佐藤奨作

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KANYE WEST『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』
MGMT『Congratulations』*画像
SLEIGH BELLS『Treats』
FLYING LOTUS『Cosmogramma』
DEERHUNTER『Halcyon Digest』
ARCADE FIRE『The Suburbs』
VANPIRE WEEKEND『Contra』
BEACH HOUSE『Teen Dream』
NO AGE『Everything Between』
BRIAN ENO『Small Craft on a Milk Sea』
SCHOOL OF SEVEN BELLS『Disconnect From Disire』






 今から10年程前、僕はリヴァイバル・ムーブメントに熱をあげていたのですが、とある友人と、CDを買う基準についての話しをしていたところ、その友達曰く「どうせ自分がお金を出して買うなら滅多に聴けない良い機材を使っているか、制作費がかかっているCDを買いたい」というなんとも夢のない基準に。リヴァイバル・ムーヴメントからマネーよりもアティチュードを感じとっていた僕は、真っ向からそれを否定しました。ところが、10年たった今、カニエ・ウェストを聴いてそれに気づかされてしまったわけです。直前まで「サーフ」や「ローファイ」「チルウェイヴ」といったキーワードから、どちらかと言えばあっさりとした音楽に触れてきた僕ですが、300万ドルの制作費をかけたカニエ・ウェストのこってりとした音にすっかり耳を奪われてしまったのです。あらためて、CDが売れない時代な昨今の事も考えながら、こういったアプローチから購買意欲を誘える(そういった事ができるアーティストも当然限られる)という意味でも2010年のベストです。

 と、いきなり金の話しからスタートしてほとんど内容に触れる事がなかった2010年の10枚ですが、次に選んだMGMTで語るのは皮肉です。2010年、僕が一番聴いたのはこのアルバムなのは間違いないのですが、先ほども少し触れた、「サーフ」という2010年初頭にでたこのキーワード。いったい今はどこの海を漂っているのでしょう。それこそ消費社会(または、2010年終わりにドロップされたカニエ・ウェスト)というビッグ・ウェーブにでもさらわれたかのごとく、随分と沖合いに流されてしまった気がしてなりません。ザ・ドラムスのギターが脱退したと聞いて、「そんなバンドもいたね」とか言ってるレベルではありませんか(それはちょっと言いすぎでしょうか)。そんな皮肉と、2010年の時系列をランキングで表現したい意味も含め、2位はMGMTです。

 3位のスレイ・ベルズは音がでかすぎるという点で3位です。何を言ってるのかと思われるかもしれませんが、実は1位のカニエ・ウェストを選んだ理由と根本は同じで、CDが売れない昨今を横目に見ながら、鼓膜の振動に酔いしれるような話しで(これでも何を言ってるかわかりませんね)、つまり、ライヴ会場に行けば鼓膜の振動に酔いしれる事はあろうとも、CDを聴いただけでそういった経験をするってあまりないかと思うのですが、これはそんな体験を視聴だけでさせてくれる貴重な一枚です。つまりCDで聴くからこそ意味がある。売れない時代へのカウンター・パンチ。まあ、とにかく音がでかすぎます。取り合わせの妙も相まって2010年屈指のインパクトではないでしょうか。

 こんな具合に、トップ3までは明確な理由がありますが、以下アーティストは前作からの延長で、期待通りの作品を作り、そしてそれがより世界に開かれたという印象でしょうか(ただ、その中でもフライング・ロータスのように踊らせる作品ではないと気付かされてから自分の中で評価が上がった作品もありますが)。いずれにしても、こんなにも年間の前半、後半を通してガラリと印象のかわる事もなかったと記憶しますが、それこそ、10年前のようなムーブメントは起こりにくいのでしょうか。今回僕はスレイ・ベルズ以外、デビュー・アルバムは選びませんでした。ここ最近の、CDが売れなかったり、そこから解散に至ったり、消費社会のスピードにいささかげんなりしたり、そういった諸々のネガティブな要素に抵抗するべく期待をこめて2作目、3作目をチョイスしたつもりです。まあ、ビートルズだってデビュー・アルバムが『Rubber Soul』だったわけではありませんでしたので。

 ほとんど、作品の内容に触れず、まわりくどい嘆き(CDが売れないだとか)をつぶやいてしまった感がありますが、これだけインフラが整うとわりと失敗する事もなく堅実な消費者になりますよね。そして、そこに付加価値を求めたり。打算的ですね。なんだか、アティチュードとか言っていた昔が懐かしいですが、僕が三十路になった分時代もかわったのでしょうね。

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