウン、大阪とだけあって、それぞれのメンバーへのツッコミのキレが鋭い。それにしても、何気にJ.M.も野菜くんもまんざらでは無さそうにやっていたのが、カオティックで微笑ましかったが。

 一連のネタのようなMCから「Brian Eno」へ繋がると一転して、再び会場が熱気に包まれる。相変わらず塔山はヴォーカル・パートがない時には、既にポゴとも言えない踊りを披露したり、飛んだり跳ねたりとステージの定位置は守ったまま暴れ狂っている。J.M.の「踊りましょうか!」というかけ声と共に「檸檬」がプレイされると、これぞ東洋のレイヴ!と言うかのように、混沌そのものといったダンスで会場が埋め尽くされる。J.M.のピュアなシンセの音とそれに同居しながら徹底的に反発するような、気怠いヴォーカルが激唱に変わるに連れて、じわじわと夜が明けていくような感覚に陥る。

 塔山の(良い意味で)わざとらしく引きの多い要求を超えたJ.M.が「スージーカムカム」と発すると、会場のカオスは沸点に達する。『エスノファンキードフトエフスキーカムカムクラブEP』から「ビートニクキラーズ」だ。この文学青年を気取って逆説的に人を食ったようなタイトルのミニ・アルバムの1曲めはライヴでは偽悪も、アンチ・スノビズムも振り払ったかのように狂乱のビートとして響き渡っていた。「溺れるcelloとカシス」、「02490850230...」といった終盤の流れになると、塔山はシャツもズボンも脱ぎ捨て下着一丁でほぼ直立不動で絶唱している。しかし、そんな光景も、この混沌の中ではむしろ自然な姿のように思えてくる。「02490850230...」のラストでは、塔山はカート・コバーンをはじめとするグランジ・ヒーローよろしくドラムに突っ込んでいた。

 アンコールでは、「POGO DANCE」がプレイされる前に、塔山のお得意というゲップラップ(塔山がブレイクビーツ風のリズムに乗せてげっぷを連発するというもの)が披露され微笑ましい笑いを買うも、曲が始まると狂騒の時間はまだ続いた。J.M.がその細い身体(普段はモデルをしているくらいだ)を振り絞り、絶唱している中、塔山は客席へとダイヴ。かけ戻って来てステージに舞い上がったと思えば、再び終演間際でドラムに突っ込んでいた。アンコールも変わらず、狂乱のステージであったが、去り際にJ.M.が先の決め台詞の「おっぱーい!」ととびきりの笑顔で感謝の意を示していたので皆、微笑ましく朝を迎えた。

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 音源では、どこか皮肉的にも聴こえてくる言葉の数々はライヴでは、カットアップであれば無作為に帽子から取り出されたばかりのような熱量をもった言葉の弾丸として容赦なく撃ちつけられ、ニヒリズムに陥る余韻も与えさせないほど、安易な共感を遠ざけているようで、これまで書いてきたように会場全体を包み込むような混沌を巻き起こそうとする彼ら。たった一度のライヴでも色々な側面が垣間みることができた。彼らのカオティックな野心が向かう先を見届け、既存の概念がぶち壊される瞬間の目撃者になりたいと思わされるような一夜だった。

セットリスト

1. Postman John
2. 「町蔵・町子・破壊」
3. 東中野、トランス盆踊り
4. Brian Eno
5. 檸檬
6. ビートニクキラーズ
7. 溺れるcelloとカシス
8. 02490850230...

Encore

9. Pogo Dance

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