CHANNEL IN CHANNEL OUT 『The Author And The Narrator』(Karaoke Kalk)

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 一人一人の聴き手に想像の幅が残されている。多様な聴き方、見方のできる作品はそれだけでも面白い。本盤は、ポートランド出身のマーカス・コットンによるソロ・プロジェクトであるチャンネル・イン・チャンネル・アウトの、一枚目にあたるフル・アルバムとなる。アコースティック・ギターでフォーキーなリフをループさせ、雑多な電子音が不規則に奏でられているその形式は、レディオヘッドの『Hail To The Thief』あたりをアコースティック・ギターと電子音という編成で再現してみたような雰囲気を醸し出している(ジャケットのアート・ワークも似たテイスト)。「書き手と語り手」というタイトルに相応しく、彼によるポエトリー・リーディングやストーリー・テリングを中心とした、モノクロの写真集や短編集を想起させる内容となっている。「荒々しい」「大勢の人々が行き交う雑踏にて立ち尽くしている気分」というのが率直な私の感想だが、「美しい」と評する方も「暗いなぁ」と評する方もおそらくいる。それこそ多様な雑感が噴出するだろう。

 彼の公式サイトにて、このプロジェクトの目的が掲げられている。「映像、写真、アートを介して音楽を生活に寄り添わせる(架け橋にする、といった表現だろうか)」ことが、チャンネル・イン・チャンネル・アウトにおける一つの到達点として語られているのだが、確かにサイトに掲載された写真や映像を媒介にすることで、より彼の世界観に埋没できるし、もしくは、広大な風景写真を見せ付けられることで、「後は自分で想像してね」と伸び代を残される。言うなれば、彼の到達点はアートとしての音楽、音楽だけで完結しない総合芸術、自己表現の手段としての音楽だ。着想はクールだが、きっと曖昧模糊で困難なゴールになるだろうし、自己陶酔のような狭い回路で終結してしまう危うさも孕んでいる。彼の言葉を借りるとすれば、彼自身が「書き手」と「語り手」の両者になりかねない。

 こういったフォーキーな形式は、それこそ『Hail To The Thief』が出た当時から現在に至るまでにやり尽されたが、チャンネル・イン・チャンネル・アウトのそれは決して古臭くない。それは勿論、表現へのオリジナリティある意志を彼が秘めているためだ。そういった表現への欲求に委ねる姿勢と、このざらついた衝動にまみれた本盤は高く評価されるべき。

 (楓屋)

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