FIGURINES『Figurines』(Morningside)

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  アマゾンでも出回っていないということでご存じない方も多いと思うが(こんなところで宣伝するのも何だが私のサイト、ヘッヂホッグ・レコーズでは販売中です)、彼らは元々メッズ、クリスチャン、イェンス、クラウス、クリスチャンによる5ピースで、ザ・キスアウェイ・トレイルとのツアーで忙しいデンマークの逸材、フィギュリンズだ。通算4枚目のアルバムとなり、初のセルフタイトルド・アルバムである。その音楽性は前作『When The Deer Wore Blue』がフレーミング・リップスの『Clouds Taste Metallic』だとすれば今作は「Yoshimi Battles The Pink Robots』と言ったところだろう。つまり『The Soft Bulletin』ど真ん中は行っていないのだ。それでありながら、2000年代から見せ始めたリップスの至福さを彷彿とさせるデンマーク勢の新人や新作をきっちりと継承してみせている。前作のレヴューで"クリニック meets フレーミング・リップス"と書かせて頂いたが、今回クリニックらしさが薄れ、その代わりに"歌"や"メロディー"というものを大切にしている。もちろんこれだけひねくれたインディー・バンドだからこそ王道を行こうという風でもない。僅かな"ねじれ感"が未だ感じられるところは彼らならではなのだろう。

 1990年代半ばに結成され、これまでペイヴメントやモデスト・マウスらと比較されてきた。またクッキーシーン・ムック『北欧POP MAP』で紹介させて頂いたセカンド・アルバム『Skeleton』はジム・オルークなどと仕事をして完成したインディーズ・サウンドだった。サード・アルバムに関してはソニック・ユースとの作業でも知られるジェレミー・レモスがプロデュースしている。ところがその後、メッズとクリスチャンが脱退し3ピースとなってしまった。そしてリリースされたのが今作『Figurines』というわけだ。そこには彼らが3人になってもフィギュリンズであり続ける、その姿勢がセルフタイトルドへと決断させたのではないかと推測出来る。バンドの新たな決心が、もう一度いや初めてかもしれないが、初心に返らせたのだ。

 いわゆる"ヘタうま"とも言える彼らのヴォーカルとバッキング・ヴォーカルに、今作ではストリングスを加えたりアコースティック・ソングを歌ってみせたり、ある種の違和感を感じさせながらも、そこが魅力となっているバンドである。またバンドとはある種の反骨精神から生まれるものも少なくない。彼らももしかしたらそうだったのかもしれない。だからこそ年月を経た今、"幸せ"を鳴らそうとしているのかもと、そう感じさせられたのが現実だ。3人となった彼らに、もう一度期待を寄せてみよう。

 (吉川裕里子)

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