財津奈保子

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JONSI『Go』
RUFUS WAINWRIGHT『All Days Are Nights: Songs For Lulu』
PASCAL PINON『Pascal Pinon』
DEERHUNTER『Halcyon Digest』
FANFARLO『Reservoir』
JEFRE CANTU-LEDESMA『Love Is A Stream』*画像
GHOST SOCIETY『The Back Of His Hands,Then The Palms』
OF MONTREAL『False Priest』
SEA BEAR「While The Fire Die」EP
THE CORAL『Butterfly House』






 11年前2000年問題で世間が騒いでいた当時、私はバイトで生計を建てながら高校に通う貧乏な17歳でした。10代前半からMTVを毎日チェックし、CDショップに通い詰め、盛んだった90年代ミュージック・シーンをリアルに体感したと思います。その記憶が強すぎるのと、10代後半からはバイト仕事三昧、20歳に結婚そのまま出産、私生活が慌ただしく過ぎゆく中でずっと好きな90年代の音楽を聞いていました。この私の止まった時間を進めてくれたのは、2008年2月のビョーク12年ぶり単独来日公演だと思います。1人目の離乳が少しづつ始まり、少しだけなら離れられる事と、会場がわりかし近隣だった為、私は背中を押されるように足を運んだのですが、生で聞くビョークの歌声は圧巻で、今まで何度も聞いてるのに、初めて聞いた歌の様な感覚に陥って、今この瞬間にしかない歌声なんだ、と思い、アーティストと同じ時を生きてる事にすごく感銘を受けました。一生でどれだけこんな体験ができるのだろう? と思い改り、その後細々と音楽雑誌とCDショップを頼りに、止まった時間の回収作業に入り始めました。インターネットには、若干アンチテーゼな気分だったのですが、ベックの『Record Club』が聞きたかったので去年からパソコンにも挑戦しています。

 パソコンを始めると共にTwitterなんかも意味も分からないまま、始めてみたけど、私の世界は確実に広がったなぁ、と恩恵を感じます。90年代に自分が読んでた記事のライターさんとやりとりなんて当時の私からすると夢の様な事だし、US、UK以外の国や民族音楽の発掘は、まだまだこれからも素晴らしい音楽に出会える喜びを示唆している、と思っています。インターネットに恩恵を受け可能性も信じつつ、ショップに足を運び、ジャケ買いしたりする作業がCDを買う時の楽しみの一つでもある私は、ネットで音楽を買うのは最小限にして、リストアップしてからショップで買います。一曲だけで購入する事も可能ですが、アルバムの曲順や流れも大事だと思うので、CDという媒体もこれからも重要であって欲しいなぁ、と願います。

 そして事象もなにも関係なしで、CDで購入した中から選んだ完全に個人的ベストな10枚です。ヨンシー(Jonsi)とルーファスについては一生追っていきたいアクトです。シガー・ロスというバンドも胎児が育っていくように成長しているのかなぁ、と感じていましたが、このソロアルバムでは生きる事の哀しみも感じつつ、それ以上に生きる事の歓びを感じます。聞いてるととても元気になります。ドレスを纏って歌うルーファスの公演一部はちょっとしんどいなぁ...と正直思ったものの、二部ではぺちゃくちゃおしゃべりしながら軽やかに歌いあげるルーファスに、やっぱりこの人のしなやかな強さやソングライティングの美しさは好きだなぁ、と思いました。そしてTwitterから知ったパスカル・ピノン(Pascal Pinon)。私が知る限りでは国内盤は出てないと思うのですが、とにかくメロディが素晴らしいです。アレンジも素朴ですが、温かみがあって生活のBGMとしても寄り添ってくれる音楽です。賛否両論あったと思うディアハンターの今作ですが、確かに暗い、でも向いている方向は前だと思うのです。私は昨年体調を崩す事が多く、その時にこのアルバムを聞いて救われていました。諦観した気分になれるからかも知れません。今は4ADのライブが楽しみです!

