EMA 『Past Life Martyred Saints』(Souterrain Transmiss) [reviews]

Ema.jpg

 太陽がさんさんと輝くカリフォルニア。昨年、ベスト・コーストウェイヴスが、夏のビーチのサニーなサウンドトラックとなっていたのも記憶に新しいだろう。

 だが、光あるところには影が生まれる。そのグロテスクな暗部を描き出したのがこのEMA。1枚のアルバムを残し解散してしまったノイズ・フォーク・バンド GOWNSのフロントウーマン=エリカ・M・アンダーソンが、かつてのバンド・メイト兼元ボーイ・フレンドのエズラ・バックラと始めたプロジェクトだ。彼女がこのたびドロップしたソロ・デビュー・アルバム『Past Life Martyred Saints』では、砂地の風景を思わせるサウンド・スケープを、デヴィッド・クローネンバーグのニヒリズムで描き出した。それは、あまりにも殺伐としていた。

 ノー・ウェイヴ~アシッド・フォークを基調とし、重苦しいゴスのテイストを加えた楽曲は、ヴァース/コーラスからなるロックの起承転結からはかけ離れた展開を見せる。また、殺伐としたノイズを撒き散らすサウンドはヴェルヴェッツを想起せずにいられない。7分に渡ってニール・ヤング風のささくれたフォークがじわじわと沈み込んでいくオープニングの「The Grey Ship」といい、ヘヴィにバーストするノイズとキャッチーな歌心が同居する「Milkman」といい、音のレイヤーの隙間が荒く黒く塗りつぶされているようだし、自殺を綴った「Butterfly Knife」では背筋がそら寒くなる。だが、収録曲中最もショッキングなインパクトがあるのは「California」だろう。爆発とも地響きともとれるようなビートにのせ、《クソったれなカリフォルニア あんたは私をつまらないものにした》《私はたったの22歳 死ぬことなんか気にしない》といったパーソナルな怒りのリリックをリスナーに突きつける。彼女のカリフォルニアに対する鋭い意思表明、それはあまりに重苦しく訴えかけてくる。

 甘い夏を歌うシーンは過ぎ去った。大きな闇が横たわっている。これもカリフォルニアなのだ、と。

 (角田仁志)

 

 

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: EMA 『Past Life Martyred Saints』(Souterrain Transmiss)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/2822

このブログ記事について

このページは、伊藤英嗣が2011年7月23日 07:55に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「SEAPONY 『Go With Me』(Hardly Art)」です。

次のブログ記事は「BRIAN ENO AND THE WORDS OF RICK HOLLAND 『Drums Between The Bells』(Warp / Beat)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1