ゴリラズ『ザ・フォール』(Parlophone / EMI) [reviews]

gorillaz_thefall.jpg
 1stではダン・ジ・オートメーター、2nd『ディーモン・デイズ』ではデンジャー・マウスという最先端のトラック・メーカーとの共同作業で多くを学び、前作『プラスティック・ビーチ』では、錚々たるゲストを迎えたコラボも大成功。あとは...マードック、2D、ヌードル、ラッセルをフィーチャーした映画しかない!とか思っていたら、意外な速さで最新作が届けられた。ブラー在籍時よりも音楽バカ(もちろん褒め言葉)でワーカホリックな性格が目立つデーモン・アルバーン。彼はゴリラズの北米ツアー中にも、しっかり音源を録りためていた。すべての曲がiPadとアプリ(!)、そしていくつかの宅録機材だけでレコーディングされている。タイトルの『ザ・フォール』は、前作に参加したマーク・E・スミスが率いる伝説のバンド"THE FALL"へのリスペクト&トリビュート...ではなくて、レコーディング期間が秋だったからとのこと。

 このアルバムは、もともと去年のクリスマスにファンクラブ用に配信されていた音源。それが公式アルバムとしてリリースされることにも納得できる充実の内容だ。メロディーは1st、2ndの頃のようにちょっぴりダークでメランコリック。そして、限られた録音機材を逆手に取ったミニマムなサウンド・アプローチとレコーディングされた日付順に並べただけのトラック・リストが想像力を刺激する。アメリカ~カナダの地名を含む曲名が多く、クレジットにはレコーディングされた場所もしっかり記されている。

 テキサス、デトロイト、カリフォルニア、シアトル...。行く先々の音楽を吸収したというよりも、その時の心象風景を描いているような曲が並ぶ。時間と場所が明確なだけに、もともとの"バーチャル・バンド"というコンセプトが希薄になった。サウンド・スケッチあるいはロード・ムーヴィーっぽい感覚は、とてもリアル。使っている機材も音楽性も違うけれど、この感覚はブルースやフォークのアルバムに似ている。

 アニメーションのキャラクターとその世界という"想像力"からはみ出したデーモン・アルバーンのミュージシャンとしての"創造力"。コンセプトやギミックを抑えた上で、彼が無意識に選び取ったテーマは『現実』だったのかもしれない。「最新のiPadとアプリを使って!」とか「たった32日間で録音!」とかの煽り文句には耳をふさいで、このアルバムから聞こえる音楽だけに耳をすまそう。前作ほどの賑やかさ、派手なプロモーションはないけれど、このアルバムはゴリラズ(デーモン・アルバーン)にとって重要な1枚になるはず。そして、もちろん僕たちにとってもそれは同じ。いにしえのルーツ・ミュージックと同じようなフィーリングで、エレクトロニックなサウンドが語りかけてくる。こんなゴリラズも最高だと思う。

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: ゴリラズ『ザ・フォール』(Parlophone / EMI)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/2788

このブログ記事について

このページは、伊藤英嗣が2011年6月21日 14:22に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「アンディモリ『革命』(Youth)」です。

次のブログ記事は「メトロノミー 『イングリッシュ・リヴィエラ』(Because / Warner Music)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1