 ファンファーロ(Fanfarlo)はずっと気になっていてサマソニで初見しました。シンフォニックかと思いきや、エレポップっぽかったり、メンバーが曲ごとにマルチに楽器を使いこなしていくのも新鮮でこのバンドの世界観が出来ていたと思います。うっとりしながら身体を揺らしている人がいたのが印象的です。ジャンルで一括りにするのが難しいとは思いますが、雑多な雰囲気ではありません。国内盤はメンバーによる曲ごとの解説なんかも載っていて、歌詞もミステリアスで面白いのでお薦めです。ジェフリー・キャントゥ=レデスマ(Jefre Cantu-Ledesma)『Love Is Stream』は実は昨日ショップで試聴して心奪われたアルバムです。Twitterで年末に呟いた中には当然入ってなかったのですが、これからどんどん聞くであろうと思いますし、クレジットが2010だったので割り込ませてここに入れました。ジャケットやタイトルからレジェント的アルバム『Loveless』を連想して聞いてみたら、やっぱり全体的にシューゲイザーでした。オマージュなんでしょうか? ショップではニューミュージック他、の棚にあって確かにシガー・ロスにも通じるアンビエントでもあると思います。ドローンというジャンルにも分けられてるようですが、とにかく私は大好きです。詳しく知っている方がいれば教えて欲しいです。ゴースト・ソサエティも全体的に軽やかなシューゲイズサウンドですが、曲の転調加減が大好きなミューを彷彿します。派手さはないですが、寒い日に歩きながら聞くのが好きです。

 オブ・モントリオールのこのアルバムはまずアートワークに惹かれました。聞いてみたらアートワーク同様すごく楽しいアルバムで、これ以前のアルバムも集めていきたいと思っています。PVもうちの子供はなぜか嫌がるんですがすごく秀逸でこのまま突き進んでいてほしいです。こちらのベストではEPも可、との事でまた年末のTwitterのベストとは順位が変わってしまったのですがシー・ベアー『We Built A fire』の限定盤に付いてるEP「While The Fire Dies」を入れました。エキゾチックで陽気な民族音楽が好きな人は気に入ると思います。こちらのバンドもパスカル・ピノン同様、アイスランド出身です。国内盤は残念ながら出ていないようですが、もし購入を考えているなら絶対EP付きがお薦めです。そして多様になって広がって行ったミュージックシーンを逆回転で追いかけて行った私にとってザ・コーラルの男臭くて無骨なようなこのアルバムはすごくホッと出来るアルバムでした。特に「Walking In The Winter」は哀愁的だけど、ギターラインが美しくて、昨年自嘲的になってしまう時によく聞いて助けられたと思います。

 そして2011年一リスナーとしての自分ですが、ずっと素晴らしい音楽が排出し続ける事を願っています。無料で聞けてしまう環境も勿論悪いですし、私も正直YouTubeで聞いてしまって購入に至っていない音源もあります。しかし、素晴らしい音楽が自分の生活を豊かにしていてくれてるのは確実ですし、素晴らしい音楽が聞けなくなってしまう事がとても怖いです。作り手であるミュージシャン達(それに携わる方々)にも当たり前ですが生活があります。不況下に課題は山積みだと思いますが、それにしても対価はきっちり支払われるべきだと考えますし、リスナーがその気持ちを忘れたら終わりだと私は思います。2010年はネットを始めた事や、様々な人との出逢いがあり、私にとってはとっても重要で濃密な一年でした。全体的に自分語りになってしまい申し訳なく思いますが、自分の力量ではどれも省けなくてこうなりました。ネットでなければ出会えなかったアルバムもたくさんあります。只、ジェフリー・キャントゥの様に店頭で思わず出会った時の快感も忘れ難いものです。なので、今年はiTSに挑戦したいなぁ、と思っているのですが、ショップにも引き続き通って行きたいです。ミュージシャンや教えて下さった方々にこれからも感謝しつつ広がっていけたらいいなぁ、と思います。

(財津奈保子)
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