アイアン・アンド・ワイン『キス・イーチ・アザー・クリーン』(Warner Bros / Hostess)

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iron_and_wine.jpg まさか、全米2位とは・・・。古巣サブ・ポップからワーナーへの移籍による大幅なバックアップの獲得は大きいのかもしれないし、、『アグリー・ベティ』を始めとするUSドラマに楽曲使用されたことも影響しているのだろう。加えて、ディセンバリスツ『The King Is Dead』の全米No.1という直前の追い風もあった、とはいえ、やはりこれは驚くべき快挙だ。

 もちろん、アイアン・アンド・ワインことサム・ビームの4枚目となるこのアルバムがすごいのはチャートでの成功だけじゃない。柔らかにレイヤーを重ねたコーラスと、心に染み入るフォーキーなメロディは健在、音のテクスチュアはほんのりと陽性で、郷愁を呼び起こす。

 また、トム・ウェイツ『Swordfishtrombones』の影響を受け、ダブやレゲエ、アフロ・ビートが取り入れた前作『The Shepherd's Dog』の路線を継承、更にジャズや電子音まで加えてしまった。結果、フリートウッド・マックの華やかさと実験性、ジェイムス・テイラーのラジオ・フレンドリーさを獲得してしまった。それを思うと、いつも通り肩の力が抜けた、ビタースウィートなサムの歌声にたただた恐れ入るばかりだ。

 だが、僕はアイアン・アンド・ワインは今後まだまだ面白いことになると信じている。というのも、最近のライヴがこれまでのサムのイメージにとどまらない内容だからだ。2部構成のステージは前半がアコースティック・セット。バンジョーやマンドリン、キーボードのプレイヤーを従え、メランコリックで美しいサウンドスケープにオーディエンスをいざなう。だが後半では、エレクトリック・ギターに持ち替えフォーキーな楽曲が表情を一変させるそうだ。

 この構成・・・そう、ボブ・ディランを思わずにはいられない。セルフ・イメージに囚われないプレイを続けるなら、このアルバムすら通過点なのではないか、そう思えてならない。

(角田仁志)

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