ジョニー『ジョニー』(Turnstile Music / Hostess)

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jonny.jpg ジョニーってなに? バンド名? このアルバム・ジャケットもどういうこと?? 上半身をはだけたむさくるしい男5人(誰だよ、おまえら)が自分の腹に「J・O・N・N・Y」って一文字ずつ書いて満面の笑みを浮かべて並んでいるポラロイド写真。ジャケ買いとか絶対無理。ぜんぜんいけてない。いや、むしろださい...と思ったみなさん(僕もそう!)は、ぜひこの彼らのデビュー・アルバム『Jonny』を聴いてみてほしい。そんなことどうでもよくなるくらいに、ポップで楽しさにあふれた作品だから。

 スコットランドはグラスゴー出身で、ここ日本でも人気の永遠のギター・ポップバンド、ティーンエイジ・ファンクラブ(以下TFC)のノーマン・ブレイクと、英ウェールズ出身のサイケデリック・フォークバンド、ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキ(以下ゴーキーズ)の中心メンバーでバンド解散後はソロとして活動していたユーロス・チャイルズ。共にイギリスの音楽シーンにおいてメロディ・センスが光るソング・ライティングで有名な2人がデュオでなにやら作品を作っていると聞いたのは2006年頃の話だった。両者ともにかねてから相手のファンであることを公言し、90年代から互いのバンドで共演するなど友人関係にあった2人なので、その時は特に驚かなかったが、たぶんシングル1枚でも作るのだろうくらいに思っていた(本人たちもそう思っていたようだ。このバンド結成の経緯や上記ジャケット写真の詳細などは別に掲載されているノーマン・ブレイクのインタヴューに詳しいのでそちらをぜひ)。が、その2人がそこから数年経ちアルバムをリリースしてしまうと聞いたときにはさすがに驚いた。互いに忙しい身であったし、そこまで本格的なプロジェクトだと思わなかったから。でも2人は忙しい合間を縫い長年に及ぶ断続的なセッションを経てついにセルフ・タイトルのデビュー・アルバム『Jonny』を届けてくれた。

 アルバムで聴けるのは、前述のようにとにかくポップなサウンドだ。1曲目の70'sあたりのオールド・スタイルなロック・チューン「Wich is Wich」から、ファースト・シングルとなった「Candyfloss」(このPVは2人がCandyfloss=綿あめを食べるおかしなものなのでファンの方はぜひ見てみてほしい)、ユーロスのハモンド・オルガンが疾走する「Goldmine」、同じくゴーキーズ時代を思わせるユーロスVoのピアノ・バラード「English Lady」、パンについてユーモアたっぷりに歌われる「Bread」に、アルバムのハイライトのひとつとも言えそうな10分強もあるスペイシーなサイケデリック・シンフォニー「Cave Dance」、ノーマンVoのフォーキー・ポップ「I Want To Be Around You」、そしてラストの2人のコーラス・ワークが息をのむような美しさの牧歌的なクロージング・チューン「Never Alone」まで(国内盤にはアルバムに先行してフリー・ダウンロード配信されていた、その名も「Free EP」の4曲がボーナス・トラックとして収録)、その「Cave Dance」を除けばすべて3分前後の楽曲で多彩なサウンドが展開されていて、2人がそれぞれの楽器を手におもちゃ箱をひっくり返したような楽しさを味わうことができるアルバムに仕上がっている。中でも個人的に、6曲目のノーマンのメインVoによる、シンプルなコード進行に、これぞノーマン節と言える美メロとパパパ・コーラス、そして切ない歌詞が乗った「Circling The Sun」は、TFCの名曲「Did I Say」や新作『Shadows』での「Dark Clouds」あたりを思わせる1曲となっていて、うれしくなってしまう。

 そうしたようにもちろん曲は、TFCとゴーキーズという人気バンドで活動してきた彼らの経験から生まれているわけで、ポップ・ソングであるということにおいては、このジョニーもそう大きな違いはない。たからどちらのバンドのファンにもすんなり受け入れられる作品だろう。が、最小限のグループ単位でより個性が際立つデュオという構成で作曲をしたことにより(ほとんどの曲は2人の共作になっている)、そのポップ・センスの中でもノーマンのグラスゴー産のエヴァー・グリーンさと、ユーロスのウェールズ産のひねくれたユーモアが、それぞれのバンドやソロでの活動よりダイレクトに響いていることも間違いない。また2人のハーモニーや時にユニゾンでのヴォーカルの相性がとてもよく、それは今までの作品ではあまり聞けなかった、このアルバムならではの新しい発見となっている。そして、なによりこのジョニーで大きな違いを感じられるのは、彼らがそうした自身の音楽キャリアで培ってきたメロディーやサウンドを、影響を受けてきたバーズ、ステイタス・クォー、13th フロア・エレヴェイターズ(シングルのB面では、バンドのメンバーだったロッキー・エリクソンの「I Love the Living You」のカヴァーが収録されていた)、そしてビートルズなど過去のバンドへの愛情たっぷりに、なんのギミックもなく素直に自然体で出しているという点だ。そしてその自然体ということが、このジョニーの音をとても新鮮なものにしている。前述のインタヴューでもノーマンが「自分たちが楽しむためにやっているプロジェクトだ」と語ってくれたように、プレッシャーがない環境で、自分たちのやりたい音楽をやりたいようにやったのがジョニーであり、このデビュー作で彼らが形作ったサウンドになっているのだろう。そして、その楽しさは、アルバムを聴く僕らファンの耳にダイレクトに届いている。
 
 古くはサイモン&ガーファンクルからダリル・ホール&ジョン・オーツ、ファンタスティック・サムシングやキングス・オブ・コンビニエンスまで、男性ポップ・デュオはたくさんいるけれど、このジョニーもそこに加わえていいはずだ。サイド・プロジェクトとしては充実しすぎているこの2人のコラボレーション。ぜひこの1枚だけではなく継続的なものとしてこれからも、自由で、楽しめる、そして変なジャケットのアルバムを作り続けてほしい。

 でもやっぱりジャケ買いはしないけどね!

(安永和俊)

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