#restart at 渋谷WWW 2011/3/26

|
 渋谷シネマライズの跡地に出来たライヴハウスWWWにて、東日本大震災復興支援イベント「WWW presents #restart」が開催された。「日常を再起動して復興を支援するプロジェクト」というコンセプトの下、26日(土)と27日(日)の2回に分けて行なわれた当イベントは、いずれも15時から18時半までというイレギュラーな時間帯。これは東京電力発表の「電力使用状況グラフ」に基づき、電力使用のピーク時間を避けて設定したものだという。なお、チケットの売上から諸経費を除いた収益の全額は、災害義援金として日本赤十字社に寄付する方式を取っており、会場、出演アーティスト、そしてオーディエンスの3者が共同で被災地を支援する形となる。
 
 この呼びかけに賛同し駆けつけたアーティストは、土曜日がCaravan、ジム・オルーク、前野健太とDAVID BOWIEたち、Predawn。日曜日がoutside yoshino(イースタン・ユース)、小田晃生、口口口、渋谷慶一郎。筆者は土曜日の回の(時間の関係でCaravanを除く)3アーティスト(+飛び入りゲスト)を観ることが出来た。


>>>>>>>>>>
 
 自分にとっては、今日が震災後初のライヴ鑑賞となる。おそらく会場に集まった人たちの多くも、そうであったのだろう。未だ余震が断続的に続く中でのイベントということもあって、これまで余り体験したことのない緊張感に包まれていたように思う(幸い、開催中に大きな揺れは一度もなかったはず)。もちろん、緊急の際の避難場所などを入場の際にあらかじめ渡されたり、すし詰めの満員にならないよう入場者数を抑えたりと、主催者側の事前対策もしっかりしていたので何一つ心配することはなかったのだが。
 
 最初に主催者から簡単な注意事項のアナウンスがあった後、ほぼ時間通りにイベントがスタートした。トップバッターはPredawnこと清水美和子。今年1月にマイス・パレードのオープニング・アクトで観たとき以来だが、少し伸びた髪を後ろでラフにまとめていた以外は、いつもと全く変わらぬ出立ち。タイで買った99バーツの、彼女曰く「持っている中で、いちばんヘンなTシャツ」の上からパーカーをはおり、いつものギターを抱えて、いつものように淡々とメロディを紡いでいく。「Lullaby from Street Lights」や「Suddenly」、「Keep Silence」、日本語詞の「虹色の風」など、お馴染みの楽曲が細胞に染み渡り、心の中の硬い"しこり"のようなものを少しずつほぐしてゆくようだ。爪弾かれるギターの粒立ちが、まるで光の粒子のようにキラキラと舞っているような気がしたのは、WWWの優れた音響設備のせいだけではないはずだ。実際のところ震災以降、これまでにないくらい神経が過敏になっているようで、ちょっとした感覚刺激にも大きく動揺することが増えている。911のときもそうだったのだが、これから先、音楽の聴こえ方や感じ方もガラリと変わってしまうのかも知れない。そんなことを考えながら彼女の歌を聴いていた。
 
 続いて登場したのは前野健太とDAVID BOWIEたち。「DAVID BOWIEたち」とはバック・バンドのメンバーのことで、ベースが大久保日向、二弓&ギターが吉田悠樹、そしてドラムがポップ鈴木という布陣。実は、前野のライヴは昨年9月にラフォーレ原宿にて相対性理論と共演したときに一度観ている。そのときはエレキギター1本での弾き語りフォーク・スタイルだったのだが、バンド・アンサンブルでの今回は"ロック度"が増していて圧巻。ディストーションで歪みまくった二弓のソロも凄まじかったが、タメの効いた躍動感あふれるドラミングに目が釘付け。前野の魅力の1つは、おそらく公共の電波には乗せられないほど卑猥な歌詞にある。中でも過激なのが、その名も「ファックミー」。この日は子連れの観客も何組かいたため、「3歳以上のお子さんは、ちょっと外に出ていた方が良いかも...」と断りを入れつつ、「セクシー・リヴァーブ」(本人談)をたっぷりかけて歌われたその刹那的な内容は、明日をも知れぬ今の日本で聴くには、大人であっても刺激が強すぎた。今では取り戻すのに長い時間がかかるであろう"日常"を歌った「天気予報」も、震災前とは全く違う響きを帯びていたのだ。
 
 この日、飛び入りで出演したタップ・ダンサー熊谷和徳の、ビートを際限なく分割していくテクノのような超絶パフォーマンスのあと、いよいよジム・オルークの登場である。あごひげをたっぷりと蓄え、もはやトレードマークと言ってもいいモスグリーンのモヘア・カーディガン姿。「ハードオフで購入した」というギブソン(?)の真っ赤なSGが、そんな彼のむさくるしい(失礼!)ルックスと強いコントラストを生み出していた。本人によれば、この日はなんと10年振りのバンド演奏で、ドラムに山本達久、ベースに須藤俊明、そしてピアノに石橋英子と、これまた豪華なメンツが脇を固めている。しかも、『インシグニフィカンス』からの曲を中心に、『ユリイカ』収録曲まで披露するという夢のようなメニュー。これには客席からも、大きな歓声やどよめきが沸き起こっていた。久しぶりということもあってか、ギターもヴォーカルも"いっぱいいっぱい"のジムだったが、言葉の1つ1つ、メロディの1音1音を丁寧に誠実に紡いでいく彼の姿には思わず涙腺が緩んでしまう。最後は、熊谷和徳と共に、「Women of The World」を全員でシンガロング。「さあ、みんなで一緒に!」と叫んだジムの優しい笑顔には、「日常を取り戻そう!」という彼の、日本への熱いエールが込められているように思えた。
 

retweet