フレンドリー・ファイアーズ

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FRIENDLY FIRES

どんな状況でも前向きでいたいと思っている

フレンドリー・ファイアーズのファースト・アルバムには現実逃避の先にある甘美な夢がそこかしこに散りばめられていた。それは踊りながら脳みそが溶けていく瞬間のフィーリングが完璧にパッキングされた大傑作に違いはなかったが、5月にはリリースされる予定の彼らのセカンドがファーストを余裕で上回る出来であることは、おそらく間違いないだろう。何たって先行で試聴できた4曲が「Paris」と「Jump In The Pool」と「Lovesick」のそれぞれ優れたポイントをすべてより集めたような、信じ難いアンセム揃いだから。ファーストからのファンの期待は一ミリも裏切らず、もはや貫禄さえ漂う。早くも傑作揃いの2011年で、この「Pala」と名づけられた新作はどんな特別な輝きを放つのか。

去る2月に東京のみでおこなわれた一夜限りの来日公演前日、ワインと長旅の疲れで良い感じにヘロヘロになったメンバーに話を訊いた。

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今回わたしは新作から「Chimes(Want you more)」「Blue Cassette」「Show me lights」「Hurting」の4曲を聴きましたが、たぶん前作に夢中になった人なら誰でも「パーフェクト!」と叫ぶような出来だと思います。わたしも最近はこの4曲ばかりリピートしていて...。

エド・マクファーレン(以下EM):クールだね。みんながどの曲を気に入ったかを訊くのはとても興味深いよ。ちなみに君はどれがいちばん好き?

全部大好きですが、あえて言うなら「Chimes」です。ファースト以上にロマンチックで。ニュー・アルバムを作るときに何か明確なテーマを決めましたか?

EM:愛、ロマンス、ロンリネス、ハートブレイク...。実際ぼくたちが作る曲にはこういうワードが何度か登場するし、自分も正直な気持ちで歌詞を書くことができるからね。政治的なことはあまりにぼくたちの知識が乏しすぎて、自分が歌うべきテーマじゃないと思う。ぼくたちが大好きなディスコやハウスはエモーショナルな部分が直接的に曲に表れていて、やっぱりそこと通底しているんじゃないかな。

ジャック・サヴィッジ(以下J):前作はどちらかといえば逃避的で、目をつぶって想像するような音楽体験だった。でも例えば今回の「Chimes」の歌詞は、朝の5時にクラブから出てきてそこからまた変わることのない現実を生きる、っていう内容なんだ。もちろん自分が実際に体験したことがベースになっているよ。

前作の「Paris」では「いつかパリで生活するんだ」という夢がありましたよね。もちろん現実は酷いかもしれないけれど、それでも夢を見るパワーがあった。でもたとえば日本の若い人たちは「いま以上」の状況を想像できずにいて、とにかく安定を求める傾向にあります。それには様々な理由があると思いますが...。そういう人たちに共感できる部分はありますか?

EM:ぼくはどんな状況でも前向きでいたいと思っている。ニュー・アルバムのタイトルになる予定の"Pala"という単語はユートピアを象徴している島の名前で、そこにはみんなに希望のメッセージを放つオウムがいるんだ。これはある小説(オルダス・ハクスリーの『島』)からインスピレーションを得たんだけど。そのメッセージのなかのひとつに「いまを大切に生きなさい」というものがあって、今回のアルバムのテーマとリンクすると思ったから、これをタイトルにしようかと。だから、テーマは"共感"というか...。

J:楽しめるときに楽しむべきだね! ぜったいそう思うよ。

エド・ギブソン(以下EG)そもそもバンドをやってる、ってそういうことじゃない? みんなCDも買わなくなってるし。

大人は「現実を見ろ」と言いますよね。もちろんそれも大事だけど...。

EF:ぜんぜん必要なし(笑)!

