R.E.M.『コラプス・イントゥ・ナウ』(Warner Bros. / Warner)

|

rem_.jpg 今でも大好きなバンド、大切なアルバムがたくさんある。いつ、どこで、どんなふうに出会ったのか、僕はそのひとつひとつを思い出せる。ちっぽけとは言いたくないけれど、壮大とも言い切れない人生の中で出会うべくして出会った音楽。今そばにいてくれる誰かのように、今すぐ思い浮かぶ誰かのように、それはかけがえのないものだ。一度でも音楽に心を奪われたことがある人には、わかってもらえるはず。今、そんなことを考えながらR.E.M.にとって15作目となる『コラプス・イントゥ・ナウ』を聞いている。

 僕はR.E.M.の音楽を聴きながら育った。軽快なビートを刻むスネアと早口言葉みたいな歌。「レナード・バーンスタイン!」でのブレイク。少年が廃屋でスケボーしながら、犬と遊んでいた。ナイーヴすぎると思うけれど、自分に似ている気がした。「It's The End Of The World」だなんて、最高じゃないか! 1987年、僕はそんなふうにR.E.M.と出会った。それは今、全然笑えない皮肉かもしれない。でも、曲のパワーは初めて聞いたあの時のまま。相変わらずカッコいい。やっぱり"I Feel Fine!"って叫びたくなる。

 テレビを消して、ジャケットを眺めながら『コラプス・イントゥ・ナウ』を聞く。そこにはオリジナル・アルバムとして初めて3人の姿が写っている。腕を大きく振り上げたマイケルがいつになく頼もしい。「Discoverer(発見者)」「All The Best」「Every Day Is Yours To Win」など、ポジティヴなタイトルの曲が並ぶ。『New Adventures In Hi-Fi』以降、モノクロームや淡い色彩をイメージさせる曲調が多かったけれど、ここではすべてがカラフルだ。力強いマイケル・スタイプの歌声。ピーター・バックは、繊細なアルペジオと豪快なフィードバックを自由に操る。マイク・ミルズのコーラスと発想豊かなベース・ラインが優しく彩りを添える。躍動感、そして鮮やかな生命力。「Uberlin」でマイケルは歌う。

《I know I know I know what I am chasing / I know I know I know that this is changing me》

 インタビューでも言及されているとおり、"Change"という言葉が今、いくつもの意味を持って響く。そして現在進行形の描写が、現実と重なり合う。僕たちが追い求めているもの。この先に待ち受けている変化。一曲一曲が投げかける問いに、まだ答えは見つからない。不安を声に出してもいい。可能性に耳を傾けてもいい。2011年3月、僕はこのアルバムと出会った。"Remember Every Moment"という言葉を胸に刻む。そのことをいつまでも忘れないように。

(犬飼一郎)

retweet