クリスタル・ファイターズ『スター・オブ・ラブ』(Zikruro / KSR)

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crystal_fighters.jpg 突然ですが、皆さんにとって「ポップ・ミュージック」とはなんですか?

 人によっていろんな意見があるとは思うけど、僕はポップ・ミュージックを「自由で実験的な試みも可能な音楽」と捉えている。実はハーツのセオにインタビューをさせてもらってから、ポップ・ミュージックについて考えることが多かった。セオは「ポップ・ミュージックはふたつある。ひとつは、万人が楽しめて盛り上がれるポップ・ミュージック。もうひとつはオルタナティヴなポップ・ミュージック」と言っていたけど、「その両方を実現することも可能なんじゃない?」と、話を聞きながら思ったりもした(まあ、そのときは議論ではなくインタビューをしに行ったので、話を引き出すため聞き役に徹しましたが)。もちろんセオの話もポップ・ミュージックとしては全然アリだし、すごく頷ける面白い意見もたくさん語ってくれた(実際同意できる話がほとんどだったし)。とにかく、音楽から歴史性が失われてフラット化した現在においては、「それぞれの音楽」というのがますます増えてきて面白いと思った次第です。

 このスペイン出身のクリスタル・ファイターズというバンドは、現代におけるポップ・ミュージックを鳴らしている。「シンセサイザーとバスク音楽の民族楽器を、歌とテンポの良いダンスビートと融合させたような音楽」とメンバーは語っているが、ベースにはダブステップの強い影響が窺えるし、トロピカル系と呼ばれる音楽の要素もある。「In The Summer」という曲ではフリー・フォークをダンス・ミュージックに上手く落とし込んでいるし、サイケデリックでもある。先程引用した発言にもある通り、ダンスビートを基本としながら、そこにありとあらゆる音楽を組み合わせて曲に仕上げたようなものが多い。だからといって散漫としたアルバムにはなっていないし、BBCが「クラクソンズのセカンド・アルバムが目指して辿り着けなかったような大ヒット作だ」と絶賛したくなる気持ちも分かる。聴き込むほど音楽的な面白さが出てくると同時に、片手間に聴きながらでも楽しい飽きないアルバムとなっている。

 それと冒頭のポップ・ミュージックの話とも重なるんだけど、クリスタル・ファイターズはすごくオルタナティブで実験をしているバンドだと思う。アルバムを聴いていて強く感じるのは、それを無意識にやっている感覚。つまり天然なのだ。だから堅苦しいストイックな空気はないし、それが良い意味での「軽さ」となり親しみやすさにも繋がっているから、結果的に「万人が楽しめるオルタナティブなポップ・ミュージック」となっている。この「軽さ」が伝統や歴史を重んじる評論家から批判の対象になっているようだけど、『Star Of Love』は「今」が生み出した素晴らしいアルバムであるのは間違いないし、僕のように異なるものが交わり融合していく瞬間に興奮を覚える人にとって、『Star Of Love』は絶対に聴くべきアルバムだ。

(近藤真弥)

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