たびけん

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VAMPIRE WEEKEND『CONTRA』
VIOLENS『Amoral』
THE RADIO DEPT.『Clinging To A Scheme』
LETTING UP DESPITE GREAT FAULTS『Letting Up Despite Great Faults』
TWO DOOR CINEMA CLUB『Tourist History』
THE NOVEMBERS『Misstopia』
BLOODTHIRSTY BUTCHERS『NO ALBAM 無題』
SUPERCHUNK『MAJESTY SHREDDING』*画像
ASIAN KUNG-FU GENERATION『マジックディスク』
ANDYMORI『ファンファーレと熱狂』





 2010年は自分にとっては音楽をよく聴いた年であり、多くの素晴らしい音楽に出会えた年でした。

 まず、ブルックリンを中心としたUSインディー・シーンの盛り上がりは、新しい音楽に触れる切っ掛けとなりました。アニマル・コレクティヴ、ヴァンパイア・ウィークエンドらに続き、新世紀のサイケデリアを鳴らすもの、音楽の楽しさをポップ・ソングとして自然体で届けてくれるもの、アフロビートやトロピカルなサウンドを聴かせるもの、60s的サーフ・ポップに回帰するものなど多様な音楽が現れました。すべてを追えているわけではなく、聴いたのはごくわずかですが、80sの音楽を解釈したポップ・ミュージックを届けてくれたヴァイオレンズやマット&キムには非常に好感を覚えました。

 そして、数年前には「死んだジャンル」として揶揄すらされていた「シューゲイザー」を自らの音楽的要素として、また武器として参照しているバンドも活発な動きを見せてくれています。ディアハンターやノー・エイジが新作をドロップしましたが、個人的にはザ・レディオ・デプトとレッティング・アップ・デスパイト・グレート・フォールツのサウンドが本当に心地よく感じ、よく聴きました。

 このブルックリン発の音楽や、シューゲイザー・リバイバル的な音は、結局は何年後かには流行り・一時の潮流として片付けられるかもしれませんし、どうなるかまだまだ未知数です。しかし、00年代の海外ロック・シーンに上手く乗りきれなかった自分としては、非常に「当たり」が多い新鮮で刺激的なシーンだと感じているので、この辺りのインディー・ロックを2011年も追っていきたいと思っています。

 しかしですが、この爆発的なインディー・ロック隆盛の中で散見される音楽として、古き良きロック/ポップスへ回帰しただただ過去の音楽世界に逃避してしまう音、チルアウト的な音、ある意味享楽的で、だらだらと気持ち良さに浸るだけの音楽も見受けられたかと思います(そういうのも好きですが)。一時期、そんなサウンドに飽き気味だった頃、90sのオルタナティヴ・ロックの血を残し、しっかりとした骨格のあるサウンドで感傷を振り切りながらかき鳴らすギター・ロック・バンドが良作を次々と出したことに、ロック・ファンの血がたぎったことも事実であります。

 ノーベンバーズ(The Novembers)は若いながらもニルヴァーナやスマパン、マイブラやライドなどの音を飲み込んだ傑作を上梓し、ブラッドサースティー・ブッチャーズはベテランらしい貫禄っぷりと、ある意味ベテランらしからぬ衝動性に満ちたオルタナ・サウンドを見せてくれたし、スーパーチャンクも、オルタナテイブでキャリアの長いバンドだからこそできる切なくキレのある演奏で、爽快なパワーポップアルバムを届けてくれました。あとはリストには挙げていませんがヴァセリンズも見事な21年ぶりの2NDアルバム(!)を作ってくれました。2010年は自分が(最早意味をなさなくなった言葉だとしても)「オルタナティヴ・ロック」が好きで、骨格のある「ギター・ロック」(そしてそこにメランコリアが内包されていればなお良い)が好きなのだと改めて認識させられた年でもありました。

 あと特筆にすべきことは、この繰り返しの生活、ただ同じことの繰り返しであるクソみたいな日常に、ほんの少しだけ光を垂らしてくれる、生活に寄り添った音楽を自分は求めているのだなと感じたことです。

 マクロの視点で言えば「社会」や「世界」、ミクロの視点で言えば「生活」「日常」。両者とも迷路のように絡まり、先は見えず、新鮮な予見も展望もない。そんな今現在から目をそむけず、それでもこの腐りきった場所で生きていく。何もない日常の繰り返しを、ささやかな喜びや美しさに思い馳せることでちょっぴり肯定する。そんな音楽の代表格はアジアン・カンフー・ジェネレーションの『マジックディスク』とandymoriの『ファンファーレと熱狂』だったかなと思います。僕らの生活の中には、常に音楽が在った。だから今も此処に居るし、これからもたぶんそう。そんなことを教えてくれた作品でした。

 テン年代のスタートとしては、平凡ないちロックリスナーとして(ツイッターでの情報交換などもあり)かなり良いスタートを切った、音楽にたくさん触れた一年でした。これがいつまで続くかはわかりませんけど、生活に寄り添う音楽をこれからも見つけていきたいなと。

(たびけん)
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