DIGITALISM 『I Love You Dude』(Cuk / EMI)

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DIGITALISM『I Love You Dude 』.jpg  デジタリズムのセカンド・アルバムは、どの曲も輪郭がハッキリとしている。前作『Idealism』にも、ニュー・オーダーを想起させるギター・リフが印象的なアンセム「Pogo」があったように、元々歌心がある彼ら。『I Love You Dude』でもさらにその部分を強調してくることは予想できたが、歌ものトラックはメロディを強く打ち出し、インストの曲は、90年代のダンス・ミュージックのような音色とビートを刻んでいる。

  初期レイヴ的なグルーヴが面白い 「2 Hearts」。どこかフューチャリスティックな響きが聴く者を不思議な感覚へと導いてくれる「Circles」などは、歌ものトラックとして出色の出来だ。

 ケミカル・ブラザーズとThe KLF「What Time Is Love?」を混ぜ合わせたような「Antibiotics」。ハードフロアによってホワイトトラッシュされた以降のアシッド・サウンドが高揚感をもたらしてくれる「Maimi Showdown」といった曲は、前述の「90年代のダンス・ミュージック」を感じさせる。しかし、彼らの音に古臭さを嗅ぎ取ることはできないし、ましてやノスタルジーなんて皆無だ。

 近年の音楽シーンは、90年代の要素を取り入れた曲が多いけど、これは90年代の10年を通じて細分化され、そのことによって「置き去り」にされた音楽の再評価の動きだと思っている(例えば日本だと、小室哲哉の再注目がそうだろう)。細分化が進むごとに、その音楽が持つ精神性や哲学などが先走りし、結局は内省に向かいつまらないものになってしまった様々な音楽を、期限切れの時代性から解放することで、再び命を吹き込もうとする背景が、90年代再評価の動きにはある。だからこそ、それをうまく実行できているデジタリズムは、「まんま」な音は鳴らさない。あくまで「現在」という立ち位置から過去を逆照射することで同時代性を獲得し、そこにデジタリズム独自のセンスを加えることで、彼ら独特のポップ・ミュージックとなっている。『I Love You Dude』は、そんなデジタリズムの才覚が発揮された素晴らしいポップ・アルバムだ。

(近藤真弥)

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