ねごと『Ex.Negoto』(Ki/oon)

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ねごと『ex.Negoto』.jpg『メルシールーe.p.』を初めて聴いたときに予兆は感じていたけど、『ex.Negoto』は、痛みを鳴らしている。『Hello!"Z"』「カロン」で見られたポップネスをそのままに、『メルシールーe.p. 』では聴く者の心を抉るようなエッジと感情の「揺らぎ」を表現したねごと。この一連の集大成としてリリースされた『ex.Negoto』は、文字通り傑作となっている。

 アタックが強いピアノとドラムが印象的な「サイダーの海」から始まり、「ループ」「カロン」、さらに「ビーサイド」を挟んでの「メルシールー」という疾走感溢れる前半は、彼女達の成長をドキュメントしているようで非常に感動的な流れだ。特に「ビーサイド」「メルシールー」で心を鷲掴みにされる瞬間は、何度聴いても「ゾクッ」とする。

 そして叙情的なピアノが心地良いミドル・テンポな「ふわりのこと」から、『ex.Negoto』におけるねごとの新たな一面が顕在化していく。アイディアと遊び心がたくさん詰まった、まるで初期XTCのようなユーモア・ポップを想起させる「七夕」。シューゲイザー的な轟音、といっても弱々しい最近のシューゲイザー・バンドのそれではなく、ソニック・ユースや、これに匹敵するハードさを持っていたから受け入れられたマイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどのバンドをちゃんと理解した音が鳴っている「Week...end」。「七夕」「Week...end」の2曲は、主に90年代オルタナへと通じるコアな音楽性を持っていることが証明されている(特に「Week...end」はそうだろう)。この要素は、耳が肥えた玄人リスナーを惹きつける大きな武器となるはず。

 アルバム全体を通して複雑で曖昧な感情を表現し、その結果として、『ex.Negoto』はすごく情緒的なアルバムになっているが、その情緒的な部分がどんどん露わになっていく「季節」「AO」「揺れる」が並ぶ終盤の流れ。この終盤は、我々が成長する過程で必ずぶつかってしまう「行き場所がない不安な感覚」と、それでもどこか楽観的に歩みを始めてしまう根拠なきポジティブシンキング。そして、これら両極端な感情の狭間に存在する「ナニカ」を内包しているように感じる。それはまさに「複雑で曖昧な感情」で、未来を形成する可能性にもなれば、簡単に絶望へと変わってしまう繊細で心許ない「揺らぎ」だ。結局のところ、我々はこの「揺らぎ」と死ぬまで付き合うことになるわけで、それだったら、より楽しく生きるほうがいいに決まっている。もちろんそれは大変なことだけど、壮大な青空を眺めているようなスケールを携えた「インストゥルメンタル」を聴くと、そう難しいことではないような気がしてくるから不思議だ。まあ、僕の若さがそう思わせてしまうのかも知れないが...。しかし、ねごと自身が既に『ex.Negoto』の地点から旅立ち遠く先を見据えているように、彼女たちはこれからも数多くの未来と可能性を、我々に見せてくれるはず。『ex.Negoto』は、そんな希望の始まりとして生まれた素晴らしいアルバム。

(近藤真弥)

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