今回試聴した新曲のサウンドですが、基本的にファーストからの路線変更はなくて、よりディープにした印象です。

EF:ぼくからすればだいぶ変わったと思うけどね。

J:いや、たぶんこういうことじゃないかな。ぼくらの音楽っていろんな要素が混じり合って、どれ一つとして同じものはない。でも方向性をドラスティックに変えてしまったら、それはフレンドリー・ファイアーズじゃなくなってしまうからね。だから彼は「大きな変化はない」と感じたんじゃないかな。

でも格段にアンセミックになりましたよね。フレンドリー・ファイアーズはこのアルバムでもっとビッグな存在になると思いますが、そこに対しての抵抗はありませんか?

EF:いや、むしろ大歓迎だ(笑)。ぼくたちはいろんな人に音楽を届けたいし、そういう音楽を作ってるつもりだから。むかしインタビューで「7枚アルバムをリリースして500人のオーディエンスの前でライヴをやり続けるか、1曲のヒットしかないけれど数万人の前でライヴをするか、どっちがいい?」って訊かれたことがあったんだけど、ぼくは即答で「1曲のヒットで数万人のオーディエンスがいい!」って答えたんだよね。

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ファースト・アルバムのリリース時にクッキーシーン(雑誌版)の表紙になったときのコピーは「普通にいい」でした。メンバーも他のインタビューなどで「偉大なる普通さ=Normal in a great way」について語っていたりしましたが。

EF:うーん、それは私生活でってこと?

EG:つまりレディ・ガガはあんなに奇抜な衣装を着ているのに、みたいな話じゃないかな。

EF:ええー、レディ・ガガ、別にいいと思うけど(笑)。

J:「普通にいい」っていうのはすごくナイスなフレーズだな。ぼくたちって人間的にもほんとうにノーマルだし、ぜんぜんロックスターっていう感じもしない。褒め言葉だよ。

EF:ぼくらはエリートの人たちのために音楽を作っているわけじゃないしね。

新作は主にセルフ・プロデュースで制作されましたよね。

EF:そうだね。前作でもある程度は確立していた自分たちのサウンドというものが、新作でより深まったんじゃないかな。そういえば、この前フォニカ・レコーズっていうヴァイナル専門店に行ったら、何のヴァイナルかは忘れちゃったんだけど、店頭ポップに「フレンドリー・ファイアーズっぽい」って書いてあったんだよ...。そこでも、ああ「フレンドリー・ファイアーズっぽいサウンド」なんてぼくらもすでに言われるんだな...と思ったり...。なにが言いたいかわかんなくなってきちゃったけど(笑)。

同じ世代のバンドやアーティストで、フレンドリー・ファイアーズの音楽に影響を与え得る存在はいますか?

EF:それに答えると凄く性格悪くなっちゃうから何も言わない(笑)!

J:ちょっとはいるけどね。彼らとは仲良しだからあえて言いたくないな。

ちょっと気になった情報なんですが、アンドリュー・ウェザオール(現在のテクノ・シーンに多大な影響を与えたイギリスのミュージシャン&DJ)と長尺のハウス・トラックを作っているそうですね! ファーストではそういった長いハウスのエッセンスを3分間のポップスに凝縮してきましたが、いまこれをやろうと思ったきっかけは?

EF:ハウスじゃなくて、クラウトロックだね。まあ、いままでやってこなかったことだし。でもいまはまだアンドリューの手に渡ったばかりで、実際これからどうなるか分からないんだ。結局3分くらいになっちゃうかもしれないし(笑)。バンドとして7分くらいの曲を作るのはある意味挑戦といえると思うんだ。いろんなことを試すことができるし。日本ではこのトラックが特に注目されているね。ぼくが「こんなことやるかも」ってインタビューでポロっと話したらそれが大事になっちゃったっていう感じで。

J:サマーソニックではもしかしたらプレイできるかもしれないね。

明日は一夜限りの来日公演で、オーディエンスもかなり気合が入っていると思います。

EF:昨日は馬刺も食べたし、準備万端だよ。

馬刺! おいしかった?

EF:いや、おいしくはなかった(笑)。


2011年2月
取材、文/長畑宏明

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